ロックダウン中にリモート化する世界について考えてみた
先週のSalesforceの発表に続いて、ヨーロッパを代表するテック企業であるSpotifyがコロナ後も従業員のリモートワークを推進すると発表した。アメリカだと既にFacebookなどの大手が長期リモートワーク宣言していますが、多国籍であるヨーロッパにHQがあるSpotifyが動いたのは大きな意味があると思います。この流れはもはや止まらなさそう。
Spotifyは公式ブログで具体的にこう言っています。
“Through this distributed-first mentality, we are giving employees the opportunity to elect a Work Mode—whether they’d prefer to work mostly at home or in the office—as well as their geographic location”
「この(従業員の)分散型のアプローチを通じて、私たちは従業員に働き方を選択する機会を与えます − それはオフィスで働くか家で働くかということに加え、どの地域で働くかも含めてです」
実際にこれをサポートするためにSpotifyオフィスが近くにない地域で働く場合はco-working officeの費用も出すと。ここまでやるのは凄い。
僕もかれこれ自宅勤務で色々な国と仕事しながら1年が経ったのでこのテーマについて自分なりの考えを以下の順に書いてみようと思います。
1. リモートがもたらす変化
2. とはいえ、チャレンジングなこと
3. 長期的な影響の妄想
1.リモートがもらたらす変化
リモート化した世界がもたらす変化は一言で言うと真の実力社会の到来だと思います。
まずは地域という概念からの開放。ヨーロッパのテック市場でいうと、ベルリンなど一部の都市の勢いがあるとはいえ、ほとんどのタレントがロンドンに集まります。
反動としてより賃金が安い東欧に開発を外注するなどの動きが出てきます。実際に僕たちもリトアニアの開発会社を買収しました。
ただ、やっぱり中には家庭の事情でロンドンに行くことが出来なかったりする人もいますし、全部の企業が買収される訳ではないので、他国の人材にとっては不利です。そういう機会に恵まれたとしても給料はロンドンに比べるとかなり安いです。
この構図から「地域」という概念をなくすと、優秀なリトアニアのエンジニアはより多くのチャンスに巡り会えるということです。逆にロンドンで働いているイマイチなエンジニアはヨーロッパ中(最終的には世界中)がライバルになる。例えとしてエンジニアの話をしましたが、本質的にはどの職種でも同じだと思います。
次の観点としてあるのが働く時間帯からの開放。Salesforceはリモート推進のポイントとしてこう言っています。
”the 9-to-5 workday is dead”
パフォーマンスが一番大事だとすると、夜型の人には9−5時出社は合わないかもしれない。子供がいる人は働く時間帯を一日の中で何回か分けたりする必要があるかもしれない。色んな働き方がある中で、その人が一番アウトプットを出しやすい方法を選ばせた方が良いってことになる。
このように「地域」と「時間」という制約がなくなると、その分可能性は拡大する。その時に実力のある人にとっては最高の時代になるし、そうでない人にとっては厳しくなります。タレントの争奪戦が起きる、まさに実力勝負の世界。
2. とはいえ、チャレンジングなこと
一方で簡単にというか、すぐにはそうはならない理由がいくつかあります。
1つ目は凄いシンプルですが時差です。Spotifyもさすがにこれは感じているようで、まずは同じようなタイムゾーンの中で施策を試すらしいです。
グローバル企業ではロンドン・ニューヨーク・東京の3拠点でコールなんていうケースも出てきます。この場合は現状のテクノロージーでは残念ながらおしまいです。どこかの人、朝3時でごめんないさいっていう感じです。
そこまでいかなくても意外と小さな時差でも大変です。例えばうちは開発拠点がイギリスとリトアニアの2時間の時差がある2拠点体制だったのですが、開発チームはMorning Stand Up(日本でいう朝会)から始めます。
