見出し画像

【keiko随想】希有な体験が多いほど人生はおもしろい

「拙者親方と申すは、お立会いの内にご存知のお方もござりましょうが…」
これは歌舞伎十八番「外郎売(ういろううり)」の口上の長ぜりふです。
俳優やアナウンサーなどは暗唱して、発声練習に使います。
じつは私も暗唱して、発声練習をしていた時期がありました。
今思えば50歳を超えてから、よく挑戦したものだと、我がことながらその行動力に感心しています。
そう、その行動力が私の人生をおもしろくしているのです。

希有な体験


十五~六年も前のことです。
福岡の芸能プロダクション「アクティブハカタ」の養成所オーディションに息子と二人で合格、入所してタレント養成のレッスンに通いました。

息子は当時ミュージシャンを目指していて、大学卒業を目前にアルバイトとレッスンの日々を過ごしていたのです。
路上ライブをはじめ、ミュージシャンの登竜門として知られるライブハウス「照和」にもレギュラー出演するなど、本気度も高かったと思います。

一方私は食育コーディネーターとして、要請があれば北九州地区の公民館などで、講演や料理教室の講師としてボランティア活動をしていました。
そのパフォーマンス力を高めたいと、レッスンしていたのです。

その結果

息子は半年ほどで、タレント活動のまねごとのような仕事にありつき、順調に成果を上げていました。

私はというと、調理員の仕事のかたわら、ボランティアとレッスンの日々。
雑誌の広告モデルの仕事を数回経験するにとどまりました。
もともとタレントを目指していたのではないのですが、周囲の状況におされて仕事を受けることもあり、心身ともに疲労していたのです。

やがて息子は、自分の目標と違った方向への指導に違和感をおぼえ、退所を希望しました。
レッスン料もばかにならないことから、二人の意見が一致して、わずか1年ほどで芸能界への挑戦は終了。
あっけない、しかし中身の濃い、希有な体験は終わりました。

希有かも知れない

この人生は、自分にとって希有な体験ばかりだったかもしれません。
不妊治療という体験。
4人の子を5年半で産んで育てたという現実。
長女は、中学から高校卒業まで、不登校引きこもり、最後に家出。
末娘は、風疹症候群による難聴という障がいをかかえ、共に訓練に明け暮れました。

生まれ故郷の神戸から福岡県に移住を余儀なくされ、その後神戸は震災にあい、被災した母とは連絡も取れないという事態に遭遇します。

たびかさなる環境の変化や年齢的な体調不良から、精神を病み苦しみましたが、死には至らず乗り越え再起を願って離婚を決意。

志を持って飲食店を自営するも4年足らずで廃業、その際できた借金の返済のため、あらゆる仕事を経験してきました。
そして世の中にはきびしい現場で働いて、生き抜く女性たちが多くいることもこの時知り、学びました。

今の想い

幸せで穏やかな生活を夢見た幼いころも、複雑な家庭環境にあって、自分に与えられた運命を恨んだこともありますが、今は違います。

自分には、生きてきた場面ごとに、懸命であったという自負があります。
その時は、なりふり構わずしてきたことが、結果人生を彩っていることに、今になって気付いているのです。

よく「天は乗り越えられる試練しか与えない」といいますが、乗り越えた今はそうかもしれない・・・とすこし納得しています。

与えられた試練の数だけ、人生に色彩がくわえられるのかも知れません。

希有な未来を願っている

いまもなお希有な未来を夢見て、歩を進めている私がいます。
今年初め、ウェブライティングの仕事を少し経験したことがきっかけとなり「エッセイスト」にあこがれるようになりました。
70歳を目前にして、ライティングに目覚め、つたない文章をつづっている。
そして幾年要するか分からない遠い道のりを、また歩こうとしています。

なにごともなく妻として母として、さくら色の道をおだやかに歩んできた友からは、わたしの人生は希有に映っているでしょう。
普通なら通らないですむ険しい道を、選んで歩いているのですから。

これから

息子はプロダクションを退所した後も、一流銀行の内定を辞退し音楽の道に進むと言い、若者の夢を追いかけていました。
ところが愛する人が現れると、思いの外あっさりと夢を断念し、今では会社員として働き、妻や子にギターの弾き語りをきかせる良きパパです。

息子の潔さにホッと胸をなでおろしたのも事実ですが、情熱の炎を消し去った寂しさもいなめません。

それなら・・・というのではありませんが、残された自分の人生に夢を託そうと思います。
人生が100年あるという時代、もしかしたら120年の延長戦になるやもしれません。
これまでの彩り豊かな道を、一人歩いてきた経験を活かして、挑戦してみたいと思っています。
そして、おもしろい人生だったと、喝さいを送って締めくくりたいものです。

♬最後までお読みいただき、ありがとうございます。(^^♪

#私だけかもしれないレア体験


サポートしていただければ嬉しいです。 これからも精いっぱい、心のこもった記事にしてまいります。 どうぞよろしくお願いいたします。