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映画「ブルージャイアント」を見た、素晴らしかった。

話題のジャズアニメ、ブルージャイアントを見た。
話題になっていたのは知っていたが、ジャズアニメってのがすごい。よく思いついたな。そしてよく大ヒットにまで持って行ったな、と思う。

マンガだったからある意味音がなくても成立する、というか創造させるイオとができたのだろうが、映画となると、これは逆に「どんな音楽やねん」ということへの回答となる。その高い高いハードルをさらに高く高く、軽々と越えたのが、我らが上原ひろみだった。

ジャズインサイダーとしてはいくつかいいたいことはある。

・ベテランの扱いがこの手のもののステレオタイプで、古くて保守的な感じで描かれているが、日本のジャズのベテランは革新的でむしろすごい人の方が多い

・ジャズだけが特別優れていて「熱い音楽」というラベリングも、わかっているようでわかっていない。

・世界一のジャズマンをめざす主人公で、あまり考えず「熱い」演奏を繰り広げてその圧倒的な存在感でジャズを知らない人まで虜にしていくわけだが、その原型(アーキタイプ)はコルトレーンというのは、ちょっと古いのかも、という気もする。ただしコルトレーンということへの敬意は冒頭のImpressionsで示されているので、その点はすなおでいいと思ったのだった。

とは思った。

良かった点は、ミュージシャンはよくわかっていて、一般の人が分かっていない「上手い」ということへの理解だ。
上手いってことは、音楽の一つの要素ではあるが、上手いだけでは立ちゆかない。上手ければいい音楽家になれるわけではない。それとは別次元のアーティストとしての何かが必要であって、時に上手いことがマイナスになってしまうこともある。ピアニストのように。逆にドラマーは初心者なので、上手いをとりあえず目指せばいい。サックスの主人公だけが、上手いを越えた何かを目指していて、それに成功している。

演奏家によっては「上手いのは当たり前で、その先のことをゲットしないとダメ」という言い方をする人もいるが、上手くても、上手くなくても、アーティスティックななにかをゲットできていればそれでいい。
料理のテクニックがあろうが、なかろうが、旨いラーメンがだせればいいのだ。

僕はバートバカラックの歌うアルフィーを、最良の歌だと高く評価しているが、どう考えても上手くない。だが、心が震えるほど素晴らしい。

とはいえ、かなり正確にジャズシーンの事が分かっているし、ジャズの魅力、日本のジャズシーンの素晴らしい若手ミュージシャンのオールスターみたいな音楽陣の演奏も聴けるので、ぜひこれを機会に多くの人に日本のジャズシーンを知ってもらい、その後はジャズの現場にお客さんとして参加してほしい。特に若い人。


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