『登鸛鵲楼』―上から眺める景色は?
気がつくともう6月になっています。あと1ヶ月で2021年が残り半分に・・・
そんな当たり前のことに焦ってしまいます。
さて、今日ご紹介するのは、王之渙の『登鸛鵲楼』という詩です。これも有名な詩ですので、ご存じの方もたくさんいらっしゃることと思います。
登鸛鵲楼 Dēng Guànquèlóu
王之渙 Wáng Zhīhuàn
白日依山尽 Báirì yī shān jìn
黄河入海流 Huánghé rù hǎiliú
欲窮千里目 Yù qióng qiānlǐ mù
更上一層楼 Gèng shàng yì céng lóu
【書き下し文】
鸛鵲楼(かんじゃくろう)に登る
白日山に依りて尽き
黄河海に入りて流る
千里の目を窮めんと欲して
更に上る一層の楼
【桂花私訳】
白く輝く太陽の光は山の端(は)まで届く
楼上から眺めると、黄河が、東方遙かな海まで勢いよく流れていくのが見える
千里先の眺めまで見極めようと
さらに1つ上の階へと歩みを進める
【詩の形式】
五言絶句 押韻:流・楼
*1句目と2句目、3句目と4句目がそれぞれ対句となっている。
*鸛鵲楼・・・山西省永済県の城壁の西南隅にあった三層の楼閣。コウノトリが巣をかけたところから名付けられたと言われる。
*「白日」を夕日とする解釈もあり。
作者:王之渙(688~742)山西省太原の人。若い頃は自由な暮らしが長く、中年以降に文学に志した。科挙に及第しなかったため、在野の詩人として活躍した。(④)
楼の上から見下ろす黄河の流れ、もっと上から眺めたいと三階に登る気持ち、何だかよくわかりますね。
こことは違う景色が見られるかもしれないと期待して、高層ビルの上の展望スペースに上がる現代人と同じかもしれません(!?)
「中国では努力して目標を目指すことを、結句の引用で説明するほど親しまれている。」(②より引用)
そうなんですね!? ご存じでしたか?
確かにもう1階上に上がろう! あと一歩前に進もう! という向上心の引き合いに出されるのも理解できますね。
ただ、今の心境としては、遠くを眺めたい、というよりも、「時間」という大河の中でもがく、現在の私たちを
10年後、20年後、・・・いや100年後の未来から眺めることができるならば、どのように見えるのかを
更に上の場所から見てみたいような気がします。
歴史の流れの中で振り返るとき、2021年の私たちはどう見えるのでしょうか?
もちろん、未来をささっと確認してから、2021年に戻って、生きていきます!
いつの間にかタイムマシーンの話のようになってしまいました。
いずれにしても、ちょっと俯瞰する気持ちを忘れずに、日々を元気に過ごしたいと思います。
【参考書籍】
①『漢詩一日一首(夏)』一海知義著 平凡社ライブラリー
②『図説漢詩の世界』山口直樹著 河出書房新社
③『中国古典紀行2 唐詩の旅』 (同書所収「旅の名詩一六選」鈴木修次著) 講談社
④『唐詩選(二)』高木正一著 朝日新聞社
⑤『新国語総合ガイド(四訂版)』 井筒雅風・樺島忠夫・中西進共著 京都書房