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目標は変わっても良い、むしろ変わるべき


学習の目標は変化するもの

以前、このブログで私が不登校の経験を経て同時通訳者になった経緯を書きました。


自分が英語を学んだ経緯を振り返ってみると、単身アメリカに渡ったあとは次々と新しい英語の課題が切羽詰まって現れるという、ある意味ラッキーな形で「英語習得のステップ」を踏めていたように思います(渦中にあるときには、ひたすら必死でラッキーなどと感じる余裕はありませんでしたが・・・)

いつも切羽詰まっていたので、ひたすら目の前の課題に向き合うことに必死でした。大変でしたが、見方を変えれば目標設定や学習方法に悩む余裕もなく我武者羅に突き進んでいれば良かったのです。つまり、悩む間もなく目標設定と目標に向かうための努力の方向性が自然に決まっていたとも言えるかもしれません。

ご参考までに、私が英語を学んだ経緯を振り返って、それぞれの段階においての英語を学ぶ目的・目標・対策をざっと整理してみます(良かったら、上記の記事も併せて読んでみてください)。

目的1:初めて海外で生活する
目標:サバイバル(ホームステイ先で晩ご飯を食べ損ねない、二度も食べる羽目に陥らない)
対策:いつもニコニコして相手に好意を持っていることを非言語で分かってもらう

目的2:アメリカの大学で学ぶ
目標:授業についていく、大学を卒業する(初めての英語での読み書き)
対策:語彙力強化、授業を理解するための予習復習

目的3:英語を使って仕事をする
目標:仕事で結果を出す(仕事の進め方を最適化するコミュニケーション)
対策:誤解や齟齬を避けるためにマメに連絡を取る

目的4:通訳として働く
目標:英語のプロとしての役割を果たす(クライアントさんの目的達成のサポート、伝わる訳し方)
対策:入念に準備をして内容を事前に可能な限り理解しておく、発音矯正をして聞きやすい英語を話す

かなりザックリしていますが、このように置かれた立場によって英語を学ぶ目的も変わり、それに伴い目標も対策も変化しています。一人の人間でも英語と向き合うときに努力の方向性がこれだけ変わるのです。


漠然とした目標には、漠然とした対策しか出てこない

職業柄、英語学習について相談を受けることが多いのですが、学習継続には現実的な目標を立てることが大切だと感じます。そして現実的な目標を立てるためには、まずは自分が英語を使って何をしたいのかについて、具体的な目的の明確化が重要です

「英語を学びたい」という相談を受けると、私は必ず「なぜ?」と聞くことにしています。英語を使って何をしたいのか、そのためにはどんなスキルが必要なのか、今の自分には何が足りないと思っているのかなど、本当にしつこく聞きます(笑)

例えば、「一応英語は話せるし、ときどき仕事でも英語を使うけれど、イマイチ自信ない」という場合。「いまいち自信がない」というのはどういう状態なのかを考えます。具体的に(!)考えるのです。

例えば・・・
・英語で行われるミーティングについていけない
・外国人の上司と一対一で話す機会があるけれど、緊張して上手く話せない
・相手に伝わっているのか確信が持てない、などなど。

「イマイチ自信が持てない」理由は人それぞれです。自分にとっての「イマイチ」が分かったら、どうすればそれが「自信がある(あるいはせめて「大丈夫」)」な状態になるのかを具体的に考えます。しつこいようですが、「具体的に」です!具体的に考えながら、今の自分に何が不足しているのか、現時点での課題を洗い出すのです

例えば、聞き取れないのはヒアリングの力不足なのか、自分が発言するための語彙力が必要なのか、英語だというだけで萎縮してしまうメンタルの課題なのか、など不足している点、強化や改善すべきポイントを考えることで初めて、いまの自分は「どんな英語の勉強やトレーニングが必要か」が見えてきます。つまり、「現実的な目標設定」が可能になるのです。

このプロセスを飛ばして「効率的な勉強方法を教えてください」と言われても、正直答えようがありません。万人に共通の魔法のような効率的な英語学習法など存在しないのです。

環境が変化したり、英語を学ぶ目的が変わったりすれば、当然「目標」も変わります。目の前の課題をクリアするために一生懸命に英語の勉強をした結果、さらに高い目標を目指したくなるかもしれません。

そんな風に目標はどんどん変えれば良いのです。自分は英語を使って何をしたいのか、そのためにいまの目標は何なのか、そして目標をクリアするためにどんな勉強をするのか。フォーカスするのは、「いま」必要なこと、そして現実的に自分の生活のなかで出来ることです。

これから英語の勉強を始めようという人が、いきなり「ネイティブスピーカーのような流暢な英語を話せるようになりたい」などの目標を掲げても無理な話です(因みに、私は20年以上通訳の仕事をしており、英語は30年近く学び続けていますが、自分の英語がネイティブスピーカー並みだと思ったことは一度もありません。)

漠然とした目標には、漠然とした対策しか立てられません。「英語頑張る!」と決めたものの、直ぐに挫折してしまうのは、現実的な目標や課題が自分の中で明確になっていない場合が多いのではないでしょうか。

母国語でない言語を習得するのは簡単ではありません。それでも、コミュニケーションツールとしての実用的な英語を身につけることは十分に可能です。「どうしたら英語が上手くなりますか?」という質問にお答えするとしたら、まずは、自分は英語を使って何をしたいのかを考え、そのために必要な英語を習得するための現実的な目標を設定することをお勧めします。

そして、目標は状況に応じて変わって良いのです・・・いや、むしろ変わるべきなのです!


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