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言葉の要素から意味をイメージする

"pneumatic"と"pneumonia"の思い出

その昔、私がまだ通訳の仕事を始めたばかりのことです。
仕事があるだけで嬉しい駆け出し時代。「来るもの拒まず」の姿勢で、依頼は何でも引き受けていました。

ある日、オルガンについての講演会で通訳をしていた時のことです。(本当に分野を問わずに仕事してました💦)教会などで見る壮大なパイプオルガンの構造についての説明で、オルガンというのはパイプに送った空気が振動することで音が鳴り、演奏者は「ストップ」と呼ばれるレバーを操作して空気の流れを調整して音楽を奏でるという話でした。

そして、忘れもしないのが、そのときに出てきた"pneumatic"という言葉。初めて聞く言葉に、私が思わず「?」という顔をしてたのでしょう。

(↓たぶん、こんな感じ・・・あくまでもイメージです)

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明らかに理解していない私の顔を見て、その講演者の方はさりげなく言葉を言い換えて下さり、難なきを得ました。そして、講演が終わったあと私に「この言葉は変なスペルで"pneumatic"と書くのだけど(と実際に書いて見せてくれて)、最初の"p"は発音しないんだよ。"pneum-"で始まる言葉は全て空気に関係しているんだよ」と親切に教えてくれました。

それで思い出したのが、肺炎のことを"pneumonia"ということ。肺も空気に関係あるから"pneum-"で始まる言葉なんだ、と納得したのでした。

因みに、なぜ私が"pneumonia"(肺炎)などという言葉を知っていたかというと、アメリカのアイダホ州の山奥に住んでいたときに(この辺りの経緯は私の著書に詳しく書いてあります)、極寒地域だったせいか冬になると熱を出して寝込む人が周りに沢山いました。そして、「誰かが熱を出して寝込んだ」という話題になると"cold"( 風邪)なのか、"flu"(インフルエンザ)なのか、あるいは拗らせて"pneumonia"(肺炎)になってしまったのかなどという話を、冬の間ずっと耳にしていたからです。

言葉の要素から意味を推測する


"pneumatic"や"pneumonia"という言葉は日常会話ではあまり使う機会はなさそうですが、「"pneum-"で始まる言葉は"空気に"関連する」というように、言葉の構成要素から意味の手がかりがわかることはよくあります。

日本語の会話でもよく目や耳にする英語の言葉を例に挙げてみます。

"Cent-"は「100」:例えば、センチュリーは1世紀つまり100年のこと。また、米国の貨幣単位のセントは1ドルの100分の1です。
"Bi-" は「二つ」:バイクは車輪が2つ付いた乗り物、バイリンガルはニカ国語を話す人のことです。
"Multi-"は「複数の」:幾つものことに長けている多才な人のことをマルチな才能、一度に並行して複数のことをこなすことはマルチタスクと言ったりしますよね。
"Re-"は「 再び」:リターンは元にいた場所に再び戻ること、一度伝えたことをもう一度言うことはリマインドです。
"Sub-"は「下の」:不良債権化した金融商品がリーマンショックの一因にもなった「サブプライムローン」は、本来ならお金を借りられない人(サブプライム層)に貸し出すローンのことです。

こんな風に、カタカナ英語として馴染みのある英単語だけでも、頭についている接頭辞が何らかの意味を示している言葉は沢山あります。

 日本語でも字の成り立ちを見て「魚編だから読み方はわからないけれど魚の一種なんだろうな」とか、 「非常識(常識がない)」「無関心(関心がない)」「不注意(注意していない)」など「非」「無」「不」が頭につくと何かを否定しているなど、言葉をイメージで把握していることはありますよね。

もちろん、英語のアルファベットには漢字のように文字が特有の意味を持つことはありません。それでも、言葉の構成要素の意味を掴んでおくと、知らない言葉でも意味を何となくイメージできることはあります。

実は、通訳の時も言葉の要素から予想を立てることはよくあります。特に体の部分や病気の話などは難しく突然言われると固有名詞が出てこないことが多いのですが、例えば"osteoporosis"(骨粗鬆症)の”osteo-”は骨に関すること、"cardio-"は心臓、”musculo-”は筋肉など、接頭辞から「何の話をしているのか」についての見当をつけることはできます。


同時通訳中に分からない言葉が出てきた場合は話を止めるわけにはいかないので、とりあえずは抽象度を上げて訳出します。このときに少しでも確度を上げるために言葉を構成している要素の意味を知っておくと便利なのです。


英語でコミュニケーションするときには、全ての言葉を完璧に理解できなくても、前後の文脈から想像したり、言葉の要素から推測したりと、理解するための「手掛かり」を増やしておくと、いざというときに役に立つかもしれません。

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