見出し画像

秋から冬へーー張継「楓橋夜泊」

紅葉の美しい季節、やがて、落ち葉が舞い散り始める頃。秋から冬へと向かう季節にぴったりの張継「楓橋夜泊」をご紹介します。

日本人には大変有名なこの詩ですが、寒山寺は6世紀初めに創建され、唐代に寒山・拾得という2人の高僧が住んだと言われるお寺です。(諸説あり)明代に一度炎上し、清代末期(20世紀初頭)に再建されたとのことです。

寒山寺を訪れた日本人がよく購入する拓本の元となる詩碑も、実は清代の学者兪樾(ゆえつ)の手に成るものだそうです。(そういえば私も買ったような記憶が・・・)

    楓 橋 夜 泊   Fēngqiáo yè bó 

                  張継 Zhāng jì

月 落 烏 啼 霜 満 天  Yuè luò wū tí shuāng mǎn tiān

江 楓 漁 火 対 愁 眠  Jiāng fēng yúhuǒ duì chóu mián 

姑 蘇 城 外 寒 山 寺  Gūsū chéng wài Hánshānsì  

夜 半 鐘 声 到 客 船  Yèbàn zhōngshēng dào kèchuán

【書き下し文】

月落ち烏啼いて霜天に満つ

江楓漁火(ぎょか)愁眠に対す

姑蘇(こそ)城外寒山寺

夜半の鐘声客船に到る

【詩の形式】七言絶句

【押韻】満眠船

*江楓・・・川岸に生えている楓。

      中国の楓は葉の大きいマンサク科の植物。

*漁火・・・いさり火

*姑蘇・・・蘇州の古称

*客船・・・旅人の船。旅人は作者自身。

 

《桂花試訳》(少し大胆に意訳してみました。)

  楓橋のたもとにて 今宵の宿は船の中 

月も沈み、烏の啼く夜更け。空には寒々とした霜の気があふれる。

川辺の楓の木、遠くの漁り火、寝付けない旅寝のまどろみの中。

蘇州のはずれにある寒山寺から、

夜半の鐘の音(ね)が私の船まで届いてくる。


作者である張継は8世紀の詩人で、詳しいことは伝わっていませんが、8世紀半ばには進士となり、官吏を務めたそうです。

もとは「封橋」という名前であった橋がこの詩以降、「楓橋」と呼ばれるようになったとか。

寒々とした晩秋の夜更け、「旅愁」に心塞がれる作者の様子が目に浮かぶようですね。

参考書籍:

『漢詩一日一首(秋)』一海知義著    平凡社

『漢詩入門』一海知義著     岩波ジュニア新書

『図説漢詩の世界』山口直樹著  河出書房新社

『中国古典紀行2 唐詩の旅』  講談社

   


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?