"if"と"when"の使い分け
先日質問を受けました
「風邪をひいたら薬を飲みます」と言いたいときには、" if"を使うのが正しいか、"when"を使うのが正しいのか、どちらでしょうか?
これには一瞬迷ってしまいました。
正解は「この文章の解釈の仕方による」です。
解釈1:仮定の話
「風邪をひいたら薬を飲みます」という文章を「仮定の話」と解釈した場合は"if"を使います。例えば、一人暮らしをする子供を親が心配して、「ちゃんとご飯食べるのよ」「くれぐれも体に気をつけてね」「風邪ひかないでね」と、あれやこれや言っているような会話で、子供が「風邪をひいたら薬を飲みます」と言った場合は、「(もし)風邪をひいたら薬をのみます(だから心配しないで)」という「仮定」の話をしているんですね。
起こるか起こらないか分からないことを、「もし起こったら」という仮定で話しているので、この場合は"if"を使うのが正解です。
解釈2:タイミングの話
「風邪をひいたら薬を飲みます」という文章を「タイミングの話」と解釈した場合は"when"を使います。例えば、多少のことでは病院には行かず薬を飲んで様子を見るという自分の習慣(またはポリシー?)について話をしていて「風邪をひいたら薬を飲みます」と言った場合は、過去の出来事も含めて人生のあるタイミングで「風邪をひく」という出来事が発生した際には薬を飲む、つまり「風邪をひいたときには薬をのみます」というタイミングの話になります。
この場合は「風邪をひく」ということが発生したタイミングにおける自分の習慣について話しているので、"when"を使います。
こんな風に、「仮定の話」をしているのか、「タイミングの話」をしているのかによって、"if"を使うか"when"を使うかは変わるんですね。
それにしても「風邪をひいたら薬を飲みます」という日本語はどちらとも解釈できるのが面白いですね。いや、「面白い」というより通訳をしていると困ります💦
文章や言葉の表面だけを見て英語にしようとすると分からなくなってしまうことがあります。
そんなときは、「日本語の日本語翻訳」と呼んでいるのですが、「ここで言いたいことは何?」と考えることで、どんな言葉を選ぶのか(この場合は"if" なのか"when"なのか)の糸口が見えてきます。
強い意志を感じさせる表現〜Not if but when
"If "と"when"というのは、時にこだわりを持って使い分けられる言葉です。"if"と"when"の使い分けについて考えると、いつも思い出すのがアメリカに住んでいた頃に知り合ったお友達のことです。(お友達と言っても、かなり年齢は上の方でした。)
彼女は、中学生を筆頭に4人の娘を持つ40歳前後のシングルマザーでした。4人の子供を抱えたシングルマザーの生活は大変そうでしたが、とてもパワフルな女性で、働きながらコミュニティカレッジ(地元の人が無料または安い値段で授業が受けられる大学)に通っていました。自分は大学を卒業していないため良い仕事に就けないから、子供は必ず4人とも大学を卒業させる、そして自分もコミュニティカレッジで単位を取って大学卒業の資格を手にする、といつも語っていました。
この友達が、子供を大学に進学させる話をするときは、「Not if but when」と言っていたのを今でも覚えています。「仮定」としての"if"、つまり「起こるか起こらないか分からないこと」ではなく、「必ず起こること」として"when"という言葉にこだわっていたんですよね。そのこだわりは、子供が「If I am going to a college(もし大学に行くなら)」と、"if"という仮定系 で語ると、「when you are going to a college(大学に行くときには、でしょ)」と言い直させていた程です。
こんな風に、未来の話をしているときには、"if"と"when"は、その確実性によって使い分けられます。そして、「必ず起こること」という強い意志を伝えたい場合には「Not if but when」とわざわざ強調して言うこともあります。
その友達は、子供を大学に進学させるということは「絶対に叶えること」という決意を"if"ではなく"when"という言葉にこだわることで、自分にも周りにも確認していたようにも思います。