愛と言葉
皆さんはこれまでに、自分のことを好きと言ってくれる人や、恋人に対して「なんで私(俺)のこと好きなの?」と問いかけたことはあるだろうか。
突然だが、私はこの問いに価値は無いと考える。
正確に言うと、この問いに対して答えが完結してしまう関係には価値がないと思う。
どういう意味なのか。
今回は人類が「言葉」をどうやって生み出したかを出発点に、この持論を紐解いて説明しよう。
愛や恋が感情である。というのは、誰しもが当たり前のように認識しているだろう。
しかしその理由が「言葉」で説明できた時に何が起こっているのか。
それは言葉のメカニズムを理解する必要がある。
そもそもなぜ人間だけが言葉を扱えるのだろうか。声帯の仕組み?知能の高さ?脳の特性?
厳密にはどれも正解である。
ただここで、口から言葉を発するかどうかのみに焦点を当てると、九官鳥やセキセイインコなどの喋れる鳥が入ってくる。
私が言いたいのはそうではなく、言葉を使ってコミュニケーションを取れるかどうかである。
そしてそれは現状、人間のみだ。
言葉でコミュニケーションをとる我々のみが有するものとは「同じ」という概念を理解する能力である。
ちょっとややこしいが、この話凄く面白いので少しお付き合い願いたい。
皆さんは「リンゴ」という言葉を聞いた時、脳内で赤くて片手大の丸い果実を思い浮かべるのではないだろうか。
恐らくほぼ全ての人間が「リンゴ」と聞いた時に、「同じ」ものを連想できていると考えて間違いないだろう。
↑ここに鍵がある。
例えばスーパーマーケットに行ってリンゴのコーナーに行ってみて欲しい。そこには「リンゴ」とくくられた同じとされているものが並んでいるが、2つ手にとってみればその2つは確実に違うものである。
だって別々に手に取れるのだから、どう考えたって違うモノでしょう。細かく見れば、色も違うし形も重さも糖度も違う。
しかし人間はこれらを「リンゴ」という言葉でくくって「同じ」ものとする。
要するに「言葉にできる」とは「同じと認識する」なのである。そして人間は同じと認めたものを交換できる、等価交換だ。これの象徴がお金である。
「この世の全ては金で買える」と言っている人は、言い換えれば「この世の全ては交換可能だ」と言っているのだ。
金や名誉に邁進し続けた人が、最後の言葉に孤独や虚無感を記すのは、ここに答えがあると私は思う。(これについてはまた詳しく書こうと思う)
ここで冒頭の恋愛の話に戻る。
貴方は恋をしている時、どんな瞬間に幸せと感じるだろうか。
幸せに正解など無いが、私の意見としては「私じゃないとダメなんだ、私の代わりはいない」という唯一無二性(オンリーワン)だと考える。
よく耳にする話で、彼氏に浮気をされた女性が「行為自体よりも、私じゃなくてもいいんだ。って感じた瞬間冷めた」と言っているのは、まさにこの事だろう。
彼氏が自分以外にも好意と欲情を示し、それを実行した事によって、自分の唯一無二性を否定されたからだ。
では好きな理由が完全に言葉で説明できてしまう恋愛関係に、なぜ価値がないのか。
それは、相手にとって貴方と「同じ人」が他に存在する証明だから。そしてそれは交換可能だからである。
正確に言うと貴方と同じ人など存在しない。しかし恋人が、貴方を好きな理由を言葉で完全に説明できた場合、その恋人にとって貴方と同じ(替えが利く)人が他に存在し得る。
ここで例外なのは固有名詞である。
固有名詞は言葉なのに唯一無二であるが、私の意見を否定する理由にはならない。何故なら固有名詞に形容詞は存在しないからだ。
[説明]
「固有名詞」"大谷翔平"や"渋谷"などの人名や地名、この世でたった1つのものを表す名詞。貴方の名前も固有名詞。
「形容詞」野球が上手い、高身長、童顔などの性質や状態を表すもの。
人を褒める時に使う言葉は大抵形容詞である。
優しい、可愛い、背が高い、思いやりがある、料理がうまい、鼻が高い、面白い、カッコいいなどなど。
ここで1つ述べておきたいのは
形容詞が好きな理由として出た時点で、その好きに価値はない。ということではない。
それらは好きな理由の一部となり得る。
しかし、あくまでも付加価値でしかなく、絶対的価値ではないはずだ。
沢山の要素があってその人が好き、という場合はどうか。例えば貴方が恋人を好きな理由として「優しくて気が利いて、背が高くて声が良くて、年収も高くて頭も良い」と言ったとする。
こうなればその人にしかない複合的な要素で愛しているように見えるが、これは競合が減るだけで暫定1位(他に比較対象がある中での現状1位)であることに変わりはない。
競合が少ないので、偶然貴方のコミュニティ内に上位互換(同じ特性を持つグレードが高い版)が現れない結果、オンリーワンだと錯覚しているだけだ。
要するに、言葉(形容詞)で説明がついてしまう恋愛関係に唯一無二性は無い。唯一無二性の無い恋愛関係に価値は無い。
というのが私の結論である。
だが人間なので、言葉で気持ちを伝えたいタイミングというのはある。どうするべきなのか。
固有名詞と愛が直結している状態だ。例↓↓
「〇〇〇という存在に惚れている。〇〇〇だから愛してる」になる。
好きな理由を聞かれた時にこれでは、成立していない。要するに、言葉による説明完了ができていない。
だがそれでいいのだ、それこそが愛だと私は思う。時に人の感情とは言葉の外に出る。
その愛がある上で、形容詞的特徴が付加価値としてあなたを好きな理由になり得る。
「貴方のここも好き、こんな所も好き。でもなぜ好きかと聞かれたら、ただ貴方だから好き」は成り立つ。
しかし「〜(形容詞)から貴方が好き」と言われたらそれは、貴方が唯一無二でない証明だ。
映画「花より男子ファイナル」で道明寺が
「俺は牧野って存在に惚れてんだからよ」
と言っていたのが印象的だ。
勘違いしてはいけないのが、この記事を読んで「恋人や好きな人への無敵キラーフレーズを手に入れたぜ」などと思わないでほしい。もしそう捉えたのであれば、貴方は何も本質を理解していない。
不安になって、自分を好きな理由を恋人に問いただす貴方。
そんなものに価値は無い。仮に全部説明されたのならば、貴方はその恋人にとって、入替可能な存在である。
むしろ理由もなく、貴方をどれほど愛してくれているかを感じ取ろう。感じ取れない相手とは離れるべきだ。
もっと言葉で表現して欲しい。と恋人に言われている貴方。言葉と行動で、全身全霊でその恋人の存在自体に惚れていることを伝えよう。
そしてその上で、恋人の付加価値的要素(可愛い、優しい)も伝えて褒めて感謝しよう。
と、もう3年間恋人がいない24歳モデル男が言うています。恋人募集中…。
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