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「JAMPの視線」No.253(2024年11月3日配信)
次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】
目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③インフォメーション
JAMP 大原啓一の視点 2024年11月3日
小学4年生の長男は昔から自作の絵本を作るのが好きでしたが、最近はマンガ作りに夢中になっています。学校や塾の宿題もそっちのけで、「最速を目指せ、ハヤスギ先生」や「ヤバスギ君」などのタイトルで一生懸命マンガを描き、そのたびに感想を求められます。ただ、絵の上手下手はさておき、内容もイマイチ面白くないと感じたので、「起承転結を意識するようにうんぬんかんぬん」とアドバイスしてみたところ、それ以来、口をきいてくれなくなってしまいました・・・。
さて、日本銀行の金融政策転換により、国内金利が復活して以来、「地域銀行は今後、融資で十分に収益を上げられるため、個人向け預かり資産ビジネスに力を入れる必要が減る」との見解が広まっているようです。しかし、私はこの見方は正確ではなく、むしろ地域銀行にとって個人向け預かり資産ビジネスは引き続き重要であり、今後もこの領域への注力が必要であると考えます。
まず、事業環境として、確かに短期金利は復活したものの、経済・資金需給・政府財政状況等をマクロ的に考えると、長期金利が速いペースで上昇するとは考えにくく、過去にあったような「短期調達+長期運用」の手法で地域銀行が利ザヤを大きく稼ぐという事業モデルまでもが復活するというのはまだまだ時間がかかる、もしくはそこまでの復活は期待できないように感じています。この点、短期金利の復活によって、銀行株を見直す動きが進んでいますが、どうも過度に期待感が高いようにも思われます。従って、短期金利が復活したからといって、地域銀行が個人のお客様向けの預かり資産ビジネスの位置づけを見直し、銀行の従来型事業モデルにおいて本業と位置付けられていた融資事業のみに注力するというのは早計に過ぎるように考えます。
また、特に重要なのは、地域銀行の経営課題が、単に収益をどう上げるかではなく、地域社会にどれだけ必要とされるかという根源的な存在意義(パーパス)に関わる点です。そのため、個人向け預かり資産ビジネスは地域銀行の「一丁目一番地」であり、この位置づけが揺らぐことはありません。
金利が恒常的に存在し、「短期調達+長期運用」で利ザヤを稼げた30年以上前の時代とは異なり、今や金融サービスの選択肢は多様化しています。オンライン金融機関の台頭によって、地域銀行はその地理的な近さだけでは必ずしも選ばれるとは限りません。例えば、預金金利が復活する中で、コスト競争力のあるオンライン銀行が高金利を提示すれば、お客様は簡単に預金を移すでしょう。このように、地域銀行の存在感は、過去の取引関係で培った情実等ではなく、今まさにお客様にとってどれだけ必要な存在であるかにかかっています。
以前から本メールマガジン等でも度々申し上げている通り、目の前の資金需要を満たすための金融サービスである資金移転(決済・送金)や資金供与(融資)とは異なり、遠い将来の資金需要に備えるという特徴があるリスク移転(保険)や資産運用という金融サービスは金融機関のリアルなサポートの必要性が大きく、このような金融サービスの提供こそが地域銀行の存在意義を最大限に示す領域であり、お客様に寄り添う立ち位置を獲得する最も実効的なアプローチであることは間違いありません。自らのパーパスを実現し、これからの新しい環境においてもお客様に必要とされる金融機関であり続けるために、個人のお客様向けの預かり資産ビジネスの位置づけを低くするという選択肢は地域銀行にはあり得ないと考えます。
私は地域銀行の大きな可能性を強く信じています。インターネットの普及による情報革命の流れのなか、ほぼ全ての物品・サービスがオンライン取引に移行しつつあるなか、金融・資産運用業界のみならず、あらゆる業界で付加価値のコモディティ化と利潤の消失が急激に進んでいますが、それでもなお付加価値や利潤はリアルな関係性やコミュニティにこそ残ることを確信しています。この将来において、個人のお客様に高付加価値の金融サービスを提供できるのは地域銀行をはじめとする地域金融機関以外には存在しません。短期金利の復活によってかつての栄光が戻ってくるという夢物語に惑わされることなく、目の前の地域のお客様に寄り添うために何が必要か、しっかりとぶれない事業方針をいまこそ考えて頂きたいと思います。
News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)
【【”資産運用家”伊井哲朗】今すでに見えている投信500兆円の未来】
大原のコメント→
個人のお客様向けの投信商品を運用している独立系資産運用会社はどの会社も素晴らしいビジョンをお持ちですが、特にコモンズ投信さんは、個人のお客様の資産形成のサポートに加え、投資を通じて企業活動や社会への貢献も大切にされているお考えでいらっしゃり、以前から強く共感しています。
弊社・日本資産運用基盤グループが創業して間もないころに伊井社長にインタビュー名目でお話をお聞きし、自分たちも別のやり方ではあるものの、資産運用業界に、そしてそれを通じて社会に貢献できるような良い仕事をしたいと感じたことを思い出します。
(ご参考)【金融ビジネス/最前線の変革者達 No.13】 コモンズ投信株式会社 代表取締役社長 伊井哲朗氏 「投資家目線+経営者目線で投資先を選別する」
News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)
【一部地銀、保険商品を絞り込み 「選択と集中」で貯蓄性も】
長澤のコメント→
以前は、商品ラインナップを充実させることが顧客本位であるとして、ホワイトスペースを埋めるとして、取扱いの無い種類の保険を採用する動きがみられました。一方、取扱商品数が多すぎると、金融庁が指摘しているように「自社で取り扱っているリスク性金融商品の数が多く、営業現場で商品性の理解が十分に進まないため、顧客に対しても最適な商品説明・提案ができていなかった。」といった状況に陥りかねず、こうした削減の動きになったのかと思われます。また、最近ではプロダクトガバナンス強化の動きもあり、商品採用時及び販売後のコスト・リスク・リターンの検証が厳しく求められ、こうした動きはますます加速するのではないかと思われます。
【令和の証券営業「電話復権」 みずほ証券、コンサル人員2倍に】
長澤のコメント→
コロナ禍で一気に広まったオンラインや電話での会議・面談ですが、個人向けの資産運用相談においても、銀行や証券会社の店頭まで行くのは面倒だが、自宅に訪問されるのはもっと嫌だという顧客は多いと思われ、今後増々増えていくのではないかと思われます。
大手金融機関を中心に決まった担当者がいるような対面営業の軸足を富裕層顧客に移す一方、若年・資産形成層はネット系証券の一人勝ちともいわれる中、中間層、特に中高年層が保有する生活密着度の高い資金(老後資金等)への資産運用アドバイスニーズへの対応が、次の主戦場になると思っておりますが、こうしたニーズに特にマッチするものと思われます。
【投資信託損益のプラス顧客が過去最大 3月末、株高・円安で】
長澤のコメント→
投資信託の共通KPIについては、記事にあるように積極的に取り扱っている商品の違いとその相場状況に左右される面があります。従って、それぞれの販売会社が抱える顧客層にもよりますが、好調なインド株投信を多く扱っている販売会社が顧客本位の営業をしていて、バランス型投信を扱う販売会社はそうではないのかといった金融機関間の単純な横比較は難しいと思われます。それより、同一販売会社を時系列で見て、安定的に損益がプラスとなっているのかを見ることが重要ではないかと考えます。
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