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冬生まれ
福子ちゃん。
それが、娘が産まれてすぐ、私たちが付ける前に呼ばれた名前だった。
娘を抱いてすぐにそう呼んだ友達に、え?なんで福子?と聞いたところ、だって鬼子じゃないでしょう?そう言われて初めて気づいた、この日は節分だった。
なるほど。だから福子か。
それもいいかもしれない。福を呼ぶ子。でも違うな。私が娘につける名前ではないな。
それから毎年、節分の日は娘の誕生祝いをする日となった。
鬼は外!福は内!
これは形だけ行って、すぐにハッピーパースデーの歌を歌うことになる。
恵方巻きも、豆もテーブルに並ぶことはない。
いつも子どもたちの誕生日には、手作りのケーキを焼いていて。娘が好きなのは、りんごのクランブルケーキだった。
しっかり泡立てたケーキ生地の中にキャラメルにソテーしたリンゴと、軽く焼いたクルミをざっくり混ぜて、うえにクッキー生地をクランブルにしてパラパラと散らして焼く。食べたらふんわりしたスポンジとりんごの甘酸っぱさと、そしてクッキーのサクサクが味わえる。そんなケーキ。甘さ控えめなところも娘の好みだった。
何かと物を欲しがる娘は、高価な物が欲しい時は、私とおばあちゃんに掛け合って、合同で買ってもらう、なんてこともやってのける子。ずる賢いなぁ。でも、生きる道を知ってるなぁ、なんて思っていた。
そんな娘ももう独立して。
今は彼氏とバースデー旅行なんてしたりして。インスタに素敵な画像と、美味しそうな牡蠣飯を載せていた。
いい誕生日を迎えたなぁ。
おめでとう。24歳。
まだまだ自分の生きる道に迷いながら、でも楽しみながら、色んな人を思いやりながら生活している。
いつの間にかあげていた誕生日プレゼントは、今は私がもらう番になっていた。
そんな子。やさしい娘。
すきに生きなさい。
母は、あなたの一番の味方です。
あなたがどう生きていくのか、楽しみにしています