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「JAMPの視線」No.85(2021年8月15日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③メディア掲載情報
④インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2021年8月15日

少し前になりますが、今月8月3日にフリマアプリのメルカリが少額融資サービス「メルペイスマートマネー」の提供を開始したというニュースが報じられました。メルカリは二次流通市場を主要マーケットとするEC事業を運営する非金融事業者ですが、創業当初から金融サービスの提供に積極的であり、その展開や世界観構築については、金融事業に参入しようとする非金融事業者が参考にできるところが多々あるように感じます。
私が以前から申し上げている通り、一言で金融サービスといっても、金融機能の種類毎に特徴が分かれており、非金融サービスとの組み合わせの親和性の有無も変わってきます。例えば、生活者の購買行動に親和性があるのは、現在もしくは近未来の資金需要に対応する「資金移転(決済・送金)」と「資金供与(融資)」であり、遠い未来の資金需要に対応する「資産運用」と「リスク移転(保険)」はなかなか組み合わせが難しいと考えています。
例えば、これまでも百貨店の丸井グループが提供し、成功してきた金融サービスは「エポスカード」による資金移転及び資金供与機能であり、国内大手EC事業者である楽天グループが主力とする金融サービスも「楽天カード」や「楽天銀行」であること、また、その楽天グループの金融事業は楽天カードが持ち株会社の役割を担っているという構造等からも、その親和性についてはイメージ頂けるかと思います。
一方、非金融事業者がその提供サービスに「資産運用」や「リスク移転(保険)」機能を組み込むことは、親和性、ひいては顧客体験という点でなかなか難しいところがあるように思います。もちろん、購入物品の故障・盗難等に対応する損害保険サービス等、金融サービス種類によっては一概に親和性がないとは限りませんし、資産運用でも金利が預貯金よりも優遇されているMMFサービス(ex 中国アリペイの「余額宝(ユアバオ)」)のようなものであれば親和性もあり、顧客体験的にも需要はあるように思います。つまり、サービス種類の選択や設計の工夫次第で何とかなる余地はあると思います。
この点、メルカリがこれまで提供してきた金融サービスを振り返ると、まずはメルペイによる決済(「資金移転」)サービスであり、最近では後払いサービス(「資金供与」)も提供しており、その延長線上での少額融資サービス(「資金供与」)であると整理され、親和性の王道に沿った形でのサービス開発・展開であることがよくわかります。また、並行して進めている打ち手として、「資産運用」においては、よくある投資信託の提供やロボアドバイザーサービスの組み込みではなく、相場による変動がない融資型クラウドファンディングサービス「funds」との連携等、親和性の低い金融機能提供においても、慎重に顧客体験を考慮したサービス設計がなされていることを感じます。
今後の展開としては、今年春に暗号資産サービスを提供する「メルコイン」の設立を発表していますが、こちらについては、金融サービスを統合する一環としての「通貨」の発行と流通を企図する世界観を持ち、更なる顧客体験の拡充を狙っているように感じます。これは、楽天グループが購買という非金融サービスと金融サービスを有機的に統合するために「楽天スーパーポイント」という「通貨」を軸に世界観と顧客体験の展開を狙い、成功してきたことに共通する考え方であるように思います。
足もと、Embedded Financeという表現が一時期のFinTechと同じくバズワード的に広がっているように感じますが、非金融サービスと金融機能の親和性の有無やそこでの工夫、世界観の設計等まで考えつくされなければ、なかなか成功は難しいように思われ、今月頭のメルカリの少額融資サービス提供開始のニュースは、そのことを改めて考えさせられるものでした。

(ご参考)ダイヤモンドオンライン寄稿コラム
丸井、メルカリ、楽天が推進する金融ビジネスの成否

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

2021年8月9日
【特別買収目的会社「SPAC」 空箱上場の解禁、その期待とリスク】
大原のコメント→
既存の株式上場プロセスには利益相反リスク等の諸問題があることに加え、諸外国の金融商品取引所との競争を考えると、日本でもSPACの導入検討は当然であると感じられるものの、足もと少し収まりつつあるとはいえ、米国のSPAC狂騒状況をみるにつけ、個人的にはSPACの存在意義というか利用状況に対して違和感を感じています。
「日本の成長力の底上げには、米国のように新興企業が次々と誕生するダイナミズムが必要」という政府及び業界関係者の問題意識には異論はないものの、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6085243?ref=user_121187

2021年8月11日
【LINE証券空前の赤字 証券ベンチャー苦悩続く】
大原のコメント→
従来型証券ブローカレッジ事業モデルが利潤消失で限界を迎えているなか、大手証券会社も新たな代替収入源の確保に苦しんでいる状況にありますが、そのなかで比較的財務基盤がぜい弱な「証券ベンチャー」の苦境が顕わになってきている状況と認識しています。「炭鉱のカナリヤ」のように酸素が薄くなってきている状況をいち早く知らせる存在に通じるようにも感じます。
記事内にもあるように、このような状況を脱するために、証券ブローカレッジ事業モデルの裏側を担う黒子の立ち位置への転換を進める会社も現れつつありますが、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6090374?ref=user_121187

2021年8月11日
【上場価格設定の実態把握へ 公取委、金融庁と連携】
大原のコメント→
日本の場合は小規模上場を許容するマザーズが新興企業の上場市場として存在しており、そのためにIPO当初の投資家が個人投資家中心である等の事情が背景にあることは理解していますが、将来的に株式公開も検討し、いままさに主幹事証券候補の選定過程にある新興企業の経営者としては、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6092407?ref=user_121187

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

2021年8月9日
【「投資」って、お金がどれだけ貯まったら始めていいの?】
長澤のコメント→
みなさんが言われているように、まずは始めてみる、そして「お金」に働いてもらうことを自然と身に着けていくことが、一番大事なことかと思います。
 投資を趣味とするような一部の人を除いて、一般生活者にとっては、なかなか投資を始める機会がないとの声もありますが、以前も書いたのですが、例えば、知人は、ご子息の就職の際、家計に入れてもらうお金の一部で「つみたてNISA」を始めさせたと聞きました。
 本人は投資に興味は全くなかったそうですが、親にとられるより自分の貯蓄になるので「やらない」という選択肢はなく、3年も経つと学生の時には見たこともない、まとまった金額が積み立てられ、かつ多少利益も出ていたようで喜んでいたそうです。
 まずはきっかけを作り始めてみる、こうしたことも金融教育の実践の一つかと思いますし、資産形成層・退職者層問わず、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6085520?ref=user_6551307

メディア掲載情報

■メディア掲載:「ファンド情報」への匿名コラム寄稿
代表の大原が「ファンド情報」に匿名コラムを寄稿しました。
「顧客不在の手数料談義に物申す」
https://www.jamplatform.com/news/2021/08/11/2361/

■コラム公開:コンプライアンスチームの連載noteの公開
新興・海外資産運用会社の立上げ等の支援を提供している弊社コンプライアンスチームがnoteに第10回目の記事を公開しました。
「第10回 当局届出事項の落とし穴5」
https://www.jamplatform.com/news/2021/08/13/2368/

インフォメーション

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