レイ・ハラカミ
DTMマガジン様の「ヘッドホンを一流スタジオの音に変えるプラグイン」の記事の中で久しぶりにbedroom musicianという言葉を目にしました。個人的に最近ではDTMに統合されたかのように忘れていた言葉です。1990年代前期にリットーミュージック刊「GROOVE」誌で初めて知った呼び方でした。https://rittor-music.jp/groove/
その「GROOVE」誌の付録CDの音源とまだ有名でなかった頃の彼の紹介記事でレイ・ハラカミ(1970 - 2011)の存在を知りました。流行の情報に疎い私が「この人はすごい!きっと大ブレイクするに違いない」と珍しく周囲にふれて回ったのを覚えています。実際にそうなりました。「YMOとThe Policeが好き」と書いてあり親近感も抱きました。実際にクラブイベントで何回かお会いしたこともあります。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%A9%E3%82%AB%E3%83%9F
当時はテクノに限らず音楽には様々な機材が必要である、とそう決まっていました。テクノならば尚更のことです。ロックバンドに生ピアノ1発やオルガン1台、こういうStyleにも勿論その歴史がありますが、ここで言うバンドの全員分の役割を賄うテクノには相当の種類の機材を必要とするのが常識だったのです。
当時、既にSC-88(いわゆるGM音源)という安価でそれなりの音が出るモジュールは存在していました。しかしそれは本格的なものではなくあくまでも何かの代用品のように考えられていた時代にほぼその機材ひとつだけでテクノの神憑りとも言える珠玉の名盤を作ってしまったのがレイ・ハラカミです。
早くに大きなことを成した為なのか。彼は非常に若くして天に召されてしまいました。残念です。しかし必ずしもバンドじゃなきゃならない、その気になればひとりでだって作れる。bedroom musicianという言葉こそ忘れていましたが、新しい様式やそこへ飛び込む勇気。それを教えてくれたレイ・ハラカミのことはきっと一生忘れないでしょう。