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植物のこと

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植物との出会いを短歌や俳句で歌っています
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2021年10月の記事一覧

あざみ

あざみ

『秋の野に一人立ちて先思う 風の吹くまま あざみのように』

雨も上がり、昇っていく太陽に、公園の木々が静かに喜んでいるようだ。

落ち葉の中に一つ、ぽつんと立つピンクの花が見えた。

強い秋風にも、冷たい雨にも耐えて、咲いている、あざみ。

昨夜の露と朝日を浴びて、小さいけどきらきら輝いている。

ここ数日、見えない先を考えて、不安と苛立ちでお腹を壊していた私。

このあざみのように、今は耐えて

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藍

『桃色の皮に秘めたるその想い 尊く強いジャパンブルー』

寒暖差のある日が続くと、藍の花が咲き終わり、可愛い桃色の実がなる。

成熟すると、黒くて光る小さな種が出来る。

この飛んでしまいそうな小さな種から、芽が出て、葉が大きくなり、あの美しい藍色が染まる。

日本の芸は、計り知れない努力の元に、シンプルな美しさがある。

藍に魅せられたのは40歳を過ぎてからだ。

それまではあまり興味がなかった

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かぶ

かぶ

『色白の君の肌が恋しくて 心も溶け合う

根菜シチュー』

突然の冬支度だ。

昨日まで扇風機を使っていたのに、今日から石油ストーブの登場。

畑を見ると、お盆過ぎに蒔いた大根や蕪がおおきくなっている。

少し大きめの蕪を一つ、抜いてみた。

つるっとした肌が、羨ましくも感じてしまう。

食べれば私もそんな肌になれるかな?と思い、

寒い夜には根菜シチュー。

石油ストーブの上でコトコト煮込む、そ

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いちじく

いちじく

『ふぞろいのいちじく煮込む 秋の夜 思い出引き出す ひなた味』

幼い頃、いちじくが苦手だった。

母の友人たちが集まり、いちじくをじゅるじゅると美味しそうに食べていた記憶がある。

幼い私には、土の匂いのする、ふにゃふにゃの食感が堪られなくて、大人と一緒に美味しそうには食べられなかった。

先日、友人からたくさんのいちじくをもらった。

「コンポートなら食べられるよ。美味しいよ〜。」

その言葉

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