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「JAMPの視線」No.207(2023年12月17日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2023年12月17日

 少し前のことになりますが、小学校3年生の長男から「パパ、『正義』の反対語って知ってる?『悪』じゃなくって、『別の正義』なんだよ。誰かと喧嘩しても、怒らないで。パパにとって『正義』だとしても、向こうにとってもまた『正義』なのかもしれないよ」というアドバイスをもらいました。小学生向けの哲学の本の受け売りのようですが、何かと調整に追われがちな私の心に残り、最近も時々ふとその息子とのやり取りを思い返します。自分としては自分なりの「正義」と信じることをやり切るしかありませんが、そのような相対的な視点は忘れずに持ち続けたいと思う年の瀬の今日この頃です。
 さて、岸田政権が掲げる「資産運用立国構想」実現に向けた政策プランの策定が年末までという非常にタイトなスケジュールで急ピッチに進められていましたが、先週12月12日に金融庁・金融審議会の資産運用に関するタスクフォースから報告書が、翌日12月13日には新しい資本主義実現本部の資産運用立国分科会から「資産運用立国実現プラン」が公表されました。当初はさすがに議論をまとめきれないんじゃないか等と懸念をしておりましたが、内容的にも網羅的かつしっかりしたものが取りまとめられており、関係者皆さまのご尽力に改めて感謝申し上げる次第です。
 金融庁関係者と面談をさせて頂いた時も「今回はかなり網羅的に出し尽くした感がある」とのコメントがありましたが、確かに資産運用会社のガバナンスから実務面での課題のみならず、アセットオーナーの業務高度化やスタートアップまわりのことまで網羅されており、これらが来年初から具体的に進捗すれば、日本の金融・資産運用業界の効率性や生産性等は向上することが期待されるように思います。今回の実現プランが絵に描いた餅にならないように、実務側の私たちも変革の流れを具体化する必要があると感じます。
 一方、報告書が出た後で「これもあったよ」的に問題提起するのもいかがなものですが(出る前からあちこちでは言っているつもりではありましたが)、資産運用業界を規制する側の当局や業界団体の側も資産運用立国構想の実現に過程で変革する必要があるのではないかという考えを改めて強く思っています。具体的には、金融庁の監督局における組織のあり方と業界団体の統合の必要性の2点について問題意識を持っています。
 1点目の監督局における組織のあり方については、金融機関を監督する監督局には銀行第一課・第二課、保険課、証券課という銀証保の3業態を監督する課は設置されているものの、資産運用業界を監督する部署は、証券課の中の資産運用モニタリング室という位置づけであり、当局側での資産運用業界の位置づけはいまなお銀証保とは並列ではないとされていることに違和感を感じます。課と課の中の室という位置づけの差が具体的にどのような予算やその他リソース配賦の差にあらわれているかまでは正確に把握していないのですが、政府が資産運用立国構想のもとで資産運用業を高度化すると重要視するのであれば、この位置づけも今後見直されるべきように勝手ながら感じます。
 また、2点目の業界団体の統合の必要性については、資産運用業界に関係する業界団体として現存する投資顧問業協会と投資信託協会はこれまでも何度かにわたって統合の話があったという風に聞いていますが、現在のこのタイミングこそがまさに統合を具体的に再度検討する機会なのではないかと感じます。両協会は確かに同じ資産運用業といってもスキームが投資助言・投資一任か投資信託かが異なっており、実務的な諸規則等も分かれているのも事実ではあるものの、投資助言・代理業や投資運用業といった金商業登録をしている会社としては重複しているところが大きいですし、資産運用業界とひとくくりにし、業界の発展を支援したり、そのための諸企画を推進したり、諸外国の同様の団体と交流したりといった場合、分断されたままでは効率的でないように感じます。今年2023年には2回にわたって両協会が共催する形で「資産運用業大会」が開催されたりと、両協会の距離感も縮まってきているように感じられ、足もとの大きな流れのなかで来年以降に統合の機運がまた盛り上がることを個人的に祈念しています。
 いずれにせよ、来年2024年は今回取りまとめられた資産運用立国実現プランを実際に推進するフェーズに入ることもあり、上記2点のようなことも含め、官民が機運をともに盛り上げ、資産運用業界の活性化と発展につながるような動きが具体化することが期待されます。弊社もその中で一助となるような取組みを進めてまいりたいと思います。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

