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「もしよかったら、これもらって来てください」③~立場を考える

この事例は、大学の研究室で秘書として働いていらっしゃる御手洗 育/暮らしのエッセイストさんの記事をから頂戴していますが、正しい敬語を示すというだけでなく、敬語というものの使い方を広く理解してもらうために今回の記事を書いています。

「もしよかったら、これもらって来てください」

先週は、敬度(敬意の度合い)を決めるための3つの要件(①場、②立場、③恩恵の大きさ)があり、その3つ目である「恩恵の大きさ」に沿って、どのように敬度を捉えるか、そしてその敬度に合わせた言葉の選び方を書きました。

今週はその続きです。3つの要件のうちの2つ目である立場を主軸に考えていきたいと思います。

敬語は自己表現として使う

前提として、敬語は自己表現として使います。つまり、自分が見ている人間関係はこうですよ、これぐらいの敬意が適切だと思いますよ、という表現が敬語として現れるわけです。だからこそ、目上が使う敬語が人間関係を教えることになり、目下が使う敬語を適切に直すことが指導になります。これを省いて、外で突然敬語が使えるようにはなりません。敬語は文法だけ正しくても適切な敬語にはなり得ないということです。(だから、私も人に失礼をし、失礼だと叱られることが多々あります(;^_^A)

今回の事例から「立場」を考える

あらためて、表題の台詞は、①職場で、②同僚(M子さん)から、③「イベント会場に行かなければもらえないCD引換券」を差し出されて言われた言葉です。言ったほうは「私のために受け取ってきてください」という言ったほうの恩恵の意味で言っていたのに、言われたほうは「あなたに引換券をあげます」という言われたほうの恩恵の意味と解釈しました。

例えば現在において上司が部下に「おい、昼休み外に出るんなら、ついでの俺のタバコ買って来てくれ」と言えば、これはパワハラともとらえられかねません。上司が部下に言ってもおかしいことを、M子さんが言うはずがないと考えたわけです。

ここから考えられることとして、おそらくは「場」について、双方の認識に齟齬はなさそうです。私が今回の最も大きな齟齬と考えているのは、実は2番目の要素である「立場」です。前回は③に沿って言い換えをしましたが、そもそも自身が頼まれる立場にないという認識を持っているなら、誤解は解消されません。

そうすると、②の認識のずれが、③の持つ意味の齟齬として現れたと考えられます。

人によって立場の見え方が異なる

今回のポイントの一つとして、双方が女性ということがあるのではないかと思われます。というのは、女性は上下関係を嫌い、横並びの関係を良しとする傾向があるからです。

そうすると、組織で働く経験の長い御手洗さんには「年上⇔年下」=「目上⇔目下」という意識が強くても、若いM子さんには「同僚」という意識しかなかった可能性があるのです。何かを頼むというのは、(もしそれが自然な笑顔だったとするならば)「仲良しアピール」だった可能性すらあるかもしれないと思うのは考えすぎでしょうか。

自分がこうあるべきと思っている人間関係と実際が異なるのは居心地が悪いものです。仕事上でも誤解が発生すれば、業務効率に影響する恐れもあります。これは、二人だけの問題ではありません。大事おおごとにする必要はありませんが、可能なら、上司や先輩など、信頼できる人に相談したほうが良いようにも思われます。
最終的には、もっと互いを知ってその齟齬を解消できるのが望ましいですよね。もしすり合わせる機会があれば、その機会を積極的に生かしてください。

それでは、また。

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のどか
世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。