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夕暮れ

 今日も一日が終わろうとしている。  

 窓の外では、いつもの町並みが夕焼けに染まっていた。デスクの上のパソコン画面に、完成した原稿が映っている。  

 一発で著者のOKが出た原稿だ。喜ぶべきことなのだろうけれど、どこか静かな疲れが身体の端々まで染み込んでいた。

 パソコンの文字が、少しぼやけて見えた。デスクの上に広げた数冊のノートには、これからの締め切りや予定が所狭しと並んでいる。

 さて、今日は早めに休もうか。
 そうして椅子から立ち上がり、ふとカレンダーに目をやると「コミュニティのシェア会」と書いてあることに気づいた。

 ああ、そうか。新しく入ったコミュニティの集まりがあるのか。参加せねばならない。

 そう思い、ふうと短いため息をついて窓の外を見つめた。 最近は毎晩、夕暮れを眺めることが日課になってる。

 そう、そう。話は飛ぶのだけれど。

 時々、同じ夢を見る。物語の登場人物たちが、「早く私たちの物語を書き終えて」と告げる夢だ。  

 現実の波に揉まれているうちに、自分の作品を書くという、大切なものが少しずつ遠のいていた。それを取り戻すには、もう少し現実の軌道修正が必要かもしれない。  

 明日は新月だ。 何かが始まる予感がする。  
 たぶん、だけど。

 この疲れた心と体を少し休ませて、また明日から、物語の続きを書いていこうか。

 これらはすべて、誰に聞かせるでもない独り言。
 そして、秋の夜長を感じさせる空を仰いだ。

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けーすけ
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