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NHK「立花隆 最後の旅」を見て思ったこと
家にはテレビがないんだが、実家にいたのでNHKを見ることができた。立花隆が亡くなってちょうど一年ということで放送された「立花隆 最後の旅」という番組だ。
僕はジャーナリストでは決してないが、立花隆には自分でもかなり影響を受けたと思っている。それはおこがましいな。単に憧れていた、というぐらいだろう。
宇宙からの帰還、脳、サル、ガンなど、縦横無尽に走った知の巨人の本を読んで、それらの分野に興味を持ったのだった。
この番組を見て衝撃的だったのは2つ。
1つは通称猫ビルと呼ばれていた立花隆の仕事場のビル。数万の蔵書を集めた猫ビルの中に詰まっていた書籍がすべて古本屋に売却されて一冊も残っていなかったこと。
これは本人の遺言によるものだそうだ。でも村上春樹ライブラリーのように、ビルごと出版社だった文藝春秋社が買い取って「立花隆ライブラリー」として遺すことはできなかったのか。もしくはそこを見越して、それすら遺言で拒否していたのだろうか。
2つ目は、それも本のことも含めてだが、遺体はゴミとして捨ててほしい、お墓も戒名も要らない、と言ったことだ。つまりまったく無に帰したいということだったのだろうか。
ガンで亡くなった立花隆さんだが、ガンになったとたんガンの勉強をはじめ、専門家とディスカッションをして研究をした。
にも関わらず、自分の末期は、すべての検査を拒否して静かに亡くなったのだそうだ。
ずいぶん前、武満徹さんが亡くなった時、立花隆さんはNHK教育かなにかで番組を持っていたんだと思うが、その番組の中で立花隆さんが武満さんが亡くなったという話をしていて、ラジオなら放送事故級の長さで言葉に詰まり涙を流したシーンを覚えている。しかし自分が逝くときには、静かに、ある意味で颯爽と、まったく跡形遺さず、跡を濁さずに、去って行ってしまった。さすがだと思う。
でも知の巨人が遺した書籍はたくさんあるから、それを順々に読んでいく。そして自分が面白いと思った分野を深掘りして、知を楽しみ、ほんのわずかでも人類の知に貢献できればと思う。貢献は無理だと思うけど。
立花隆さん、ありがとうございました。宇宙からの帰還、忘れられません。
冒頭の写真は実家にある早世した私の弟の仏壇です。