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「未来の年表 業界大変化」 河合雅司氏著 のメモ

縮小していく日本の現象がこれでもか、と書いてあります。
そのすべてに対応していくためにはお時間のない方には 【第2章 戦略的に縮むための「未来のトリセツ」】から読まれると良いと思います。


日本が人口減少に打ち克つにはどうしたらいいのだろうか。
答えは、経済成長が止まらないようにすることだ。

だが同時に、人口減少が日本経済の足を引っ張る主要因ともなっている。この大いなる矛盾を解決するには、マーケットが縮小しても成長するビジネスモデルへと転換することである。

各企業が成長分野を定め、集中的に投資や人材投入を行なうことである。
「戦略的に縮む」のだ。

求められる要素として、他国の追随を許さぬ技術力やアイデアに富んだオリジナリティがある。

「売上高」から「利益高」へと経営目標をシフトさせることも不可避である。

心に突き刺さる文章が並びます。

序章――人口減少が日本にトドメを刺す前に

人口の未来は「予測ではない」。「過去」の出生状況の投影である。

企業は人々を支え切る存在ではなくなったことを認識する必要がある。

新規学卒者採用が減れば組織は新風が吹き込みづらくなり、マンネリズムに支配されることにもなる。

日本経済に新たな成長分野がなかなか誕生しなくなったことと、少子高齢化は決して無関係ではないのだ。

マーケットの縮小の行方

日本は加工貿易国とされるが、実態は内需依存度の高い国だ。

消費者の実数が減る以上に消費力が衰える「ダブルの縮小」が起こるのだ。

子どもを産むことのできる年齢の女性が減っていくため、少子化対策を強化しても出生数の回復は簡単には見込めない。

人手不足対策もそうだ。外国人労働者の大規模受け入れをすれば何とかなるという主張にもついていけない。

日本の勤労世代は2040年までに1400万人ほど減る。そのすべてを外国人労働者で補おうというのなら土台無理な話である。

すでに介護職など専門性の高い職種で他国に競り負けるケースが報告されている。

願望に近い言葉を繰り返していても始まらない。日本は就業者が減ることを前提として解決策を考えざるを得ない。

繰り返すが、いま取り組むべきは、過去の成功体験や現状維持バイアスを捨て去り、人口が減り、出生数が少なくなっていくことを前提として、それでも経済を成長させ得る策を編み出すことである。

現在進行形で減少しているのは自動車整備士、電気工事士、配管技能士だ。

十分なIT人材の獲得に失敗し、これまで築き上げてきた「信用力」という資産を失うことにでもなれば、日本の金融機関は弱体化する。それは日本経済の衰退と同義である。

そして、次に来るのは地方の過疎化と少子化に伴う、地方銀行の破綻、新聞の地方紙の縮小、ローカルテレビの再編・縮小であり、そこにはネット銀行、インターネット、ユーチューブ、動画配信サービスの台頭も原因となっている。
地方紙やローカルテレビは地域に密着したニュースを掘り起こし、地方行政の監視機能を果たしてきた。

ドライバー不足で10万トンの荷物が運べない。
それは需要の減少以上にドライバーが減っているからである。

近年、トラックやライトバンによる輸送需要を大きく押し上げているのは宅配便の配送だ。

宅配便の国内マーケットは、高齢者の一人暮らしが増えることもあってしばらくは伸び続けそうである。

宅配にたくさんのドライバーを取られると、宅配以外のドライバーまで確保しづらくなってしまうのだ。

商品を届けるうえでの「利便性」を含めてまでの付加価値向上を考える企業が増えたのだ。

一方の運送業界は中小企業が多いという事情もあって、各社とも「発荷主」「着荷主」双方の細かな注文に応えようと必死だ。

そして、それがドライバーの負担を大きくし、退職者を増やすことにつながっている。

将来の需給バランスをみれば、2025年には11万トンの荷物が配達不能になるという。

多くの製造コストや宣伝費をかけた商品の三割もが計画通りにユーザーの手元に届かないことになれば、荷主企業が受けるダメージは小さくない。

ドライバーが“不人気職種”になったのは、待遇や労働環境が悪いからだ。

物流クライシスに関しては、構造的問題、採用難に加えて、新たに「物流の2024年問題」の影響も懸念されている。働き方改革として2024年度から、物流界にも時間外労働の上限規制が適用されるためだ。

これに合わせて、厚労省は前日の終業時刻から翌日の始業時刻までのインターバルを現行基準より数時間延ばすことを検討しており、人手の不足状況が更に悪化しそうだ。

政府は業界団体と連携して、A.I.を活用して、輸送ルートや保管場所の最適化を図る「フィジカル・インターネット」などの普及を模索している。

人手不足が極まって、部分的な物流の目詰まりが頻発するようになれば、やがては国内におけるサプライチェーン網を弱体化させる。

物流を支える運送会社は「公的サービス」として位置づけるべき社会インフラだが、これまで多くの企業経営者の発想といえば「できるだけ価格の安い運送会社に頼んで、コストを抑えられるだけ抑えたほうが良い」というものだった。

今後は「利益に見合うコストで運んでもらえるのか」と運送会社にお伺いをたてなければならない時代に変わるだろう。“物流の破綻”が現実のものになるということはそういうことである。

みかんの主力産地が東北になる日

いま問われているのは農業を続けられるかどうかではなく、子どもの通学や年老いた親の通院など農業就業者を取り巻く日常生活自体成り立ち得るかどうかである。

これから農業が生き抜くには、大規模農業化してスケールメリットを追及していく他ない。あとは、A.I.の活用で働き手不足をカバーし山間地などの農地を効率化していくことだ。と著者は言う。

