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「JAMPの視線」No.194(2023年9月17日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③お知らせ・ニュースリリース
④インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2023年9月17日

 9月も半ばになってようやく暑さも和らいだかなと思ったのも束の間、この3連休はまた暑さが戻ってきてなかなか秋めいた気候になりませんね。さすがにもう2週間ほど経って10月に入ったら秋めいてくるのでしょうか。子供たちの運動会シーズンも近くなってきていますので、早く涼しくなるといいなと感じる今日この頃です。
 さて、先週の本コラムでSBI証券と楽天証券の株式売買委託手数料の無料化の施策について取り上げた際、証券売買委託等のブローカレッジ付加価値及びそこでの利潤のみならず、その後を期待されるアセットマネジメント付加価値とその利潤も後を追うように消失を余儀なくされるという以前から主張している私の悲観的な予想について触れさせて頂きましたが、今日は改めてその辺りについてお話させて頂こうと思います。
 上場株式等の公開資産を投資対象とする投資信託商品等のアセットマネジメント付加価値は流通している商品数が多くなるにつれ、ひとつひとつの商品の独自性は薄くなってしまい、それとともにその付加価値が低減することは避けられず、結果としてそこで期待される利潤も薄くなるという圧力が発生してしまいます。この動きは金融機関が商品性での差別化が困難ななか、手数料率の低さで商品の魅力をアピールしようとする手数料引き下げ競争が発生すると加速せざるを得ず、ここ数年、特に来年からの新NISA移行を前にして更にその加速ペースが高まっているように感じます。正直いって、私には金融機関が新しい付加価値の創造に努めることなく、自らの首を絞めているようにしか見えません。
 このような動きに対し、新しい第3の付加価値としてアドバイス付加価値をお客様に提供し、金融機関も利潤の源泉を厚くする取り組みとして、私たちはゴールベースアプローチ型資産運用アドバイスサービスの事業化をひとつの方向性として提案しておりますが、実はアセットマネジメント付加価値の領域においても取り得る手段がないというわけでは無いと考えます。即ち、投資対象商品や手法、運用主体に独自性を具備し、それを通じて他には無い付加価値を提供しようというものです。
 例えば、つい先日の日経新聞で報じられていたSBI証券とKKRによる新しい共同出資会社の設立等、プライベートアセットを投資対象とする投資商品を開発し、お客様に提供しようとする取り組みは、「投資対象の独自性」に着目した動きであると思います。Layer Xと三井物産の合弁子会社である三井物産デジタルアセットマネジメントによる不動産の小口化投資商品等も同じ切り口での取組みと整理できると思います。
 また、「投資手法の独自性」に着目した動きとしては、投資対象は上場株式であるとしても、その投資手法にアクティビスト的な企業への働きかけを取り入れ、能動的に投資先企業の企業価値を高めるという独自の付加価値を具備するということも考えられます。マネックスグループが運用するアクティビストファンド等はその代表例であると考えられます。
 一方、「運用主体の独自性」、つまり運用会社のブランドの強化やコミュニティ戦略等を通じ、その提供する商品そのものの投資対象や手法は特別なものではないにせよ、お客様がその運用会社の理念等に共感・賛同し、多少手数料が高かったとしても利用するようなインセンティブを与えるというやり方もあると考えます。これは日本においてはこれまで独立系運用会社がその創業者のカリスマ性やコミュニティ構築等を通じて行なってきた取組みに見られると考えます。ただ、このやり方については、投資対象や手法に独自性を具備するものとは違い、大手資産運用会社や販売金融機関ではなかなか実現が難しいとも思われます。
 いずれにせよ、アセットマネジメント領域においても付加価値と利潤が消失する流れのなか、先日公表されたSBI証券とKKRの共同事業のように、これまでにない新たな商品・サービスの開発の動きは広がるように思われ、政府が進める「資産運用立国」構想のなか、政策や法改正等がこうした動きをどのようにサポートするのか、これから注目をしてまいりたいと思います。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

2023年9月10日
【金融庁、地域銀の「有価証券運用」改善へ対話 体力に応じた態勢構築促す】
大原のコメント→
 国内外の金融市場が金利引き上げ局面にあるなか、地域銀行の有価証券運用事業は非常に難しい局面にあることはいうまでもなく、いまや「本業」のひとつまでの位置づけとなった同事業のかじ取りは重要な経営課題のひとつです。
 私が地域銀行の有価証券運用事業のご支援を始めた2017年頃から比べると地域銀行自身の意識も大きく変わり、本記事にあるように「ブル・ベア型のファンドを両方購入して含み益が出ている方を売却する」等の短期的な会計収益づくりの行動は見られなくなったようですが、・・・(続きを読む)

2023年9月13日
【「達人」から盗む株式投資術 Z世代に刺さるか: NIKKEI Financia】
大原のコメント→
 中高時代の同級生だった河本君が創業・経営しているウッドストックの先進的な取組みがNikkei Financialで紹介されています。
 Z世代と呼ばれる若年層の投資体験をサポートするサービスとしてコピートレードはこれから存在感が大きくなりそうであり、規制の存在ゆえに証券会社自らが類似のサービスに手が出せないところ、ウッドストックのようなFinTech企業が活躍する余地は大きいように感じます。
 一方、記事でも触れられている通り、今月末・来月頭からSBI証券と楽天証券が株式売買委託手数料を無料化するように、・・・(続きを読む)

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

2023年9月4日
【相続対策、生命保険を使い分け 遺産争い回避や贈与の手間少なく - 日本経済新聞】
長澤のコメント→
 円長期金利の上昇を受けて円建て一時払い終身保険の販売が急増、特に相続税の非課税枠や名前を付けて遺すことができるメリットを活かした相続対策ニーズが強いとのことです。
 外貨建てでも相続税非課税枠等を売りにした販売が多く行われてきましたが、個人的には、上記のようなメリットに魅力を感じたのであれば、さらに利回りを求め為替リスクをとってまで外貨建て保険に加入する意味があるのか疑問を持っていました。極端な話をすれば円建て予定利率0%でも十分メリットはあるのではないかと思っていました。
 予定利率0.25%から0.6%への引上げと、外貨建てに比べまだまだ金利は低いにも関わらず販売が急増したというのは、・・・(続きを読む)

お知らせ・ニュースリリース

■地銀有価証券運用に関するWebミニセミナーの開催について
9月13日(水)に開催した地銀有価証券運用事業に関するWebミニセミナーの資料・動画を公開しました。

「有価証券運用セミナー~地域金融機関が抱える課題と今後の展望~」

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