映画「生まれてはみたけれど」小津安二郎監督 1932年、1984年リメイク版を観て
弁士:松田春翠
前半は子どもたちのおおらかな日常が描かれ、強いものがガキ大将になっていた。それは流動的で強いものが入れ替わればガキ大将も代わる。そして喜劇かと思いきや、この映画のタイトルを侮ってはいけない。
偉くなるように学校で勉強するようにサラリーマンの父親から言われていた兄弟が、父親の上役の家で映写会を観ることになり、上役の息子の同級生らと一緒に観ていると、会社で父親が上役の前で百面相をしているところが映り、ひどくプライドが傷ついた。家に帰り、父親に向かって「お父さんは偉くないのか」と詰め寄り拗ねてしまった。そこで行われる父子のやりとりが本質を突き、かつ、やりきれなさに泣けてしまう。
そしてエンディングのナレーションでは、子どもの無邪気な力関係は固定的ではなく、大人の社会の上下関係はほぼ固定化していると述べていたが、戦前の日本の長閑さと社会の硬直化した面を共に観ることのできる映画で、アマゾンプライムであと3日無料です。
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