書籍紹介ーー唐王朝の新しい景色が見えてくる
八月下旬とは言え、猛暑の毎日が続いています。皆さま、お変わりなくお過ごしでしょうか?
今日は、中国史の本をご紹介します。
『唐--東ユーラシアの大帝国』 森部豊著・中公新書
まだ本を読み終えていなかったということに加え、ちょっと忙しい時期で、視聴期間内に見る自信がなかったために、見送りました。今思うと、残念なことをしました。
著者の森部豊先生は関西大学の教授をなさっています。
今年3月、春の漢詩講座でシルクロード関連の漢詩を取り上げた際、唐代の版図を資料として示したかったのですが、ちょうど良い地図を見つけることができませんでした。
その後、調べていく中で、「安西都護府」の位置が時代によって移動していることなど、いくつか疑問に思うことがあり、心に引っかかっていました。
それらの疑問を解き明かしてくれたのが、この本なのです。
唐の初代皇帝李淵は隋の皇后独孤伽羅の甥にあたります。
その李淵が建国した唐王朝の290年に及ぶ歴史と20人の皇帝それぞれの治世について詳しく述べられ、また、また、唐王朝を東ユーラシアの「他民族からなるハイブリットな王朝」として位置づけ、唐代の版図の変遷に関しても、丁寧に説明がなされています。
読み進むにつれ、唐という王朝や時代について、これまでの私の理解がかなり大雑把であったことに改めて気づかされました。
以前に見た中国歴史ドラマ、『独孤伽羅ーー皇后の願い』や『武則天』の内容を重ね合わせつつ、学術書としてだけではなく、本物の歴史のドラマチックな展開にハラハラしながら読了しました。
中国の歴史に興味のある方、漢詩の作られた背景が気になる方にお勧めの1冊です。
秋の漢詩講座は、この本の内容に触れながら、漢詩の世界へとお誘いできれば・・・と考えているところです。