デモクラシーフィットネスと敬語
先日、デモクラシーフィットネスなるものを知りました。
デモクラシーフィットネスとは
「デモクラシーを維持し、評価し、発展させ、次の世代につなげるため」デンマークで生まれたコミュニケーションスキルのレッスンのこと。
セミナーで一回聞いたからできるようになるものではなく、フィットネスクラブに通って筋トレを行うように、デモクラシーに必要ないろいろな考え方やスキルを、筋肉のように鍛えていくという考え方が新鮮でした。
主催者のFacebookをご紹介します。
どんな筋肉があるのか
では、デモクラシーに必要な筋肉、”デモクラ筋”にどのようなものがあるのでしょうか。それが下記です。
・共感筋
・深聴筋
・意見筋
・発言筋
・反対表明筋
・おとしどころ筋
・巻き込み筋
・行動筋
なるほど、このように列挙しただけで、なんとなくデモクラシーの目指すものがイメージできます。
単に多数決が民主主義ではないということですね。
私は敬語の講座を開催していますが、そもそも「敬語」はツールなので、「デモクラシー」に相当するような概念ではありません。では日本では何が相当するかと言うならば、聖徳太子が憲法の最初で「和を以って貴しとなす」と定めたように、「和」という言葉が来るのでしょう。このように考えると、「敬語」を次のように規定できるかもしれません。
敬語とは
人と人との和を保つことを目的として使用される表現上の配慮の一つ
敬語筋は何だろう?
「敬語」を上記のように規定したうえで、敬語を使用するにあたり必要な「敬語筋」を、今、思いつくまま挙げてみます。後から改修・改編が大幅に必要になることは覚悟しておくとしましょう。
・相手を尊重する筋肉
相手の意見/判断などを受容する力
無理に踏み込もうとせず、相手の領域を尊重する力
相手の準拠枠に沿って伝える力
・主体的に生きる筋肉
事実を肯定的に受容する力
自分の気持ちや考えに気づく力
自分を守り、相手と距離を取る力
今伝えるべきことを取捨選択する力
自分の未来に責任を持つ力
・客観的に状況を把握する筋肉
上下
距離
場の状況
事の重大性
互いの責任範囲
・言葉を紡ぐ筋肉
自分の伝えたいことと言葉がぴったり合っているかを確認する力
相手に伝えたくない意味内容が含まれていないかを確認する力
整理の仕方にはまだまだ改善の余地がありそうですが、それでも敬語を使いこなすということがどういうことなのか、少しイメージがつくでしょうか。
文法は敬語の要素の一つ
「敬語を勉強する」というと、「文法を勉強する」と思われがちですが、文法は言葉を紡ぐ筋肉のうちのほんの一要素に過ぎません。ましてや「フレーズを覚える」ことは敬語の目指すところから遠ざかってしまうことすらあるかもしれません。
型から入り、心を知る
では文法を学ばずに敬語を使えるようになるかと言えば、もちろんそんなことはありません。最初はフレーズを思えるところから入ったほうがよい場合もあるでしょう。ただ敬語の勉強をするとき、文法だけで終わらせず、そこにある敬意を理解してほしいと思います。
相互尊重が前提
そして、敬語は、一人が使っても「和」を実現することはできません。
敬語とは互いが「和」を目指して使う、「相互尊重」が前提となる言葉です。
だからこそ、一人でも多くの人に敬語を使いこなしてほしいと思います。
自分から使う
一方で、失礼な相手を尊重に値しないと切り捨てぞんざいに扱うのは敬語の目指すところとは異なります。
相手が自分を尊重していないように感じても、まずは自分から敬意を払います。
人間関係においてボタンの掛け違いはいつでも起こりやすく、もしかしたら自分が気づかないうちに相手に失礼な態度を取っていたかもしれませんし、相手はあなたの知る由のない過去の経験から自分を守ることに必死なだけかもしれません。
敬語を使うのは、相手の敬意に応える受身な姿勢の表れではありません。
”私が”、”あなたと”良い関係を築きたいからです。
敬語は、相手との間に壁を作ることなく、距離を取ることで自分を守ることができる言葉です。自分が傷つかず、相手を立てることができる、ほどよい距離を保ちましょう。
それでは、また。
世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。