「JAMPの視線」No.199(2023年10月22日配信)
目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③インフォメーション
ロンドンに駐在していた30代前半の頃、結婚1周年記念ということで奮発して高級ホテルでディナーをしたことがあったのですが、荘厳な雰囲気に緊張し過ぎたせいか、お洒落に盛り付けられたバターをチーズと勘違いし、「Very tasty」とバクバク食べてしまい、ウエイターと妻が呆然としていたという恥ずかしい出来事がありました。それから長い時が経ち、新婚気分が薄れつつある我が家では、2人の息子が好物のホットケーキを週末の朝ごはんに食べることが多いのですが、「パパはむかしバターをバクバク食べてたんだよ」といつもいじられます。一度きりの失敗でも長期間にわたって馬鹿にされますので、皆さんもバターとチーズは間違えないようにご注意下さい。
さて、先々週10月13日に野村アセットが国内2例目となる投資信託の併合を公表しました。何故かどこのメディアもスルーしているようですが、資産運用立国構想実現への機運が高まる中、資産運用会社/業界の生産性向上のための施策の代表例として取り上げられることが多い「投信基準価額の一者計算」と同じくらいに大きく報じられるべき「Giant step」案件であるように感じます。
以前から申し上げている通り、私にとっての「資産運用立国」とは、資産運用業が産業として大きく成長し、日本の雇用や税収、GDP増大に貢献することを通じ、経済成長をけん引するという世界観であり、そのためには資産運用ビジネスの効率化及び生産性向上が不可欠だと考えています。そしてこの効率化及び生産性向上を実現するためには、資産運用事業に係る各工程で関係各社の役割分担が明確になっており、無駄や重複がないことや、規模の経済が働きやすいという資産運用事業モデルの特徴のひとつが最大限発揮される等が重要であると考えます。このうち前者の具体的施策のひとつが「日本版ファンドマネジメントカンパニー」や「投信基準価額の一者計算」であり、後者の具体的施策のひとつが「投信の併合」となります。
今回の野村アセットによる国内2例目となる投信の併合については、小規模投信同士の併合ではなく、十分に規模が大きい投信同士の併合であることや、受託銀行が野村グループ外の三井住友信託銀行(再信託銀行は日本カストディ銀行)であること等に驚くとともに、前回の1例目の時とは異なって2007年9月末よりも前に設定された投信同士の併合であることは従前あった論点をクリアしたのか等の好奇心もむくむくと感じ、資産運用業界に働くひとりのプロフェッショナルとしてとても前向きな刺激を受けます。
野村アセットはプロダクトガバナンス強化の方針を宣言し、既存投信の選別や絞り込み等を推進していますが、並行して今回のような「投信の併合」や「投信基準価額の一者計算」にも積極的に取り組んでおり、まさに資産運用業の高度化に現場の最前線で取り組んでいるという印象を外部の視点から持っています。業界のリーディングカンパニーが挑戦から得た知見等を資産運用業界として共有してもらうことを通じ、「資産運用立国」構想の実現に向け、我が国資産運用業界全体が資産運用業の高度化を進めていくことが期待されます。
(ご参考)野村アセットマネジメントのプレスリリース
「マザーファンド間の併合の実施について」(2023年10月13日付)https://www.nomura-am.co.jp/news/20231013NAM.pdf
2023年10月17日
【投信値下げ競争、ニッセイアセットも参戦 準大手に波及】
大原のコメント→
運用会社が自らの首を絞める低コスト投信の信託報酬の引き下げ競争にはうんざりしますが、そのための施策としてベンチマーク指数を代表的なS&P等とは別のものを使用するという工夫は評価されるべきと感じます。
2023年10月20日
【楽天証の手数料ゼロ決断、IPO価格に影響も-短期業績の悪化不可避】
大原のコメント→
リテール金融業界関係者と会話をしていると、来年からの新NISAへの移行等の追い風を受け、預貯金に偏っている個人金融資産が投資・資産運用に大きく移動する流れは殆ど全員が同意するものの、そこでリテール金融機関の収益が大きく成長するかというとそのような熱狂は感じられないというのが実際のところです。
従来型証券事業モデルや資産運用事業モデルが儲からなくなりつつあるなか、その従来型モデルを中心として成長ストーリーを描くのは非常に難しく、上場審査手続き等への影響は当然大きいと思われるものの、・・・(続きを読む)
2023年10月21日
【「アクティブ型投信に注力、インデックス型の手数料競争には追随せず」…三井住友DSアセットマネジメント・猿田隆社長】
大原のコメント→
至極真っ当な考え方だが、残念ながらいまの資産運用業界は付加価値を創出し、正当な手数料を徴求するよりも、自らの首を絞める手数料引き下げのチキンレースに懸命になっている状況です。
手数料が安いのはお客様にとってメリットがあるのはその通りですが、金融機関が適切な利益を受け取れないのであれば、お客様のサポートや新しい付加価値の探索等にリソースを配賦することもできず、・・・(続きを読む)
2023年10月20日
【【実像】 「ノルマ廃止」の試練 脱〝やらされ感〟が生む現場力】
長澤のコメント→
自分も元銀行員ですが、全ての新入行員といっても過言ではないと思いますが、入行時には配属部署に関わらず顧客の役に立ちたいとの想いを抱いていたのではないでしょうか。それが時を経るうちに、必ずしも顧客本位とは言えない場面に遭遇し、思い悩みながら営業を続けたという人も少なからずいるのではないかと思われます。
リテール金融商品販売に係る業績評価体系については、目標設定としては銀行全体の収益目標額をトップダウン的に商品毎、支店毎に振り分ける方法が一般的ですが、記事にあるようなボトムアップ的に支店が自主的に目標を設定する方法は、・・・(続きを読む)
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