コンサルには「2通り」ある~謙虚なコンサルティング
本記事は「謙虚なコンサルティング」エドガー・H・シャインを読んだアウトプットです。
コンサルの役割(クライアントにとってのメリット)は、様々な専門性や客観性である。それは間違いではないかもしれないが、それは「本当の支援」ではないかもしれない。
医者や弁護士であれば、顕在化しているトラブルに対し、専門性をもって解決策を提示すれば良い。それ以上はむしろ不要。
しかしながら、組織が抱える問題は、複雑で厄介で、クライアントですら問題の本質に気づいていないこともある。そしてそんなときには、外部の専門家ではなく、クライアント自身がその問題解決に適任という場合が往々にしてある。
従来型のコンサルを全否定するわけではないが(従来型の方がうまくいく場合もあると書いてある)、こんな姿勢・やり方でなければ解決できない問題もある。そんな内容です。
謙虚なコンサルティングとは
問題そのものの解決策ではなく、次のアダプティブ・ムーヴをまず見出そうとする方法。
従来型の(レベル1の関係のままで行う)コンサルは、アドバイスや直接的な解決策を提示する。
謙虚なコンサルティングは、気づきを与え、顧客自身が思考パターンや行動を変えることを促す。
例えば、問題点を発見しても、それをそのまま伝えることはしない。クライアント自身が、問題の本質は何かを掴むための質問を繰り返していく。
今日の組織は、解決に必要な知識や技術が自明でない問題に直面し、コンサルの役割は「答えを提供する」から、「答えを見出せるよう支援する」へ。
謙虚なコンサルティングに必要なもの(=従来型のコンサルになく、謙虚なコンサルティングにあるもの)は、以下の4つ。
・本当の支援を速やかに行おうとする姿勢
・そのために、個人的な関係(レベル2の関係)を構築すること
・積極的な気持ち~相手に対する思いやり、好奇心
・「診断的な問いかけ」のスキル
カウンセリング、コーチング、ファシリテーションに近いイメージ。
「本当の支援を速やかに行う」とは
コンサルタント(自分)の手助けによって、クライアント(相手)が
1.問題の複雑さと厄介さを理解し
2.その場しのぎの対応や反射的な行動をやめて
3.本当の現実に対処すること
それが、表面的な課題への対処ではない「本当の支援」。
問題が大きく複雑であればあるほど、実行可能かつ有用な提案を外部の支援者が考え付く可能性は低い。だから、コンサルタントは自分で答えを出すのではなく、クライアントが自ら道を見出せるよう支援しなければならない。
本当の支援はすぐに行うことができるが、それには支援者がクライアントと最初の瞬間から率直に話のできる(どこが具合が悪くどうすれば修正できるかを、力を合わせて突き止められる)信頼関係を築く必要がある。
「個人的な関係を構築する」とは
なんらかの方法によって、クライアントと初めて会う瞬間からパーソナライゼーション・プロセスを開始し、自分が信頼に足る人間であり、心を開いて話しても安全であることを伝えなければならない。
人間関係とは
過去の付き合いに基づいた、互いの未来の行動についての、一連の相互期待のこと。関係が成立するためには、互いの期待に対称性がなければならない(両者の望むレベルが同じ場合にしか築けない)。関係の深さは、やりとりのたびに感じた安心感の程度に基づいて、両者によって決定される。
人間関係における信頼と率直さのレベル
レベルマイナス1 ネガティブな敵対関係、不当な扱い
レベル1 認め合うこと、礼儀、取引や専門職としての役割に基づく関係
例)列車や飛行機で隣り合わせた人、医者や弁護士
個人的な知り合い同士というわけではないが、互いを同じ人間として扱う。相手が自分に害を与えないことをある程度信用でき、礼儀をわきまえたレベルで率直に会話することができる。
レベル2 固有の存在として認知する
例)個人的な知り合い、同僚、クライアント、仕事や教育の場を共有したために個人的に知るようになったが親密というわけでない上司や部下、たまに会う友人
レベル3 深い友情、愛情、親密さ(ビジネス上の関係には向かない)
