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無邪気に走るあの子達
私には、子どもの頃から何かを感じる力がある。
全然、たいそうなものでは無い。
寝ていて、何か音がする気がして目が覚めて。机の上で何かが揺れていたり。足の爪先の方で小さな生き物がボンポンッと跳ねたかと思ったら、お腹の辺りまでトコトコトコと走って来た感じがしたり。
すべて気のせい、で片付けてしまうようなもの。
高校の合宿で行われた肝試しでは、川の方でありえない動きをした光を目にした。一緒にいた同級生には見えていなかったことがわかって、怖くなってドキドキしてしまったこともある。
他にも色々見えたりするのだけど、はっきりいって私は幽霊が怖い。ものすごく怖い。夜、1人でトイレに行くのも実は怖い。なので、怖い話を聞いてしまった後なんて、部屋を暗くするのさえ怖くて、1人だったら明るいまま寝たりすることも、ある。
ホラー映画なんて以ての外。
そんな経験をするくせに怖い、なんて最悪だな、とよく思うのだけど。
でもひとつだけ、怖くない、また会いたいと願うことがあったのを思い出した。
夕暮れに散歩をしながら、ご近所同士の小学生ぐらいの子どもの声を聞いた。
じゃね。
またね。
学校帰りに、家の前で喋っていたのだろう。話が尽きず、ついに1人の親が帰ってくるまでここにいてしまった、そんな感じの別れ方。
可愛いな。寒かったろうに、楽しかったのだろうな。
そう思って、ふと、暮れに帰ってくる我が子を想った。お正月だな。
そこで思い出した一つの経験。
まだ我が子が小さい頃。
元旦。目が覚めて、おせちの仕上げをしなければ、なんて思いながら寝ぼけ眼でまだ着替えもせず、半纏をパジャマの上から羽織り階段を降りた。リビングに置いている炬燵の周りで目にした、きゃっきゃ笑って走る二人の子供達。
あら。私より早く起きてたのね、そう思った。
その二人の子達は炬燵の周りを二周回った後、キッチンの方へ消えた。
その直後。二階から降りてくる我が子達。
おはよう。
あけましておめでとう。
おめでとう。
あれ?今、ここで走ってなかった?
んーん。今起きたよ。
ん?
あれ?
なんだったんだろう?
不思議に思いながら食べたおせち。
あれはきっと、座敷わらしだったのだろうと思う出来事。
ちょうど我が子ぐらいの大きさの子どもたちだった。似たシルエットに、本当に我が子だと思ってしまった。
でも違ったんだな。
あれは何を意味していたのかなぁ?と思い出してはよく考える。
また会いたいなぁ。あの子達に。
意味も何も無いけど、何となく。
無邪気に。楽しそうに。ただ走っていたあの子達に。
どこか、温かくなるあの子達に。