感想)それは現実的な解決方法なのかも知れない。だが、消費者側から見れば、大規模農業は単一品種の栽培に向いていて、多品種の流通をカバーするのには向いていないのではないか?結果、毎日同じものを食べることになることも考えられる。(嫌だな)

感想)農業を農業としてだけではなく、食品産業の中の位置づけをして包括的にやっていくことを著者は提案している。それは、既にアメリカ・フード・インクなどが行なっている方法で、消費者は何を食べているかが解らないという難点がある。
地産地消で信頼できる農家さんの野菜と肉と魚を食べたいと願うのは、もはや贅沢なのか。

住宅業界におきること

空き家問題が深刻化しているというのに、新築のマンションや一戸建て住宅の建設が続いている。

人口減少という長期スパンの課題と、足元で起きている課題とを一度に解決することの難しさがある。

総世帯数は増えているが、押し上げているのは単身者の増加である。とはいえその内訳を見ると大半は高齢者の一人暮らしであり、彼等は新築住宅の買い手とは言い難い層である。(30〜40代の減少)

そのような影響は人生の終わりに関わる葬儀会社、お寺にも及んでいる。高齢者のボリュームがあるこれから当分は葬儀会社は仕事は減らないが、一件あたりの売上は三百万円から三十万円まで落ち込んでいる。

また、学校の統廃合も進み、ごみ収集が有料になることや地域によっては水道代が高額になる可能性がある。これは過疎の村が増えることにより起こる。

暮らしの安心、安全のための自衛官、警察官、消防士等が人員不足のため機能不全に陥る可能性が高い。

人口減少は医療にも及び、患者不足で病院が運営できなくなる。そして繰り返すが、多死時代なのに檀家が減りお寺が廃寺になる。葬儀業界も会葬者がいなくなり、直葬が一般化する。


第2章 戦略的に縮むための「未来のトリセツ」

日本人が消滅せんとする、我が国始まって以来の危機なのである。昨日までと同じことをしていてうまくいくはずがない。現状維持バイアスを取り除き、社会の変化に応じて発想を変えたならば違った未来が見えてくる。その先にこそ、人口減少に打ち克つ方策があるのだ。

日本人の人口減少は数百年先まで止まらないだろう。この不都合な事実を直視するしかない。すなわち、ここで言う「人口減少に打ち克つ」とは、人口が減ることを前提として、それでも日本社会が豊かであり続けられるようにするための方策を見つけ出すことだ。
社会やビジネスの仕組みの方を、人口減少に耐え得るよう
変えようというのである。

今、日本企業に求められているのは
㈠ 国内マーケットの変化に合わせてビジネスモデルを変える
㈡ 海外マーケットに本格的に進出するための準備を整える
という二正面作戦である。

人口減少に打ち克つ「10のステップ」

① 量的拡大とは決別する。

② 残す事業とやめる事業を選別する。「集中」と「特化」がキーワードである。

③ 製品・サービスの付加価値を高める。「薄利多売」から「厚利少売」へのシフト。

④ 無形資産投資でブランド力を高める。
ハード技術は陳腐化しやすい。
ブランドと知的財産権はセット。クロスライセンス契約。
無形資産(知的資産)はブランド、人材や技術・ノウハウ、研究開発など目に見えない資産を指す。特許権、商標権、意匠権、著作権といった知的財産権だけでなく、データ、顧客ネットワーク、信頼力、サプライチェーンなども含まれる。

⑤ 1人あたりの労働生産性を向上させる。
ブルシット・ジョブを減らす。
従業員1人あたりの労働生産性の向上も必要となる。これは製品・サービスの高付加価値化と並ぶ。
DXは企業の「縦組織」を崩壊させるにももってこいだからだ。
外国人労働者が長く賃金が抑制されてきた日本に見切りをつけつつある。
出身国のGDPが日本との差が縮んでいるからだ。

⑥ 全従業員のスキルアップを図る
経営戦略が明確ではない企業が少なくなかった。
人材はコストではなく、新たな利益を生む「資本」として捉える。

⑦ 年功序列の人事制度をやめる
終身雇用が終わりを告げると無くなるものがある。それは退職金だ。浮いた人件費を、スキルの高い新人の契約金や支度金として支払う企業が増えるだろう。
年功序列がなくなっていくにしたがい、日本流にアレンジしながら成果主義人事制度の導入が広がっていくことになるだろう。

⑧ 若者を分散させないようにする
若者を分散させる弊害はマンネリズムの支配にとどまらない。もっと深刻なのは、イノベーションを起こす力が弱っていくことである。

⑨ 「多極分散」ではなく「多極集中」で商圏を維持する。
今後は人口減少による国内需要の縮小と、消費者の高齢化に伴う消費量の縮小という「ダブルの縮小」が起きるが、そこに可処分所得の縮小まで加わったならば「トリプルでの国内マーケットの縮小」である。
現行の地方自治体のエリアとは関係なく周辺地域の人口を集約して商圏を築き、「極」となる都市の中心街として歩行者中心のコミュニティと賑わいをつくる。国交省の資料によれば、人口10万人であれば大半の業種が存続可能となるためだ。

⑩ 輸出相手国の将来人口を把握する。
世界人口の三分の一をサハラ砂漠以南のアフリカが占める。
2022年時点で最多の人口を抱える「東アジア・東南アジア」は2034年で頭打ちになり、その後は減少していく。
ヨーロッパは減少が続くが、米国やカナダといった「北米」は増える。
人口の軸が西に移動していくにつれて日本においてはあまり馴染みのなかった国々との交流の必要性が増すことは間違いない。
人口減少が進む日本にとって、外国との関係強化は死活問題となる。政府間交流も含めて、いまから人口激増エリアの国々へアプローチしなければならない。(了)

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