レベル1の「取引上の、お役所的な、ほどほどの距離を保った関係」で支援をするケース:
支援者が問題を正しく診断し、いつでも使える有効な解決策を持っている限りはうまくいく。また、クライアントが問題を正しく認識し、何が問題なのかを伝え、その問題に取り組める支援者を選んだかどうかに影響される。
パーソナライゼーションはすればするほどいいというわけではなく、相互依存の関係が存在しない場合には、多くの関係がレベル1のままでうまくいく。
レベル2の関係、「本当の支援」「謙虚なコンサルティング」が必要なケース:
問題が大きく、複雑である場合、レベル1の関係性のままだと、現実に起きていることをまだしっかり探究できておらず、誤った問題に取り組んでしまう可能性がある。
クライアントはコンサルタントの診断プロセスに依存してしまう。その結果、根底にある本当の問題が現れなくなる。
コンサルタントが「専門家」という枠にはめられてしまったら、親密な関係に進みにくくなる。レベル1の段階では、アドバイスすることはたやすいが、本当の問題は何かも、自分が役に立っているのかもよく分からない。
「積極的な気持ち」とは
クライアントとの距離感を縮める。上から物を言う・言われる関係にならない。自分が問題を解決するのではなく、クライアントが動き始めることを促す。そのためには、積極的な気持ち、思いやり、好奇心を持って、クライアントの本当の想いを突き止めることが謙虚なコンサルティングの前提。
レベル2の関係(互いを信頼し、率直に話のできる)を築こうとするならば、レベル1の場合と違い、様子を伺ったり診断や分析をしたりせず、即座に、クライアントとクライアントが置かれている状況に対して好奇心と関心を示す。
→無駄あるいは有害な診断プロセスや介入を始めないようにする。クライアントが何を考えどんな問題解決プロセスを思い描いているか、進め方についてクライアントが明確に理解しているか、コンサルタントがするべきことに対してクライアントがどんな思い込みを持っているか、を徹底的に調べる。
クライアントと連絡を取るのは、力になりたいという気持ちが整ってからにする。仕事になるかどうかは気にせず、力になりたいという気持ちが導くままに行動して、クライアントの問題を解決できそうかどうか判断する。好奇心を持てないなら、手を引くべき。
真摯な好奇心を全開にする。誠実で、自然に湧き起こる好奇心ほど、クライアントに対する関心と気遣いを確かに伝えるものはない。(3つのC,コミットメント、ケア、キュリオシティ。筋の通らないことや気の進まないことを依頼された場合は、正直にそう伝えた上で説明することになる)
「診断的な問いかけ」とは
まずは「謙虚な問いかけ」から始める。支援者が答えを知らず、クライアントが自由に答えることができる質問をする。
↓
クライアントが詳しく話すにつれ、アイデア・仮説・核心を突く考えが浮かんでくる。
↓
未来の位案をにフォーカスした質問をしたいと思うようになり、自分がもっと知りたいと思うことへ、自分の好奇心を満たす内容へクライアントを引き込んでいく。
↓
「診断的な問いかけ」を行う。
一方がもう一方に話すだけの状態から、対話へその場を変える。
概念に関する質問:なぜ?と問う。クライアントは、原因についての考えを巡らせる
感情に関する質問:「それについてどのように感じたのか?」を質問する
行動に関する質問:クライアントの話にあった分岐点について「どんな行動をとったか」を質問する
自分のアイデアや提案は、タイミングに気を付ける。そして、押し付けるのではなく、クライアントに信頼してもらえたと実感するまで「示唆的な問いかけ」を用意して待つ。」
以上ですが、ここに書かなかった具体的な事例が豊富で、そこからも学ぶことはたくさんあります。
特に、以下の記述が興味深かったです。
改革に実際に関わる人たちに、その方法を考える段階から参加してもらわなかったら、彼らは改革の実行を難しいと思い、様々な形で抵抗を示す。
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