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私の髪型を作ってくれる人
私がこの地に引っ越してきて、見つけた美容室。
家の近くで、子供が遊ぶスペースがあって、その上建物がオシャレで。そんな居心地のいい場所に何度も通った。
最初はそこで、何も分からず色んな人に切ってもらっていたけれど、だんだんこの人のカットがいいな、って思いだして指名をするようになった、高森さん。
けいさんの髪は流れがこう。そしてそんなにないけど、ここにちょっとだけクセがある。だから、ここにどうしてもボリュームが出てしまう。それでけいさんが思ってるようには頑張ってもならないんだよ、流れには逆らえない。でも、そうだなぁ。こうしたいのなら…チョキチョキ✂︎…これでどうかな?どうせ見えないところなら、思い切ってクセのあるところ切っちゃう。ほら、収まった。今切ったところが伸びてくる頃には、上に被さってる髪の毛が重くなるから今ほど気にはならないはずだよ。
そんなこと言ってくれた。
ちゃんとそこまでハッキリ言ってくれて、対処してくれたのが初めてで、もう高森さん以外の人のカットでは満足できなくなっていた。
なのに、いつしか高森さんがその美容室からいなくなってて。しょうがなく別の美容師さんに切ってもらっていたんだけど、やっぱり違うな、って毎回おもってしまって。どこかガッカリして、そこの姉妹店にも行ってみた。でも居なくて。
そこでふと思い出した、以前、高森さんと1回だけ年賀状のやり取りをしたなってこと。私もだけど、高森さんも好きな絵に拘りがあって、髪の毛を切ってもらいながらそんな話しで盛り上がった年末に、お互いに年賀状を出し合う事を約束したんだった。
ゴソゴソと何年か前の、ちょっとだけ埃を被った年賀状を探し出して、手紙を書いた。
もし、独立して別の場所で美容室をされていたら行きたい、ということ。高森さんのカットが好きだった、ということを。
何日かして届いた手紙には、何も言わずに辞めたことの理由と、私の住んでいるところからはほんのちょっと遠くなるけど、高森さんの家の近くの美容室にいるということで、早速予約をして行った。久しぶりだったし、感謝を込めて、手作りのケーキを手にして。
今日はどんな風にしたい?
チョキチョキ。チョキチョキ。
高森さんのカットはとても早い。
全体像を見つけたら、ほとんど迷わない。
あぁ。やっぱり高森さんだなぁ。私が好きな髪型にしてくれる。
ほんのちょっとした出来上がりのシルエットも、その人が持っているセンスで自分の好みに合うかどうかって違うんだよね。
そんな気持ちで、それからもうずっと通い続けている高森さんの美容室。
何年か前に完全に独立して、美容室をお家と一緒にした建物を建てられた。
田舎で、地元のおばあちゃんの送り迎えも可能な美容室。入ると方言がどこかしこに飛んでいて。ご夫婦で美容師さんなので、お互いにお得意さんがいらっしゃって。腰が低くて、いつでも誰でも気さくに話ができるおふたり。
美容師さんは、たくさんの知らないお客様と静かな時間を過ごすため、何かしら話さないといけない、という気持ちになる、とても私には無理だと思われる大変な職業なのでしょうけどね。色んな方がいらっしゃいます。この人の考え方は遠慮したいな、なんて思う方もいらっしゃったりね。もう絶対行かない、なんて時もあったな。
だけど、高森さんご夫婦はそんな感じが全くせず、その人に合わせるのが上手で。それも意図してない感じで自然に。。。
お家の周りには、いつも季節のお花がたくさん咲いていて、華やかだけど華奢で可愛らしい、澄んだ空気を纏っている。
高森さんの、3年前に始められた趣味のバイクも。これまた絵になっていて。
また色んな要望を言っては、そうだなぁ、といつも本気で考えてくれる。
もっぱら、最近は白髪をどうするか?ってことが多くなってきたけど。面倒だから、思い切ってグレーヘアにしたい!というと、いやいやそれはまだまだ早い!けいさんの今の状態はこの程度、それならまだこの色で染めた方がずっと自然。そんな感じで。
今年の夏、息子が20歳になるということで、記念に家族で写真館に行った。もちろん主役は息子。でも何枚かは14年一緒に暮らしている愛犬を主役にしてもらった。まだ元気だけど、目は白内障で全然見えてないし、犬の13歳は結構なおじいちゃんだから、この何年かは夏も冬も気が抜けなくて。なので、思い出作りに愛犬も一緒にパチリ、と。
人見知りだし、慣れない場所に落ち着かない犬。
お母さん、抱っこしてみて。そう言われて抱っこした写真。そこで改めて見たわたしの後ろ姿。
愛犬も最高だけど、あぁやっばり好きだなぁ。高森さんのカット。
そう思ってその写真をLINEのアイコンにしてみた。
昨日、またカットしてもらって、アイコンの話を喜んでくれた高森さん。
そう思って貰えて嬉しいです!って。
マッサージも気持ちよかったです♪
ここに越して来て20年。
息子も20歳。
高森さんに会って…20年かぁ。
きっと、あの時、偶然にやり取りした年賀状は、わたしの運命だったんだなぁ。
今度はどんな花が咲いてるかなぁ。
また来ます!
今度は年末に、成人式に出る息子を連れて来ます!
息子をカッコよく仕上げてください!
なんて、ハードル高くしちゃったな。笑
可能ならずっと、あなたにお願いしたいです。
私のカット、そしてきっと増えていく白髪のお世話までお願いします。