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「JAMPの視線」No.263(2025年1月12日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②JAMPメンバーの採用情報
③NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
④お知らせ・ニュースリリース
⑤メディア掲載情報
⑥インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2025年1月12日

 妻が使っている家族カードが不正利用の被害に遭い、年初早々にカード利用停止や不正利用分の支払い請求のキャンセルの手続き等に大忙しでした。覚えのない動画サブスクサービスの年額利用請求が何件かあり、「あれ、視聴し始めたのかな?」と疑問に感じていたのですが、実際には不正利用でした。念のために確認しなければ危ないところでした。カード会社の方によると、最近の不正利用はオンラインで行われることが多いとのことなので、知らないうちにAmazonや楽天等で購入利用されていると気づくのが困難ですね。皆さんもご注意ください。

 さて、先週の日経新聞の「真相深層」コーナーでPayPayアセットの自主廃業に関するまとめ記事が掲載されたことを受け、本事案に対する業界関係者の議論が改めて活発になっているように感じます。本件については、NewsPicksコメントを含む各所でお話させて頂いている通り、資産運用業界で進む過度な手数料引き下げ競争の弊害が顕在化しつつあるという切り口での問題意識もありますが、私は、それとは別に日本の資産運用業界における事業効率化・高度化のためのインフラがまだ十分ではないという視点でも問題意識を持っています。

 「周囲巻き込み型の緩慢な自殺行為」以外の何ものでもない過度な手数料引き下げ競争は是正されなければなりませんが、ポートフォリオ付加価値のコモディティ化を受けた投資信託等の従来型投資・資産運用商品の手数料低下の流れは日本のみならずグローバルでも不可避なものであり、そのような環境のなかで資産運用会社をはじめとする金融機関は「顧客本位の業務運営」と自らの収益性の確保の両立という難易度の高い経営課題から逃れることはできません。

 一方、政府が主導する「資産運用立国」構想においては、新興や海外の資産運用会社の新たな参入を後押しするような施策が色々と講じられていますが、その意図するところは、既存の資産運用会社や投信商品等との競争を通じた新陳代謝の活性化であり、お客様に支持されない資産運用会社や、支持されたとしても自らの事業運営を継続するに足る収益性を確保できないような資産運用会社は、退場を余儀なくされるという状況が望ましく、結果的に業界全体の効率化と高度化が実現されるというものであると私は解釈しています。

 従って、今回のPayPayアセットの事案については、事業継続の最終判断を担う親会社が資産運用業を営む責任の重みを理解していないという残念な特殊事情はあるにせよ、上述のような環境変化が背景にあるなか、発生すること自体はそこまで予想外とは言い切れず、逆にこれからも同様の事案が散発する可能性は十分にあると個人的には考えています。現に、資産運用残高が大きくない中堅規模の投信委託会社のなかには、今後の選択肢のひとつとして事業撤退と廃業を具体的に検討し始めているところもあると耳にします。

 ここで私が感じるのは、自らの収益性の確保が困難になった資産運用会社が取り得る選択肢が限られており、既存の公募・私募投信の繰り上げ償還を伴なう事業撤退というハードランディングに一気に向かってしまわざるを得ないというというところに、日本の資産運用業界のインフラの脆弱性が表れているのではないかという問題意識です。

 弊社が手掛けているような日本版ファンドマネジメントカンパニーのような存在が日本でも一般的なものであれば、そもそも手数料が低下傾向にあるなかでも投信ビジネスを効率的に営むような事業モデルの設計は可能となりますし、ファンドマネジメントとアセットマネジメントの両方を一社で担う既存の投信委託会社が収益性の確保の困難に直面した場合でも、一気にハードランディングの選択肢に突き進むのではなく、ファンドマネジメント部分を切り出し、自らはアセットマネジメント部分に集中するように事業モデル転換を行うようなソフトランディングの選択肢も検討することが可能となります。

 運用手数料の低下や競争の激化等、資産運用会社を取り巻く環境は厳しさを増しつつありますが、お客様にとってより良いサービスを提供しつつ、同時に安心してご利用頂けるような環境を確保するために、そうした事業効率化・高度化のためのインフラがこれから更に充実していくことが必要だと改めて感じます。弊社・日本資産運用基盤グループが手掛ける日本版ファンドマネジメントカンパニーソリューションだけで十分だとは思いませんが、私たちなりにこのようなインフラの構築・運営に貢献できるよう、今後も微力を尽くしたいと思います。

JAMPメンバーの採用情報

■日本資産運用基盤グループでは、事業拡大に伴い一緒に働くメンバーを募集しています。
弊社にご興味のある方、ぜひ働きたいという方はこちらからお申し込みください。
まずはお話だけでも、という方も大歓迎です!

