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夢見るNINTENDO64

 若者を形容する語として「Z世代」をよく耳にするが、自分の世代は一体何になるのだろうかと思ってAI先生に聞いてみると、どうやら「プレッシャー世代」と定義づけられているらしい(ということは、金髪で国会に当院するあのセンセイもプレッシャーが故に…)。

 物心が付いた頃にはバブルの狂想曲が幻影へと変わっていて、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件などの暗いニュースが立て続けに発生し、その後も不況や就職難で成長の果実を“なめなめ”できなかった不遇の世代だが、そんな我々でも誇れる体験が少なからずある。

 テレビゲームの“高度成長”を多感な時期に体験できたことだ。

 今、SwitchやPS5のゲームを見て、もちろんすごいとは思うし、過去作に比べてゲーム性が格段に向上しているのは幸福なことなんだけれども、私が少年時代に体感した“高度成長”は、レールなき箇所にレールが敷かれ、次元を突き抜けて世界観が拡がっていった衝撃だ。

 幼き頃から任天堂のゲームを愛用していた身にとって、スーパーファミコン(SFC)は人生そのものであり、友達の家へ遊びに行っても、ほぼ必ずSFCがテレビの前で鎮座し、同世代機であるメガドライブやPCエンジンにお目にかかることはまずなかった。まさにSFCは放課後のヒーローだった。

 ところが、'95年頃になると、SFCが徐々に隅へ追いやられていくと共に、セガサターン(SS)やプレイステーション(PS)を友人宅で見かけるようになってくる。CD-ROMを入れてゲームするという行為が何とも近未来的で、音質も格段に向上していて、大人の階段を一歩上ったような感覚に苛まれた(バーチャファイター、おもしろかったなぁ)。

 そこに、NINTENDO64(N64)発売の報がやってくる。

『ゲームが変わる、64が変える』

 この広告コピーに何度胸を躍らされたであろうか。周囲がどんなにSSやPSに陶酔しようとも、決して親にねだることはなかったし、心の底から欲しいと思うこともなかったが、ファミマガでN64のプレビュー画像を見たり、CD-ROMではなくROMカートリッジを採用した理由を聞いたりすると、だんだん欲しくなり、というよりも「手に入れないといけない」と思うようになり、「発売日に必ず買ってほしい」と言い続けるようになってきた。

 そして、1996年6月23日。奇しくも本日と同じ日付、今年と同じ日曜日に、N64は満を持して我が家にやってきた。今日の空は曇り模様だが、あの日だって曇っていたように思う。

 さて、開封の儀。SFCとは明らかに質感を異にする未来を先取りした重厚ハードであり、一般的なパソコンを遙かに凌駕するスペックと共にボディカラーの黒がラグジュアリー感を醸し出す。コントローラの中間部には「3Dスティック」という“ぐるぐる”が配置されていて、左手をセンターポジションに置くというのも驚きだった。

 ソフトについて、決してあまのじゃくというわけではなかったものの、万人が選ぶであろうスーパーマリオ64は選んでいない(別にマリオが嫌いなわけではない)。ましてや最強羽生将棋という飛び道具を買うわけでもない。私の心は発表時よりずっと「パイロットウイングス64」一択だった。

 体育が得意ではなかったせいか、せめてゲーム内ではヒーローインタビューを受けたい思いが強く、野球やサッカーなどのスポーツゲームを極限まで楽しむことが多かった。中でもパイロットウイングスは友人から何度も借りて100時間近くはプレイした名作(正確に言うと、スカイスポーツ・シミュレーション)であり、個人プレイで空を自由に飛べたことが自分的なツボにハマったのだろう。

 最近、「ブラストドーザー」が私の中の何かに突き刺さり、衝動的にNintendo Switch Online追加パックを購入したのだが、その際にパイロットウイングス64も遊べることに気付いていた。どうせなんで6月23日にプレイ解禁したほうが何かと絵になるのではないかと感じ、今日まで我慢に我慢を重ね続け、2024年6月23日。アッコにまかせる前、そうめんを作り始める前に実に28年振りに初期状態からプレイしてみた。

 こんなに画面キレイだったっけ?
 こんなにスイスイとゲームが進んでいくんだっけ?
 字崩れっぽく見えちゃうのだが?

 やっぱり、おもしろい。ビギナークラスでホリディアイランドを少しだけ探検しただけなのに、ただキャラを動かしているだけでおもしろい。さすがに当時のような衝撃は感じないし、Switchのゲームと比べるとリアルさでは劣るけども、あの頃の私はこのゲーム画面で未来を先取りしていたのかと思うと、胸が熱くなる。

 その後、1997年春にインターネットという魔物と禁断の出会いを果たしてしまい、N64はいつしかアンティークと化してしまったが、N64を見る度に少年時代に見た夢を思い出す。

 

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