日々の断片5: 昼でも怖い絵
高校卒業して住んだ所。そこは東京かと思ったら埼玉の西川口だった。
群馬の片田舎から出てきてびっくりしたのは夜が明るいと言う事。
埼玉も群馬も変わらないと思っていたけれど、こと西川口はとっても都会で、街灯が多いし、お店も多いし、マンションも多いし、信号も多いし、人も多いし。なんだかとても街がキラキラしていた。なぜだかディズニーランドに住んだらこういう気持ちになるのかな。なんて思ったりした。夜が明るいだけで高校卒業したての自分はとてもワクワクしたのを覚えている。「埼玉でこれであるからして、東京に住んだらとんでもないことになるであろうな。」と、自分の心の中のガクシャ(ガンバの冒険)が語りかける。後に高円寺阿佐ヶ谷に10年住むことになりそれを体感するのであった。が、それはまた別の話。
そして群馬。
群馬の夜は暗い。本当に暗い。こと自分の実家あたりは漆黒と言っていい。四方に囲まれた山々や、木々や墓場や田や森が完全な墨ベタの黒になり、それが辺りを覆い尽くす。
春夏は暗闇で自転車を走らせているとかなりの確率で顔面にコウモリが突撃してくる。
秋冬は赤城山からの風。吹きお下ろしがヒドく、ゴーと言う音と共に風が漆黒を走る。
夕方に再放送をやる「妖怪人間ベム」。
ゴールデンタイムにやる「ufo特番」。
蔓延する「ノストラダムスの予言」。
多発する「自動車自転車盗難」。
小学校の図書館でうっかり読んでしまった「はだしのゲン」。
チュンソフトが満を辞して世に送り出した「弟切草」。
父の書斎に並ぶ「松本清張」
自分の周りは恐怖が多かった。
小中学生時代は、よくファルコンの家に遊びに行っていた。
ファルコンはファミコンのソフトを沢山持っていた。それを眺めに行くだけでも楽しかった。本棚には横山光輝三国志やファミ通のバックナンバーがずらりと揃っていてちょいちょい読んでいた。横山光輝三国志は全部顔が一緒に見えるし名前も覚えにくいしで早々に挫折した覚えがある。
ファルコンの家で一緒にやったゲームで思い出深いのは「爆笑!!人生劇場」という双六ゲーム。スタートは小学生、最後老人になるまでの人生を双六で遊べるというゲームなのだが、たっぷり時間も使えて楽しかった記憶がある。「ダブルドラゴン」「魂斗羅」くにおくんシリーズの「ドッヂボール」や「ダウンタン熱血物語」など協力プレイなゲームも楽しかった。だがある日ディスクシステムがファルコンの家に来てから歯車が徐々に狂い始めた。
ある日いつものように学校が終わって遊びに行く。そこでファルコンがやっていたゲームが「ファミコン探偵倶楽部」だった。画面内では人がどんどん殺されるし、流れてくる音がとても怖かった。ファルコンの家の裏が墓場だったこともあり怖さに拍車をかけた。もちろん一人用ゲームなので後ろで眺めている。段々と外は夕暮れになり、群馬特有の黒が支配する時間が迫る。結局その日はそのまま帰ることになった。自転車で帰る暗闇の中、「ファミコン探偵倶楽部」の殺人事件と現実が混じり合う。不安と闇がイコールとなり心を支配していったのだった。
「ファミコン探偵倶楽部」の時期はしらばく続いた。そして次にやってきたのが「悪魔城ドラキュラ」であった。これは自分とファルコン、死んだら交代で一緒にプレイしながらやらせてもらったのだが、ガイコツ出るし曲も怖いし、大体にして「悪魔城」って!と思いながらプレイしていた。自転車で帰る暗闇の中、「悪魔城」って、マリオのクッパの城もそうじゃん!と悪魔城とクッパの城がイコールとなり心を支配していった。
そんな中、とてつもない安らぎを与えてくれたソフトが一本あった。それが「バイオミラクルぼくってウパ」である。恐怖なソフト一辺倒だった時期が嘘みたいに、主人公のあかちゃんがガラガラを武器にスウィーツの上で可愛い敵と戦いあうゲームだ。今までの恐怖体験を浄化してくれるキャッチーなbgm。とにかく最高であった。
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