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今週のTech News #101 -2024年のシェアサイクルに関する論文...etc
2024年に投稿された国内のシェアサイクルに関する論文をまとまてみました。
ざっと見た感想ではありますが、どれも面白いです。じっくり読んでみようと思います。
■機械学習による利用予測とLMMによる利用予測
「大規模言語モデルを用いたシェアサイクルの需要予測」
本論文では,大規模言語モデル(LLM)を用いたシェアサイクルの各ステーションの状況データから次の 24 時間の一時間ごとの利用可能台数を予測する手法を提案する.まず,シェアサイクルの過去データの言語化を行う.学習データとして,ステーション ID,年月日,時間 (一時間毎),時間帯情報,曜日,平日休日祝日フラグ,気温,季節,天気予報,ステーションの場所 (緯度・経度),自転車置き場が設置されてからの経過日数,ステーションの地域への浸透度,一日の過ごしやすさ,風速・降水量表現,を結合したテキストデータを準備する.教師ラベルは,各ステーションにおける各時間のシェアサイクル利用可能台数であり,これを各学習データに付与する.そして,教師ラベルを出力するよう,大規模言語モデル BERT を追加学習する.本アプローチにおいて,機械学習による需要予測結果に比べ,BERT は RMSE が 0.2 程度向上した.この結果から,シェアサイクルの過去データを言語化し大規模言語モデルを追加学習することで,シェアサイクル需要予測に関する知識を獲得できる可能性を示した.
■利用数との相関がある変数の特定
「ハローサイクリングのステーション需要に関する特徴量分析」
本研究では、統計情報可視化システムMESHSTATSのAPIを用いて、シェアサイクルの時系列データの可視化、分析を行い、利用数との相関がある変数の特定を行う。 本研究で検討するシェアサイクルとは、一定のエリア内に複数配置された自転車の貸出・返却拠点(シェアサイクルポート)において、自転車を自由に貸出・返却できる交通手段を示す。 日本でのシェアサイクルの市場規模は年々拡大しており、導入を検討している都市も複数存在する。しかしながら、導入効果の検証が少ない状況から、実際に導入するべきかの判断は難しい。本研究では、利用数に影響を与える変数を特定することで、潜在需要のある地域の提案、新しいポートの選定を目的とする。
■シェアサイクルと公共交通の組み合わせによる手段選択
「COVID-19パンデミック下の通勤交通を対象としたナッジインセンティブによるシェア型交通の選択行動」
COVID-19パンデミックの間に、新たな交通サービスの一つとしてシェア型交通が注目されている。このシェア型交通の持つ公共交通に対する補完的機能の可能性に着目し、東京都心部における通勤目的の交通行動を対象に、 WEBアンケート調査を行った。調査では、シェアサイクルと公共交通の組み合わせによる手段選択において、交通行動の変容を促すためにナッジインセンティブを考慮した。これらのマルチモーダルの交通手段の組み合わせ条件による選択要因を分析することで、通勤交通における行動変容に関する知見を得た。
■地域メッシュごとの需要予測モデル
「シェアサイクルにおけるメッシュごとの需要タイプ分類と需要予測」
近年、環境問題に対処するため、自転車から公共交通や自転車への移行が促進されている。その中でもシェアサイクルの普及は世界各国で進んでいる。シェアサイクルを普及する上で、新たな土地で優先的に配備すべき土地を推薦することを目的としている。シェアサイクルのオープンデータから、メッシュごとに自転車数の変動の様子に特徴があることに注目し、昼と夜の自転車数の違いから需要のタイプとしてt検定を用いて分類する。その分類方法に従い、メッシュの人口や労働者数、コンビニの数などのデータから分類の予測や自転車数の差の予測ができるような予測モデルの作成を行う。
■利用者による自転車の再配置の効果測定
「インセンティブシステムの社会実装を見据えたシェアサイクル運用システムの検証
~つくば市シェアサイクル実証実験事業「つくチャリ」を事例として~」
シェアサイクルは、自転車の台数がポート間で偏ることから、偏りを解消する再配置が必要となる。再配置は、本来は事業者が行うものだが、利用者に金銭的な報酬を支払うことで、自転車の台数調整を促すインセンティブシステムがある。これにより、再配置の費用削減が期待できるが、報酬の費用が生じ、シェアサイクル事業の収支には改善が見られない可能性がある。本研究では、自転車の利用を表現したシミュレーションを構築し、インセンティブシステムの効果を評価した。その結果、収益の増加、再配置回数の削減が見られた一方、利用者による台数調整が一定の割合を超えると、収支の減少を示した。よって、インセンティブシステムの導入は、利用者の利用機会の創出、事業者の再配置回数の削減には寄与するが、事前に利用者への調査を踏まえる必要がある。
■シェアサイクルの満足度の要因分析
「シェアサイクルによる回遊行動の実態とリピート意向に関する要因分析-福井県敦賀市を事例として-」
本研究では、福井県嶺南地域の主要都市である敦賀市に導入された、つるがシェアサイクルの GPS による滞留場所のデータと敦賀市内の観光地や店舗の重ね合わせにより、利用者の回遊行動の実態を整理した。その結果、敦賀市街での広域的なエリアで多くの滞留が確認できた。また、利用者を対象としたアンケート調査を行い、つるがシェアサイクルのリピート意向の要因分析を行った。その結果、つるがシェアサイクルサービス全体の満足度が最も影響を与えていることが明らかとなった。また、つるがシェアサイクルの満足度の要因分析をみると、「自転車のメンテナンス状況」、「登録手続きのしやすさ」、「ポートの数・設置場所」、「営業時間」、「自転車の電動アシスト機能」、「利用料金」が影響を与えていることが明らかになった。
■学生の行動変容×中心市街地活性化
金沢市公共シェアサイクル「まちのり」による大学生の行動変容並びに中心市街地活性化に関する定量的分析~エリア拡大社会実験を通して~
金沢市では都市の持続的な成長に向けコンパクトシティの実現を目指している一方,これまでの都市発展が自動車に過度に依存してきたことで都市の賑わいが郊外に流出し,中心市街地の活力が低下していることが課題となっている.
一方,本研究が対象とする金沢大学角間キャンパスは金沢市中心部から離れた郊外に位置し,キャンパス内外の移動や町の中心部に移動することも容易ではなく,この状況の改善が金沢市のまちなか活性化につながると考えられる.
上記を検証し学生のモビリティを社会的・個人的に望ましい方向に変える知見を得ることを目的として,金沢市公共シェアサイクル「まちのり」のエリア拡大による学生の移動の利便性向上を図る実験及び分析を実施した.結果,学生の行動変容の可能性(自動車依存脱却,まちなか回遊行動の促進)が見出された.
イラスト - Noriaki Kawanishi
とてもシンプルでわかりやすく絵のタッチが気に入っており使用させてもらっています。いつもありがとうございます。
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