King Crimson@立川ライブレビュー それは「ヴィンテージレプリカ」(バッシング覚悟で)
さほどKing Crimsonの熱心なファンではなく、80年代のエイドリアン・ブリューがいた頃の3部作を特に偏愛する人間のレビューです。先に言っておきます。さらに言えばPink Floyd以外のプログレはわりと「嫌い」ですので、すいません。プログレ好きな方はこれより下は読まずにいただければと。
まず立川という場所にKing Crimsonが来る、ということが、なんというか軽いめまいを起こしそうな気分でした。正直言って面白いと感じた。
とはいえこのホールは音響施設の取材をしたことがあり、音が良いであろうことは分かっていました。また家から電車一本でいけるのもあり、さらには近年のトリプルドラムのKing Crimsonが非常にプロ筋、玄人筋からも評価が高いので言ってみたのでした。
席が悪かったせいか(3階席下手でステージを見下ろす場所、ただし3階席の最前列)、ドラムの音やボーカルはわりとしっかり聞き取れたのですが、最も生音をがっつり聞きたいと思っていたトニー・レビンのベースの音があまり聞き取れなかった。それが最大の残念ポイントでした。
とはいえ、それは彼らのせいではありません。ギターが80年代の曲をやるには若干スキル不足かな、とも感じましたが、エイドリアン・ブリューの不在は致し方ないところ。ビル・ブラッフォードもいないし、今は80年代ではないわけですから。
ここから核心。ベスト・オブ・ベストと言われているセットリストですが、私には非常に良くできた「レプリカ」にしか思えませんでした。最も先進的だったものが、ヴィンテージ化する。これは左翼の老人(おれなのか)にも感じる、昔の革新性をそのまま保守化したもの、というか。ボーカルの妙に上手くて何でもできる感じが、それを助長していました。ただしボーカルの生だと矮小化するつもりはなく、今のバンドコンセプトが「ヴィンテージレプリカ」なのではないかと思えます。
これがまた非常に高齢化している観客と相まって(他人のことは言えない)、昔のやんちゃ時代を愛おしむみたいに見えて、ロック的スピリッツからは唾棄すべきものに見えた、のです。
80年代のクリムゾンは3枚のアルバムを出し、そこからの曲しか基本的にしていなかった。いわゆるプログレだった過去をニューウェーブ的なアプローチと、デジタルドラム、トニーレヴィンのスティック、そして全身ニューウェーブなエイドリアン・ブリューのギターと歌を使うことで自己否定していたように思います。
当時のクリムゾンは「今はまだ人生を語らず」。Slackぐらいまではそう感じていました。今のクリムゾンは「昔の名前で出ています」。かな。もうKing Crimsonをライブでみるのはこれが最後になると思います。
アンコールでやったStarless and Bible blackは非常に良かった。これを生King Crimsonの最後にできたのは良かった。特にトニー・レビンのベースが絶品だった。