連言∨選言トートロジー(回路)2/命題変数が4つの場合
連言∨選言トートロジー(回路)2
命題変数が4つの事例を扱う前に、もう少し複雑な連言∨選言トートロジー(回路)について説明しておく(図38の回路)。論理式は(¬A∧¬B)∨(A∧¬C)∨(B∧¬D)∨C∨Dであるが、同一の命題変数ならば¬と肯定が入れ替わっても回路全体としてはトートロジーである。たとえば(A∧B)∨(¬A∧C)∨(¬B∧D)∨¬C∨¬Dといった具合にである。
図38連言∨選言トートロジー(回路)2
(A∨C)≡((A∧¬C)∨C)を用いれば証明は簡単である(図39)。
図39連言∨選言トートロジー(回路)2の証明
命題変数が4つの場合
次の事例として、A→CとB→Dを前提とした場合を考えてみよう。これは前原昭二氏の『記号論理入門』(日本評論社、新装版、2005年)44ページ掲載の論理式である。
まずは(A→C)∧(B→D)の否定形を変形してみる。
¬((A→C)∧(B→D))
¬(¬A∨C)∨¬(¬B∨D)
(A∧¬C)∨(B∧¬D) ・・・回路図は図40。
図40 (A∧¬C)∨(B∧¬D)∨X
((A→C)∧(B→D))→X の回路図
・・・ここでXにどんな論理式を採用すれば回路全体がトートロジーになるか、ということなのだが・・・(A→C)∧(B→D)では情報が少なく、この回路をそのまま読み込むと、Xの解は
¬A∨C (つまりA→C)
¬B∨D (つまりB→D) となり、
((A→C)∧(B→D))→(A→C)
((A→C)∧(B→D))→(B→D)
((A→C)∧(B→D))→((A→C)∨(B→D))
・・・というただ前提をなぞっただけの解答になってしまう(ただの∧除去)。トートロジーではあるから一応解の一つとはなるのだが・・・
そこで、¬A∨C∨¬B∨Dをシャッフルして、
(¬A∨¬B) ∨(C∨D)
¬(A∧B)∨(C∨D)
(A∧B)→(C∨D)
((A→C)∧(B→D))→((A∧B)→(C∨D)) という解答を得ることもできる。
さらに、先ほど説明した連言∨選言トートロジー2を用いてみると、また別の解答が得られる。
図41 (A∧¬C)∨(B∧¬D)∨X の解を連言∨選言トートロジー2を用いて導く
・・・上の回路図からは(¬A∨¬B)∨(C∧D)、下の回路図からは(¬A∧¬B)∨(C∨D)という解が得られる。
((A→C)∧(B→D))→((¬A∨¬B)∨(C∧D))
変形すると、
((A→C)∧(B→D))→(¬(A∧B)∨(C∧D))
((A→C)∧(B→D))→((A∧B)→(C∧D))
((A→C)∧(B→D))→((¬A∧¬B)∨(C∨D))
変形すると、
((A→C)∧(B→D))→(¬(A∨B)∨(C∨D))
((A→C)∧(B→D))→((A∨B)→(C∨D))
(回路全体が)トートロジーたりうる解は他にも無数(?)にありそうだが、とりあえずここでは
・・・の3つをXの解答として挙げておこう。ちなみに前原氏『記号論理入門』44ページに掲載されている全体の論理式は、
((A→C)∧(B→D))→((A∨B)→(C∨D))
である。
ここでこの手法の特徴についてもう一度列挙しておこう。
(1)論理式の真理値(トートロジーかどうか)を常に前提としているため論理学における健全性や完全性とは次元の違う分析法となった。
(2)複数の解答を得ることができる。
(3)前提の数によっては計算や回路分析が煩雑になってしまう。
(4)解答を求める際に用いるトートロジー回路のパターンを前もっていくつか準備しておく必要がある。知っているトートロジーパターンの量により解答のバリエーションも変化する可能性がある。
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