「幽霊登場!の本」
暑いので幽霊が登場する小説を読んでみました。
📘『レキシントンの幽霊』 村上春樹
これは作者が体験した怪談。
マサチューセッツ州ケンブリッジに住んでいたときの話。
留守番を頼まれたボストン郊外レキシントンの古い屋敷で起きた一晩の出来事が書かれている。
熱狂的なジャズ・レコード収集家の作者のもとに、古いジャズ・レコードの見事なコレクションを所有しているケイシーからアプローチがあり、月1くらいで彼の自宅を訪れては、ほかではまず聴くことのできない貴重な音楽を聴いていた。
あるとき、ケイシーに留守番を頼まれる。
留守番と言ってもマスチフ犬のマイルズに食事を与えることだった。
(マスチフ犬!大型犬で怖そうな顔をしているけど優しい犬♡)
ちょうど作者が借りていたケンブリッジのアパートは、隣の家が改装工事で毎日うるさくてたまらなかった。
ボストン郊外の高級住宅地のそのまた由緒ある一画に建つケイシーの家は、
とても静かで仕事がしやすいし何より好きなだけレコードが聞ける。
作者は着替えとノートパソコンと数冊の本を持って出かける。
ケイシーが出かけた後、作者は“しばらく前から時計がぴたりと止まってしまっているみたいに見える“音楽室で仕事を始める。
なんの問題もなく夜11時過ぎには2階の寝室で眠りにつく作者。
しんと静まり返った住宅区。
絵葉書にでもなりそうな大きな立派な屋敷と、広い林のような庭の木々のシルエットが黒く浮き上がる。
階段下に眠る犬のマイルズ。
2階の重厚なベットで眠る作者。
しかし、作者は目を覚ます。
“海岸の波の音のようなざわめき“を感じて。
ベットの中で耳をそばだて、暗闇を凝視する作者。
何か聞こえる。
なんだろう?
音は、誰もいないはずの屋敷の階下から聞こえてくる。
“古い楽しげな音楽“
“話し声“
“品の良い、軽やかな笑い声“
“グラスがふれ合う、かろやかな音“
“革靴が床を移動するリズミカルなきしみ“
「僕が眠っているあいだに、この家の中でいったい何が持ち上がったのだろう」
(ドクンドクン)
パジャマから服に着替えて階下に降りていく作者。
(ドアを細く開けて覗く感じで本のぺージを細く開いて読む私。何故に?)
(ドクンドクン)
作者特有の淡々とした文章がドキドキを増幅させ、
本から冷気が出ているのではないかと思うほど、腕がひんやり。
作者は階下に降りていく。
開け放してあった扉はしっかりと閉じられ、犬のマイルズの寝床は空で居間からはにぎやかな音楽や話し声、笑い声が聞こえてくる。
作者は考える。どうしたものか?
パーティーだったら招待されてないのに入るわけにもいかない。
ポケットのコインをいじりながら考える。
そして唐突に静かに広がる思考。
こんな夜中にパーティーが開かれるわけがない。
足音や話し声からして結構な人数なのに、
彼らが訪れた気配を一切感じなかったのはおかしい。
腕がザワっとした作者は“幽霊“にたどり着く。
そっと2階の寝室に戻り服のままベッドに潜り込む。
そして翌朝目覚めた作者はパジャマ姿のまま階下に降りていく。
(いつ着替えたん?)
犬のマイルズは階段したの寝床で熟睡していて、
開け放されていた扉はそのままの状態になっている。
何も変わったことがない居間。
その後ケイシーが帰るまでの何日間は何も起こらず静かに過ぎていく。
あれはなんだったのか?
ケイシーの帰宅後すぐにレキシントンの屋敷を去り、長編小説の追い込みに没頭していた作者がケイシーとばったり会ったのは、半年以上経った散歩中のこと。
ケイシーは、驚くほど老け込んでいる。
彼は、同居していたピアノの調律師のジェレミーが母親の死後、ウェスト・ヴァージニアに行ったきり帰って来ていない。なんだか人が変わってしまったみたいだと話す。
そして、若くして亡くなった母のことを、
妻を失ったときの父のことを、
父を失ったときの自分のことを、
話し始める。
「母が亡くなったときに父が感じていたはずのことを、僕はそこで(父が亡くなったときに)ようやく理解することができたというわけさ。つまりある種のものごとは、別なかたちををとるんだ。それは別なかたちをとらずにはいられないんだ」
悲しみの現れ方は様々だ。
ぞくりとしながらも愛を感じる話だった。
「ときどきレキシントンの幽霊を思い出す。ケイシーの古い屋敷の居間で、真夜中ににぎやかなパーティーを開いていた得体の知れない数多くの幽霊たちのことを」
この本は他に6編の奇妙な話が掲載されている。
あゝ面白かった!
作者の膨大な語彙から選ばれた言葉たちに触れるたび、私の世界の色が増えていく。
さて、次は何を読もうかな。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
have nice day
See you 🌱
キジ
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