永遠のキングオブ銭湯〜北千住の大黒湯
私事だが、最近ちょっと忙しく、noteの更新も控え目にしている。
しかし、今回ご紹介する大黒湯だけは、後回しにはできない。
大黒湯とは銭湯的にはベタなネーミングで、検索するといくつも出てくるが、キングオブ銭湯とうたわれる、この北千住の大黒湯が今月末で閉店となるからだ。
銭湯好きには名所の一つである六龍鉱泉は、知らぬ間に閉店していた。
この愚を繰り返すまじと、私は大黒湯へ向かった。
大黒湯
見よ!この宮造りの格式高い構え。
キングオブ銭湯と呼ばれる所以である。
夜で見づらいが、屋根を見ると、上には鳳凰が、下には名前にある大黒天がいるのが分かるだろうか。
屋根の裏側を見ても、いかに豪華な造りか分かろうというものだ。
この煙突が年季を物語る。
いざ!
どっしりとした迫力を感じながらのれんの脇に目をやると、そこには木の板が掛かっている。
「わ」と書かれた板(イタ)だから「わいた」。営業中を意味する。
営業が終了すれば、「ぬ」と書かれた板がぶら下げられ「抜いた」、営業終了の意味になる。
のれんをくぐるとそこにある下足箱は一味違う。
番号にいろはが振られているのだ。
やはり、閉店の噂を聞いてか、多くの下足箱が埋まっている。
受付
中に入ると、旅館と見まごうばかりの広い待合室。
見上げればこれも格式高い格天井。
ソファの向こうには畳もある。窓の向こうは中庭だ。
庭は日本庭園。こんな贅沢が銭湯ではできるのだ。
ソファから受付を見るとこんな感じになる。
ん?左側に変な犬が。
脱衣所へ
脱衣場も広い。木製のベンチが2つ、畳張りの広いイスもある。もちろんオカマドライヤーも。
待合室の格天井は修復され、新しくなっていたが、脱衣所の格天井はおそらく建築当初のままだ。色あせてはいるが、すべてのマス目に絵が描かれている。出来た頃は今でいう雅叙園並の豪華さだったであろう。
脱衣所には、建物の老朽化と体調もよくなく、6月30日で閉店するとの貼紙が……。
なんとも、もったいない話だ。
以前ご紹介した岩の湯もそうだが、営業の継続は無理でも、建物だけでもなんとか保存する術はないものだろうか。
浴室へ
浴室も広い。
カランの前には一面のタイル絵があり、江戸時代らしい旅人や籠の様子が描かれる。
風呂は江戸っ子らしく熱め。電気風呂や炭酸泉のようなハイカラなものはない。ジェットバスとバイブラのみ。
露天風呂は内風呂より少しぬるめだ。
木が生えている。
女風呂は外から見えるわけにはいかないので、露天とは言っても外気が入ってくるだけというところがほとんどだが、その木の上は、空だ。
天井は空を思わせる水色。
水風呂は結構冷たい。
最後だというのに、コロナ禍のためサウナは休業中。
心残りなサウナ―も多いことだろう。
来月になれば、この看板に明かりがともることはもう、ない。
ごちそうさまでした。
と言いたくない。
そう思いながら、大黒湯をあとにした。