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NPBファームリーグ拡大に関する野球協約上の諸課題①:野球協約の建付けのお話

NPBはファームの球団数を拡張することを正式に表明し、2024年または2025年からの参入を希望する事業者の募集を開始した。現在ウエスタンは5球団・イースタンは7球団と、いずれも奇数となっている状況を是正し偶数にすることを目指すという。

この動きに対し、本稿執筆段階において、BCリーグ所属のアルビレックス新潟、九州アジアリーグ所属の火の国サラマンダーズ、東京の投資会社・ハヤテインベストメント社が参入に名乗りを上げている。

NPBの組織としての運営ルールを定めた、「プロフェッショナル野球協約」(以下、野球協約)上において、今回のファーム球団拡張がどのように取り扱われるのであろうか。
数回に分けて野球協約上の課題を検討してみたい。

なお、以下論考において「ファーム球団」はファームのみのチームで参入するチームを指すものとする。

野球協約はファームをどう規定しているか?

下記に示した野球協約の第1条は、NPBを構成する団体としてセ・パいずれかに所属する球団しか想定しておらず、ファーム球団はこの協約の埒外である。

第1条 (組織及び協約の当事者)
1 セントラル野球連盟及びその構成球団とパシフィック野球連盟及びその構成球団(以下、それぞれの運盟及び球団を、「連盟」及び「球団」という。)は、以下に記す協約(以下「この協約」という。)を締結し、かつ一般社団法人日本野球機構(以下「機構」という。)の内部組織として日本プロフェッショナル野球組織(以下「この組織」という。英文では、Nippon Profesaional Baseballと表示する。)を構成する。
2 セントラル野球連盟は、株式会社読売巨人軍、株式会社ヤクルト球団、株式会社横浜 DeNAベイスターズ、株式会社中日ドラゴンズ、株式会社阪神タイガース及び株式会社広島東洋カープの各球団を、パシフィック野球連盟は、株式会社北海道日本ハムファイターズ、株式会社楽天野球団、株式会社西武ライオンズ、株式会社千葉ロッテマリーンズ、オリックス野球クラブ株式会社及び福岡ソフトバンクホークス株式会社の各球団をもって構成する。

日本プロフェッショナル野球協約2022

野球協約はファーム球団は想定していないものの、170条において「ジュニアペナントレース」と称して、ファームリーグについて規定している。

第170条 (ジュニアペナントレース)
1 年度連選手権試合中、球団は、試合に出場していない支配下選手及びコーチによってジュニア・チームを編成し、数個の球団と協定して、選手権試合を行うことができる。
2 この場合、前項の協定に参加する球団は、その選手権試合の管理統制の任にあたる個人又は団体を決定し、試合に関する協定事項とともに、コミンショナーに届け出て承認を受けなければならない。

日本プロフェッショナル野球協約2022

170条のいう「球団」は第1条に定めるとおり、セ・リーグもしくはパ・リーグに所属する球団である。従って、ここでもファーム球団は考慮されておらず、現行の野球協約においてはファーム球団はそもそも埒外である。

日本プロフェッショナル野球組織ファーム規約

ところで野球協約170条2項で規定された「試合に関する協定事項」として、「日本プロフェッショナル野球組織ファーム規約」が規定されている。

第1条(ファームの定義)
野球協約170条(ジュニア・ペナント・レース)にもとづき構成されたジュニア・チームが複数で参加し、試合に関する協定を結んで選手権試合を行う団体を日本プロフェッショナル野球組織ファーム(以後ファームと称する)という。

第4条(協約優先)
本規約に特に規定しない事項に関することは日本プロフェッショナル野球協約によるものとし、本規約と同野球協約とが競合する事項については同野球協約を優先する。

第5条(所属)
イ・リーグおよびウ・リーグは、日本プロフェッショナル野球組織に所属し、同野球協約第170条(ジュニア・ペナント・レース)と本規約により、年度選手権試合を含む運営を行う。

日本プロフェッショナル野球組織ファーム規約

第5条で示されるように、イースタン・ウエスタン各リーグはNPBに所属することになっている。前段で見たようにプロフェッショナル野球組織は、1軍を有する12球団のみを対象としている。従ってファーム球団はファーム規約においてもやはり埒外である。

また第4条はファーム規約で規定されない内容は、野球協約によるものとしている。ファーム規定の構成は下記のとおりであり、ここに記された内容以外はファームの運営は野球協約に依拠することになる。

第1条 ファームの定義
第2条 構成球団
第3条 ファームの目的
第4条 協約優先
第5条 所属
第6条 事務局所在地
第7条 欠番
第8条 運営委員会
第9条 幹事会
第10~12条 欠番
第13条 審判員経費
第14条 欠番
第15条 加盟
第16条 脱退
第17条 除名
第18条 運営上の変更
第19条 改廃
第20条 発効

日本プロフェッショナル野球組織ファーム規約

選手の最低年俸について、12球団と同等の条件を科すのはファーム球団にとっては酷であろう。またファーム球団が選手を採用する場合には、12球団同様のドラフトに参加しなければならないとなると、様々な弊害が想定される。現行のファーム規約の規定だけでは、ファーム球団の参入には不十分であると言える。

まとめ:現行野球協約・ファーム規約は大幅改定が必要

このように現行の野球協約・ファーム規約は、ファーム球団の参入を全く想定していない建付けとなっている。ファーム球団に野球協約の条件で活動させることは酷であり、かつ様々な問題を呼び起こすこととなるため、いずれの規定も大幅な改定が必要となろう。
次回以降、具体的にどのような問題が発生するかを見ていきたい。

出典

井原淳事務局長は3日に「イースタンとウエスタンの奇数を偶数にしたいというのが出発点。固定の数はない」

NPB ファームリーグ拡大へ新球団を公募 今月17日、来月22日に説明会実施へ/野球/デイリースポーツ online (daily.co.jp)

「NPBファーム・リーグ拡大」について | NPB.jp 日本野球機構

「球団創設以来の長年の夢」新潟アルビレックスBC NPBへの『2軍』参加応募へ | BSN NEWS|BSN新潟放送 (1ページ) (tbs.co.jp)

熊本・火の国サラマンダーズ、NPBファーム新規公募へ名乗り。神田代表が「4・17説明会」参加を表明(田尻耕太郎) - 個人 - Yahoo!ニュース

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