2023年12月11日
【日本株投信「運用力」、スパークス首位 独立系が健闘 - 日本経済新聞】
大原のコメント→
 過去の投資運用パフォーマンスがそれぞれの会社の投資運用能力をどこまで正確に表現する指標たり得るのかは議論があるかもしれませんが、日本株アクティブ運用という残念ながらビジネス的には本流とは言えない領域にもしっかりとリソースを集中配賦するのかしないのかは各社で考えが異なっており、それが過去の投資運用パフォーマンスの差につながっているのであれば、非常に興味深いと感じます(資産運用業界の人間としてはそのような経営判断の差が投資運用パフォーマンスの差にも有意に現れているのであれば嬉しいですが)。
 一点、SBIグループの資本が過半となっている現在のレオス・キャピタルワークスは「独立系」とカテゴライズされているのは適切なのか・・・(続きを読む)

2023年12月12日
【運用会社の参入促進へ 政府、GPIFに「呼び水」要請】
大原のコメント→
 新興資産運用会社が創業する時のハードルとしては、確かに投資運用業等のライセンス登録や必要な人材・システム等の調達等の難易度の高さを指摘する意見もありますが、より大きなものとしては年金基金等の機関投資家からの初期マンデートの獲得が現実的に非常に困難であるということがあります。
 いかに初期コストがかさんだとしてもその後に収益が増加することが予見できるのであれば、その初期コストは投資と割り切って創業に踏み切ることは可能でしょうが、それが見込めないということが日本で新興資産運用会社が増えない最大の要因であると個人的に考えています。
 この点、国際資産運用センター推進機構(JIAM)によるホワイトペーパー「東京における資産運用ビジネスエコシステムの現状 - 『国際金融都市・東京』実現に向けた課題整理 - 」の取りまとめを数年前に弊社がお手伝いした際も、・・・(続きを読む)

2023年12月13日
【スタートアップ、平均年収700万円超え 上場企業上回る】
大原のコメント→
 スタートアップ企業への転職というと「給与水準が下がってしまうので、我慢」「家族からも反対が強い」等の印象がまだ根強くあるように感じますが、周囲の金融スタートアップ企業の実態を見聞きしても、このような状況は大きく変わってきているように思います。
 スタートアップ企業の経営者的には、自社の役職員にはそのような状況を感じてもらっていないようにも思うので、・・・(続きを読む)

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

2023年12月11日
【外貨建て保険「目標到達型」 三井住友信託が販売停止へ 当局も警戒】
長澤のコメント→
 先日は地域銀行の外貨建て保険販売自粛の記事がありましたが、大手信託銀行が「目標到達型」外貨建て保険の販売を停止するとし、販売自粛の動きが大手銀行にまで広がってきたようです。
 目標到達型は、例えば円安が進み、解約手数料控除後の解約返戻金が当初設定した目標額に達すると円建て保険に変わり、為替リスクのない安定運用になるのですが、円建てでは利回りが低く、一旦利益確定させる人が多いようです。本来長期契約を意図した保険契約が短・中期的な運用商品のように扱われ、再度契約すると回転売買のようになりかねず、・・・(続きを読む)

2023年12月15日
【新NISAで「老後資金1.6億円」つくれちゃう?「ウソつけ!」って思った人、ダマされたと思って読んでみて】
長澤のコメント→
 以前も書きましたが、NISAのモデルとなった英国の個人貯蓄口座(ISA)は、日本より15年早く1999年に導入されたこともあり、資産残高が100万ポンド(1ポンド=180円換算で1.8億円)を超える「ISAミリオネア」が、2,000人超いるそうです。
 ISAも当初は時限措置であったものが恒久化され、非課税枠が拡大されたことにより普及が進んだことを踏まえれば、日本のNISAも抜本的改革により普及が進むと思われ、記事のような試算通りになるかどうかはともかく、・・・(続きを読む)

インフォメーション

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