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安静時採血という、瞑想を味わう

慢性腎臓病という、立派な成人病患者になった私は定期的に病院に通うことになった。また減塩、血圧コントロールも今後の余命に大きく関わることになった。ま、年をとるって言うのはこういうことだ。また友人、知人がバラバラ亡くなっていくのも、年をとるってことなのだろう。

で、生まれて初めて体験したのが安静時採血だ。
安静時採血とは、朝食を摂らずに朝一で病院に行き、まずベッドに横になりいきなり採血用のチューブを挿し、その状態で30分、まったく何もしないでいる。そして、30分まったく安静にした上で、採血をするというものなのだった。

その30分の間はスマホも見てはならない、会話もだめ(どうせ誰もいないし)、寝るのはいいと思うが、周りでは診察をしている声が聞こえるし、緊張もしているので眠くもならない、畢竟、瞑想状態になる。
もしくは、意識清澄のまま、肉体が動かなくなることのシミュレーションだ。
思えば小学校からの友人は筋萎縮性側索硬化症(ALS)で亡くなったが、この状態が生きている間ずっと続くのかと思うと、正気ではいられないぐらい辛いのがよくわかる(よくわかる、というのは僭越、ほんの30分疑似体験できただけだ)。
いずれにしても、現代人が本も読まず、音楽も聴かず、スマホもいじらず、会話もせず意識清澄のままただ30分間、天井を見ている、ということは日常的にはほとんどない、ということに気づかされた。

大変貴重な経験だった。

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