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自分へ宛てた12枚の手紙 #第一回お肉仮面文芸祭


【手紙1】
 ぼくは おとなになったら ひぃろぉに なりたいです。りゆうは かっこいいからです。わるいやつとか ずるいやつとか やっつけて やさしいひとたちを まもる。ひぃろぉは かっこいいです。ぼくは ひぃろぉからもらった おまもりを もっています。だから おとなのぼくは ひぃろぉだとおもいます。

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【手紙2】
 はたちになった自分へ。ぼくのゆめは、科学者になることです。はたちのぼくはちゃんと科学者になれていますか? 地球おんだん化をとめる薬を開発して、困っている世界中の人たちを助けたいです。それから月に基地を作ります。その基地からレアメタルをさいくつして、地球のエネルギー問題を解決したいです。小さいころからもっているお守りがあるので、ぼくのゆめはかなうと思います。

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【手紙3】
 将来の自分へ。春から東京の大学へ通います。第一志望ではなかったけれど、両親や先生や友人が喜んでくれたのはとても嬉しかったです。これからたくさんの出会いがあると思います。そこで出会った人たちと、将来もずっと仲間でいられたら最高です。自分は御守りを持っています。でもこの箱を開けるようなことはないと思います。

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【手紙4】
 未来の自分へ。希望は持っていますか。自分自身だから全てわかっていると思いますが、正直なところ、楽しくありません。もし、未来の自分が少しでも理想の生活に近づいているなら、今の苦労も報われると思います。今の会社で働き続けることが正解なのかどうか、自分には分かりません。アドバイスをください。御守りの桐箱は、まだ開けるには早い気がしています。自分自身が究極のピンチに陥ったときに、はじめて開けるかもしれません。

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【手紙5】
 40代の自分へ。5年前に転職したことは間違っていなかったと思います。私が勤めていたのはいわゆる斜陽産業でした。まだしがみ付いている同期はいますが、みっともないとは思いません。それもひとつの生き方です。新しい環境に馴染むにはまだ少し時間がかかりそうですが、時間をかける必要があるなら、そうしようと思います。同期のほうが正しい判断をしたんじゃないかと不安になることがあります。しかし、自分を信じます。私にはあの御守りがあるのですから。

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【手紙6】
 とても素敵な人と出会った。同じ空を見上げていると思うと、眩しすぎて目を開けていられない。

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【手紙7】
 人生は紆余曲折だと本当にそう思う。平穏な人生を歩む人だっているだろうに。単に隣の芝は青いだけなのか。昨晩、なんとなくクローゼットの奥から御守りの桐箱を取り出した。まだ開けてはいないが、桐箱が視界に入るだけで心が安らぐのを感じている。

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【手紙8】
 いつも正しいことばかりできるわけじゃない。必要なときに必要なものがないことがある。そんなときに、持っている人から借りるのは仕方がない。いずれ返すのだから気づかずにいてほしい。昨晩から桐箱を抱えて眠っている。

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【手紙9】
 俺が悪いわけじゃない。仕方なかったんだ。それ以外にどんな選択肢があったというのか。一瞬でも眠りに落ちれば夢に出てくる。夢のなかの俺は謝っている。絶叫して。もう返せるわけない。個人でなんとかなる額じゃないんだ。

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【手紙10】
 もう駄目だ。このようになったことを許してほしい。
 たとえ誰がこの事態に直面しようとも、同じことをしたはずだ。
 使った分をFX投資で取り戻そうとしただけなのに。
 動機は前向きなのだから、どうかわかってもらいたい。

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【手紙11】
 もう無理だ。
 警察が動き出した。
 今夜、あの桐箱を開ける。

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【手紙12】
 ワタクシハ タビニ デル コトニ シマシタ

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城戸 圭一郎
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