What is alive in you?
愛知県岡崎市にあるマイクロホテル「ANGLE」さんのイベント「アングルトーク」にゲストとして出演する。打ち合わせで、一緒のゲストであるオゼキカナコさんにファシリテーターの資質について褒められた。(嬉しい。。。)なので、あらためて自分の芯にあることを、スウェーデンの話とともにアンサーしたい。
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世界27ヶ国から50人の多種多様な文化的背景、価値観、考え方、仕事のバックグラウンドを持ったメンバーが集まった大学院で学んだ。ブレーキンゲ工科大学:持続可能な社会のための戦略的なリーダーシップのマスターコース。サステナビリティとリーダーシップが専攻。講義スタイルはほとんどなく、基本は、単科ごとに一つのプロジェクトチームを1から作り、試験をクリアしたら解散。この流れを1年間の中で、4〜5回繰り返す。会社や団体に対して、サステナビリティに基づいたビジョン・ミッションメイキングにも中期的に入るプロジェクトもあって、かなりハード。
異国の地にいること、多様な背景を持つメンバー、1年間という過密なスケジュールなこともあいまみえて、社会的地位、これまでの価値観、全部一回なし。俺は俺、お前はお前、人間として自分が剥き出しになる感覚がずっとあった。さらには、サステナビリティリーダーシップの本質である「内面を鍛えること」もプラスして、1年という長い期間、自分との対話、人との対話を、自分の血肉となるまで体感した。
心の声をきく、声を出す
What is alive in you?(今、あなたに心の中に息づいてるものは何?)
What is the elephant in the room? ( 教室の中で、あるのに気づいてないふりをしているものは何?)
What is unvoiced today ? ( 今日、話されなかったことは何?)
日常の中で、授業の中で、プロジェクトの中で、チームビルディング中でで、何度も何度も問われた哲学的な問い。些細な違和感でさえもプロセスし、声を出す。そして、声をきき合う。合理性・効率から遠く離れたコミュニケーションを本気で素晴らしいと皆が思っている。どれだけ取り出すのに時間がかかろうとも、待つ。
なんて素晴らしいリーダーシップ!と思われるかもしれない。が、正直、苦しいことも多い。心の願いが声になる手前には、恐怖や不安が邪魔してることが多いからだ。
恐怖や不安に寄り添い、自分の心の中に息づくものを取り出してみる。そして、声に出す。相手はうけとめる、うけとめたことで息づいたものを取り出す。プロセスし、声に出す。そのキャッチボールを繰り返す。日常生活の中で、まあいいかと投げちゃう違和感から大切なものまで、何百回、何千回と話をすること、きくことを、重ねたと感じる。
例えば、
・修士論文のチーム、テーマ決めを2日間かけて、全員の同意・納得があるまで話し合って決める。
・タンザニアと中国からのクラスメイトが試験に落ちて、国に帰らなきゃいけないことが起こった。サステナビリティを学ぶ人たちが、目の前のサステナビリティの倫理に反することなのに、無視していたんじゃないかとクラス全員で集まって、この状況をプロセスする。
・世界の中で特権を持っているというカナダ人(白人として)の友達に対して、特権を持っていることに対して思い切り怒りをぶつけながらも、対話をする。
・修士論文提出直前に大学を辞めるというメンバーに対して、1週間かけて対話する。
・一人一人が弱さをさらけだすコーチングサークルを行う。
出来事ごとに一人一人の声をききあい、話す。そんなんばっかだから「人間に戻っていった」ような感覚の一年だったと形容していたクラスメイトもいる。この大学を卒業した大先輩は「怒って泣いて、いっぱい笑って、毎日何か起きる。一生忘れられない時間だった。」ともいっていた。
優しい世界から育まれた「きく」のOS
ここにあったのは、おれtoお前、人間対人間の営み。俺もお前も「オレ」を主語にして話す、きく。自分もリスペクトして、相手もリスペクトして、お互いの差異を歓迎し、目標に向かってどうあれたら、お互いがハッピーなのかを対話していく。ときには、わかりあえないこともあるけど、わからないことをわからないままでもよしとする。解を探すのではなく、問いを大事にする。ポジショントークなんぞ、皆無。
ひとことで表すと、優しい世界。スウェーデンでの体験を通して、僕は優しい世界を信じてる。話をする、きくっていう本質的な価値が、五感、腹にまで落ちた体験から根本的に身体に染みついてる。一人一人が大事だと思っているし、一人一人が心の奥にある声がでることで、世界がより良くなると思っている。その声が出てくることを本気で願っている。心の奥から出てきた声は美しいし、世界にもっと響いたら、もっと素敵な世界になると思う。
きくことは、技術でなくて自分のあり方で決まる。もしかしたら、そんなあり方がオゼキさんに響いたのかもしれない。
補足:優しい世界は、ぬるいことではない。
最近、優しい世界に近い言葉で、心理的安全性が注目されている。その中え、ききあうことは、「傷を舐め合うこと」「話をする、きくだけで、進まないこと」みたいに囚われている節があるように感じる。
それは違う。
自分の心の奥にある願いと目の前のプロジェクトの意味が繋がることや、チーム内での安全性が高まることで、間違いに気づけたり、もっといいアイデアが出てくること、エンゲージメントが上がるなど、パフォーマンが高まる。実際、この領域の研究は、多様に発表されている。インサイト、という本が論文を網羅していると思う。
個人的には、なにより話をすること、きけることって本当に人間らしいと思う。人間性が大事にされてプロジェクトが進むと、不思議とパフォーマンスも高かった。おれらは機械じゃねぇんだから当たり前。そのことを忘れちゃってる、現代社会。