『ご利用しやすい』~偽敬語ハンター参上!
どうでしょうか、今回の敬語。
元の文章は、駅に掲示されたお知らせです。
別におかしくないのではないかと感じる人も多いのではないでしょうか。
写真から判断するに、乗降口の段差をなくし、ホームとの空間を狭めるよう改善したということですね。
「お使いのお客さま」は敬語の使い方として問題ありません。
問題は「ご利用しやすいように」です。
「ご〇〇する」は「〇〇する」人を立てない敬語(受け手尊重)
さて、この敬語の持つ意味から、説明していきましょう。
動詞を「ご」と「する」で挟んだ「ご〇〇する」は、「〇〇する」人を立てない」敬語です。(「お」と「する」で挟んだ「お〇〇する」も同じです)
「立てない」というと分かりづらいのですが、言葉を換えると、「行為者の側が恩恵を受け責任を持つ」という意味です。
例えば、「お借りする」と言った場合、恩恵を受けていることの謝意に加え、「借りた方に責任がある」(この場合、責任を持って管理する)という意味を追加しています。
それが、「お貸しする」であれば、通常なら借りる側に恩恵があるので「貸してやる」立場になるはずですが、この敬語(受け手尊重)を使うことによって、「間違っても貸してやるのではない。貸す側が望んで行うことであり、その責任も貸した側にある」という意味です。つまり、この場合は「借りた側(=受け手)が無くそうと汚そうと、その責任を問わない」ということです。
<休憩コーナー>
ひるがえって「ご利用する」を見る
「ご利用しやすい」は「ご利用する」を形容詞化したものなので、ここからは動詞の「ご利用する」について説明していきます。
上記で見てきたように、「ご利用する」は「利用する人」を立てない敬語(受け手尊重)であり、その意味するところは「利用してやるのではない。利用する側が望んで行うことであり、その責任も利用した側にある」というものです。
本来であれば客である利用者を立てるべきなのに、これでは適切な敬語の使い方とはいえません。
客を立てる敬語を選ぶなら、「ご」と「になる」で動詞(※名詞化された動詞)を挟んだ「ご利用になる」とするのがいいでしょう。形容詞化した場合は「ご利用になりやすい」です。
それではまた。
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