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古川さんへの手紙 2024.5.5
古川さん、お久しぶりです。
随分ご無沙汰してしまいました。
そちらの方はいかがですか?
今、ゴッホの手紙を読んでいます。
やはり、ゴッホの内省と自分自身への正直さから私も勇気がほしくなったので。
今読んでいるのは、1877年あたり。
ゴッホがまだ聖職者に憧れて模索している頃です。
そういえば、私が古川さんに出会ったすぐのころ、私も同じような気分になったことがありましたね。
聖職者に憧れたわけではないけれど、ゴッホのような献身的な気分に なったころです。
あれは、神谷美恵子さんの本に惹かれていたころ、古川さんに話したら、あなたは、それを「美しい世界」って言ったんだったかな?
私はすぐに、あなたがどんな風に受け取ったかを悟りました。
そして、それは、バスから降りる間際の出来事で、わたしは全く口を閉じたのでした。
古川さんは、ハッとして、降りていく私に何か一言かけてくれた。
私はそれで、あなたの気持ちがわかり、にっこりして降りていきました。
私には、あなたが自分の言葉を悔いてすぐに素直に言葉をかけてくれたことがわかりました。
それからは、決してわたしのそういう献身的なものに対する気持ちにはさわらずにいてくれましたよね。
ゴッホも神谷美恵子も、きっとそこを通らなければ自分の自我をだすことはできなかったのでしょう。
そして私も。
私は、今、フリーダ・カーロにも惹かれています。
こちらの方が古川さんも好みじゃないかな。
彼女のあけすけな表現と繊細な傷つきやすさがあなたにとても似ています。
また一緒に絵のお話がしたいですね。
今ももし話ができたら、私はもっと絵の方で言語化しようとするかもしれませんね。
でも、そうならなくてよかったのかもしれない。
私は、今の読書環境に満足しています。
きっとあなたはそれを遠くから見て、応援してくれているでしょう。
ドストエフスキーとか、ウィトゲンシュタインはあなたも好みの生き方をしている人かもしれませんね。
エキセントリックな人の作品は、その生き方も合わさって、とても惹かれますよね。古川さんもエキセントリックだし、私もそうでした。
過去形なのは、私は少しはみんなとうまくやれるようになってきたからです。
それをあなたは残念に思うだろうか?
いや、きっと誰よりも喜んでくれていますね。
でも、少しは寂しいかな‥
どうか寂しく思わないでください。
いつまでも大好きです。
また、お手紙します。
こんな手紙を書いていると、いつもさりげなくお手紙を書いてくれてた古川さんのことが懐かしく思い出されます。
それでは、また。
慶子