代表の大原とのカジュアル面談でもいいかな、という方ももっとウェルカムです!!

keiichi.ohara@jamplatform.com

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

【【預金獲得新時代】(上)量と粘着性 両にらみ 顧客の行動分析に難しさ】
大原のコメント→
 日銀の金融政策方針変更による「金利のある世界」の再来を受け、地域銀行にとって今年の最大のテーマは預金獲得競争であることは間違いありません。
 ただ、各所で主張させて頂いていますが、金利ビジネスが復権したからといって、地域銀行が預かり資産ビジネスを始めとする手数料ビジネスの優先度や位置づけを低くすることはあってはならないと考えています。
 金利というのは金融サービスのなかでもコモディティ化が最も進んだ商品のひとつであり、地域銀行が今後の生き残りをそこに見出すというのは、地域における存在意義(パーパス)の観点のみならず、収益性・戦略性の観点からも悪手でしかありません。
 高金利や利便性で個人の預金資金を集めにかかっているオンライン金融機関や地域をまたがった相続資金の取り込みを強みとする大手金融機関に立ち向かうためには、地域銀行ならではのお客様との関係性を主軸に事業モデルを組み立てなければ、銀行の金利ビジネスの原材料である預金量の維持すらままなりません。
 金利が復活した今だからこそ、金利ビジネスに依存しない新たな事業モデルの構築が急務であると考えます。

【PayPayアセット、唐突な廃業 問われる受託者責任】
大原のコメント→
 これまでも繰り返し問題意識を表明させて頂いておりましたが、過度な手数料引き下げ競争の弊害が少しずつ顕在化しつつあるということだと思います。
 投資信託等の金融商品の手数料引き下げは個人のお客様にとって短期的にはメリットがあることは否定しませんが、長期的な資産形成・運用ということを考えると、個人のお客様と資産運用会社をはじめとする金融機関の双方が利益を享受し、ともに豊かになるということが大前提だと考えています。
 手数料引き下げ競争に興じる資産運用会社はそれぞれの考えがあってのことかもしれませんが、長期的な視野に立ってみるとその行動は「周囲巻き込み型の緩慢な自殺行為」以外の何物でもなく、そうしだ行動を無思考に礼賛する風潮を見直さなければ、結果的に長期の資産形成・運用を安心して任せるための基礎を損なうことになってしまうことを懸念しています。
 また、今回のPayPayアセットのような状況に置かれた資産運用会社にとって、廃業以外に選択肢がないということは、資産運用業界の新陳代謝がハードランディングでしか行われないということを意味していることについても、強い問題意識を持っています。
 弊社・日本資産運用基盤グループは、中堅投信委託会社が投資運用事業に集中し、事業効率化・高度化を実現できるよう、日本版ファンドマネジメントカンパニーソリューションを用いた業態転換の仕組みを提供していますが、このようなインフラが日本でも今後より広がっていくことが期待されます。
 (注)ちなみに今回のPayPayアセットの事案については、そもそも個人のお客様の長期的な資産形成・運用のサポートを担う事業であるにも関わらず、その重要性を無視するかのような判断を下した親会社(Zフィナンシャル(LINEヤフー))の受託者責任に対する意識が疑われるものであり、同様の無責任な事例が連続するようなことは無いとも信じたいですが。

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

【三菱UFJ信託銀、新興向け出資 続々商品化 地銀との連携拡大視野】
長澤のコメント→
 記事で紹介されている金融サービスに限らず、大手の銀行・証券会社等にとって、地域金融機関との連携は2025年のキーワードの一つとなるのではないかと思っています。
 一方、金融庁が地域銀行の持続可能性の検証を始めたとの記事もありましたが、地域金融機関にとっても、人口減少や都市部への流出による預金減少を始めとしたダウンサイドリスクへの対応は喫緊の課題であり、自前主義に拘らなければ負担も軽く新たなサービスの導入を図ることができるこうした提携の動きは今後増々加速するのではないかと思われます。

お知らせ・ニュースリリース

■あおぞら企業投資等を対象とする第三者割当増資を実施しました

メディア掲載情報

■メディア寄稿:ニッキンOnline
 先週から3週にわたって弊社・日本資産運用基盤がニッキンOnlineに「資産運用立国2年目の論点」と題する短期連載コラムを寄稿させて頂きます。
 第1回は、弊社主任研究員の長澤が昨年から具体的に動き出した「資産運用立国実現プラン」を概観させて頂いています。 

「資産運用立国2年目の論点 第1回 実行段階に移った『実現プラン』」

■コラム公開:コンプライアンスチームの連載noteの公開
 新興・海外資産運用会社の立上げ等の支援を提供している弊社コンプライアンスチームがnoteに第51回目の記事を公開しました。

「『コンプライアンス業務の外部委託』について」

インフォメーション

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