ミックスチームの場合ロンドンで9時に出社するとヴィリニュスではもう11時になっちゃうので結構なロスです。なのでロンドンチームには1時間早く出社お願いする羽目になり、結構嫌がられたりしました。時差2時間以上になると思ったより細かいところで不便が多発し、うちは最終的にチームを地域によって区切ることにしました。
なので、まずは比較的時差が少ないところで成功事例を作ってからスケールさせるのはロジカルな考え方だと思います。
2つ目、そして多分一番明暗を分けるのは評価制度です。社員により多くの自由を与えるというのは、最終的にそれがより良いパフォーマンスに繋がるということが前提です。
リモートにしたけどサボる人が増えて生産性落ちたみたいな話も実際に良く聞きますし、ある意味自然なことだとも思います。今後は評価制度がそういう人に対してシビアになるはずだし、それを前提としたマネジメントをしないと成り立ちません。
これは国の規制や方針にも関わってくると思います。同じヨーロッパでもイギリスやスペインなどは比較的簡単に従業員を解雇できる。一方でフランスやイタリアなんかは基本解雇がしづらい仕組みになっています。
これは難しい問題で、どの国も基本は従業員を守ろうとしてそこが厳しくなっているし、それは必ずしも悪いことではありません。一方でパフォーマンス重視のカルチャーを目指す場合は規制が厳しい国とリモートワークは相性が悪い。
重要なのはどの働き方でも正当に評価できる仕組みを作れるかというポイントです。国をまたいだ文化や規制の違いまで考えてリモートに適した人事制度をデザイン出来ている会社は少ないと思うので、今後、多くの実験を通じて形成されていくでしょう。
3. 長期的な影響の妄想
これからSpotifyに続き色んな企業がリモートを推進していくと思います。そうなるとどうなるか、ちょっと長期目線で妄想してみました。
まず最初に思い浮かぶのは都市への影響。最初のロンドンの話に戻ると、ロンドンに来ている外国人のほとんどの理由が仕事です。イギリスはご飯もそんなに美味しくないし、天気も良くないので、高い給料に皆惹かれてきます。
一方でヨーロッパの若者の住みたい都市ランキングの上位常連はバルセロナです。年中天気良い、ご飯美味しい、海が近い、サッカーなどなど、たくさんの魅力があります。でも殆どの人が仕事が無いから実際に住まず、夢のままで終わります。
この「ここに住みたいけど仕事がなぁ」系の都市はリモートが進むにつれ、価値がどんどん上がっていくはずです。
これが更に進んでいくとどうでしょうね。東京、ロンドン、ニューヨークみたいなメガ都市は衰退していくのか?シンガポールみたいにもともとハブであることそのものを売りにしてた都市はどうなるのか?人材だけではなく都市同士のガチンコ勝負みたいなことになっていくのかもしれませんね。
更に、僕が一番の壁だと感じている時差さえもテクノロジーの進化によってそのうち解決されるはずです。仲良くさせてもらってるイギリスの大手VCは既に投資テーマに”Future of Work”を設定しています。
そうなってくるとあとは時間の問題な気がします。留守電の超進化バージョンみたいのが出てきたり、シンプルに時間差MTGを開催できるSaaSが出てきたり。
それらの変化がもたらす世界にワクワクしています。海外にいるけど、もともと日本人である僕みたいな人間にとっては本当に選択肢が増え、夢が膨らみます。
実際にオフィスを持たずにリモートオンリーで起業しているスタートアップも増えてきました。そうなるとどんどん可能性が増え、人類の進化も間違いなく加速していく。面白いことになってきました。
終わりに
ということで初noteを書いてみました。こんなに日本語書いたの久々です(笑)。何を隠そう僕も経営者としてリモートには最初かなり懐疑的でした。でもロックダウンに入りそれしか選択肢が無くなったこの1年で色々経験し、どうせならどうやってアドバンテージ取れるかを考え始めました。
勢いで書き殴ったので雑だったらすみません。質問、感想など何でもコメント頂けたら嬉しいです!