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友達になろう

私は短大卒業なので、初めて働いた中学校では1番年下だった。学校なんて、大卒が多いからね。それは分かってたし、みんなにも可愛がってもらった。ありがたかった。でもどこか、寂しかったんだな。

若い女の先生、しかも教えているのは美術。5教科のように頭を使う教科でないし、実践してもらわないと話にならない教科だけに生徒からは舐められ、毎日葛藤の連続。それにも負けず格闘しているうち、時が経ちやっと同じ歳の人と一緒に働く日が来た。嬉しくて嬉しくて、すぐに仲良しになった。

でも、その人が務める期間は2ヶ月。あっという間に過ぎ、お別れ会がやってきた。

会が終わった夜。ちょっと話さない?と言われた。
近くのバス停のイスに2人で座った。
友達にならない?と言われた。
正直、面食らった。
もう既に仲良しだった。友達のようだった。でも、同僚だった。呼び名は○○先生。
今日から圭ちゃんだよ。私は愛ちゃん。先生はつけない。と言われた。んーん。言ってくれた。

嬉しかった。こんなこと言ってくれるなんて、とっても嬉しかった。もう何年前のことだろう。かるーく20年以上前。笑。でも、あの時のことははっきり覚えてる。愛ちゃんの向こう側に見えた景色。愛ちゃんが言ってくれた時の表情。仕草。こんなに覚えてるなんて、本当に嬉しかったんだと思う。

きっと、ずっと覚えてると思う。

友達って、何となくなっていくものだと思ってた。同じクラスになったり、部活動が一緒だったり、趣味が似ていたり、そんなので話す機会が多くなって、自然になっていくものだと。
子どもの時にお友達になろう!一緒に遊ぼう!と言われるのとはまた全然違った。
大人になって、人となりを知ってもらって、それで言われた友達になろう、は本当にかけがえのない言葉だった。

それから愛ちゃんとは一緒にお華を習ったり、勉強したりした。いっぱい話しもした。恋愛の話しも。お互いの結婚式にも行った。

でも、学校で働くのを辞めてしまった私と、続けている愛ちゃん。次第に年賀状とたまにする電話のやり取りぐらいになって。お互い似た時期に子どもを産んで。愛ちゃんが産休で仕事を休んでいる時に1度遊びに行ったかな。

また時は経ち、お互い旦那の実家が同じ土地で、たまたま同じくらいの時にこの土地に転勤でやってきた。いっときしてお互い同じくらいの時期に家を建てて。お祝いを持ってお互いの家に行ったな。

なんでだろう、考えることが似てるのかな。ま、同じ歳だし。同じ時期に同じような感じで。

子どもが中学生になると、同じ中学校に通った。クラスは違うけど、同じ学年。男女で違うけど、選んだ部活はソフトテニス部。今度は愛ちゃんと試合で会うようになった。全部たまたま。なんでだろう。子どもも考えることが似てるのか?笑。

と、今度は下の子の担任が愛ちゃんになった。本当にびっくりだった。でもありがたかった。いじめられがちな息子を優しく見守ってくれた。

上の子が22歳になって、私の勤め先に愛ちゃんの上の子がバイトでやってきた。私がいるのを知っててきたのか確かめてはいないけど、別に頼りにしてきた訳では無いことだけは、その子の性格からして分かる。それまで塾で講師をしていたその子は、単に色んな仕事をしてみたかったのだと思う。自分に合う仕事を探していたと後から聞いた。最初からこの仕事は、彼には合わないことが私には分かっていたのだが。笑。案の定。1ヶ月弱で彼は辞めた。引き留めはしなかった。合うところに行った方が彼のためだと思った。

色んなことあったね。
きっと縁があるんだろうね。
これを運命と言うのかなって、最近思い返して思った。

全ては、友達になろう、と言ってくれたから。
嬉しかったから。
今も友達。きっとずっと友達。

そして私は今、一生愛ちゃんを見守りたいと思っている。愛ちゃんが心から笑える時が来るのをずっとずっと待とうと思っている。今まで生きてきた中で、1番大きな決心をした。そんな思い。でもそんなこと愛ちゃんには言わない。重いだけだから。絶対言わない。ただ、私の心の中で誓った。




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