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「JAMPの視線」No.251(2024年10月20日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2024年10月20日

 今週末、私が住んでいる板橋区で区民まつりが開催され、2日間連続で家族と一緒に楽しんできました。コロナ禍の自粛が終わったことや、子供たちを通じて地元とのつながりが深まったこともあり、最近は毎週のように地元のイベントが開かれているなあと感じます。お祭りだと昼間からお酒を飲んでも咎められないのが嬉しいところです。今週末は仕事も少なかったため、つい飲み過ぎてしまいました。こんなのも嬉しいですね。

 さて、先週のメルマガでも触れましたが、PayPayアセットの投信ビジネスからの撤退について、証券・資産運用業界に限らず一般の経済メディアでも取り上げられ、問題意識が広がりつつあります。業界全体で公募投信の数が飽和し、不芳投信の償還や合併による適正化が必要だとは言われています。しかし、資産運用会社が収益性の悪化を理由に、多くの投信を償還するという流れは、顧客本位の観点から問題があるという見方も根強く感じます。新NISAへの移行や、資産運用立国を目指す国のプランに伴い、一般の人々の資産形成に対する意識が高まっている中で、この盛り上がりにブレーキをかけないことを願っています。

 今回の件については、個人のお客様の大事な生活資金をお預かりしている資産運用会社が自らの収益性を理由に事業撤退を決断することの是非という切り口の議論もありますが、それとは別にPayPayという圧倒的な決済サービスを同じグループ内に持ち、個人のお客様には圧倒的なリーチを持つはずの資産運用会社が思うように投信ビジネスを成長させられなかったのは何故なのかという議論もあるように思います。確かに、個人向け金融サービスの事業においては、ユーザーである個人のお客様候補にいかにリーチできるか、スマートフォン起点のサービスであればいかに日常的に使われるアプリの中に当該金融サービスを組み込めるかというのが事業成長のカギのひとつであり、その意味でPayPayアセットは他社に比べて優位な立ち位置にあったように思われるところ、当然の疑問であるように感じます。

  私が以前から述べているように、スマートフォンを基点とした金融サービスにおいては、資金移転(決済・送金)や資金供与(融資)といった、利用タイミングが近いサービスは親和性が高い一方で、リスク移転(保険)や資産運用のように遠い将来のニーズに対応するサービスは親和性が低い傾向があります。たとえPayPayが決済サービスで圧倒的な存在感を持っていても、その先の金融サービスへ広げるのは難しいと言えます。

 (ご参考)少し古い拙稿コラムですが、ご笑覧下さい
ダイヤモンドオンラインへの過去の寄稿コラム「携帯キャリアの金融ビジネス参入!勝つのは「ドコモ」型か、「KDDI・ソフトバンク」型か?」

 具体的には、コンビニでの支払いをスマートフォンで済ませるのは便利ですし、資金残高が不足している場合にアプリ内で融資を受けるのは自然な流れです。一方で、保険や資産運用は目の前の支払いニーズとは異なり、将来のニーズに対応するものですから、決済サービスの世界観とスムーズに連結させるのは容易ではありません。また、将来のニーズに対応する保険や資産運用においては、専門家のサポートが重要であり、単なるアプリ内ではそのサポートを得ることが難しいのも大きな課題です。

 決済サービスアプリが提供できるのは、資産運用というよりも投資に近いものであり、その結果、ポイント運用などの簡易的なサービスに留まる傾向があります。もちろん、オンライン証券を通じて提供される投資信託が大きな資金を集めている事実もありますが、個人顧客への広いリーチがあるからといって、資産運用事業が必ずしも成功するわけではないのです。

 今回のPayPayアセットの投信ビジネスからの撤退は、資産運用業界に多くの示唆を与える出来事です。私たちもこの事例から学び、より良い資産運用事業支援サービスの提供に活かしていきたいと考えます。我が国の資産運用立国実現に向けて、さらに考察を深めてまいります。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

【東大生の「コンサル志向」なぜ? 目指すのは大企業よりもジョブ型雇用で「新たな安定」】
大原のコメント→
 私が学部卒予定として就職活動をしていた2002年頃もコンサルティング企業の入社試験を受ける人は少なからずいましたが、やはり官僚や銀行、商社等の志望者が多かったように記憶しています。
 資産運用業界でキャリアを積んできた人間としては、このランキングに資産運用会社の名前がまだ出てきていないのは残念に感じます。知名度がそこまで高くないという意味でも、新卒生を多く受け入れる十分な土壌が無いという意味でも。
 資産運用立国を実現するのであれば、社会的意義も大きく、経済的ベネフィットも大きい等として、資産運用業界が大学生の憧れの業界になるようにするということも目指したいなと感じます。

【金融庁に出向直後から不正取引か インサイダー疑いの裁判官】
大原のコメント→
 「資産運用立国」の実現を掲げ、官民が連携してより良い金融・資産運用業界の発展に取り組んでいる中で、今回の事態は非常に残念に思います。
 もちろん、投資運用技術や業界の高度化は重要な要素ですが、それ以上に、自分たちが業界をけん引しているという高い倫理観と責任感が根幹であるべきだと強く感じています。この高い視座に立つ倫理観こそが、業界の信頼を支える基盤であることは言うまでもありません。
 私自身も民間の一員として、この自負を持って業界の発展に貢献しているつもりです。それだけに、今回の件(事実であれば)は非常に残念であり、失望を隠せません。

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

【百五銀、店舗評価「要件」を非公開 営業プロセスで加点】
長澤のコメント→
 過去、支店の目標を自主的に設定するといったボトムアップ的な業績評価方法はありましたが、業績評価の要件を公開しないで支店を評価するというのは初めて聞きました。預り資産営業のプロセスを評価して加点するということですが、「顧客の最善の利益」が義務化された今、自らの顧客層の属性などを踏まえ、真の顧客ニーズがどこにあり、どのようなアドバイスを顧客が求めているのか、といったことを各支店で考えて欲しいというメッセージかと思います。こうした取組みにおいては、本部においても、現場の意見を取り入れた商品・サービスを揃えるなどの対応を併せて行うことで、顧客本位とビジネスの持続性を両立させることができるのではないかと思われます。

【毎月分配型投資信託に4600億円流入超 4〜9月、退職世代に需要】
長澤のコメント→
 以前も書きましたが、十年ほど前に毎月分配型投資信託が問題視されたのは、1万口当たり200円とか250円とかいった分配金競争が行われ、分配金を捻出するためにオプションを組み込み仕組みが複雑で理解し難くなったものを、高齢者を含む一般投資家に販売するなど、どんどんエスカレートしていったことにあると思います。当初は年金の補完として分配頻度の選択肢の一つとしての毎月分配型だったものがどんどんエスカレートしてしまうといった問題は、一昨年問題となった仕組み債や足元金融庁が注視している外貨建て保険にも共通していると思われます。
 家電であればいろいろな機能を盛り込んだハイエンドな商品は、価格は高いけれど使ってみると便利だったりしますが、金融商品の場合は、色々仕組みが入っていても、リスクとコストが高くなるだけのことが多く、シンプルで何に対価を払っているかわかり易い商品・サービスが一番だと思います。

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