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The Cure:Album04(ポルノグラフィ:Pornography)& Deluxe Edition

「この画用紙にあなたの好きな絵を描いていいのよ」と言うのに、この少年は黒のクレヨンしか使わないで、なんだか奇妙な模様しか描かない。
それも線でしか描かないもんだから「じゃあ今回は色を塗りましょう。この何色もある中から、あなたの好きな色を塗らないといけません」と課題を出すと、この少年は描いた絵を赤く塗りはじめた。
その赤は鮮やかな赤ではなくて、まるで静脈の血みたいなどす黒い赤で、それも絵の全部をその色に塗りつぶしてしまった。その様子を見た私は思わず「もうこれはダメかもしれんね」と言った。(創作)

ディープなキュアーファンには今作が一番好きという人も多い。
アルバム4枚目にしてひとつの到達点であり、行き止まりでもある。
私は落ち込むとこのアルバムを聴きまくる。不思議とどん底に足が着いたような気になって、ゆっくりと浮上しはじめる

このセッションでバンドは崩壊寸前となり、激しい薬物使用、バンドの内紛、フロントマンのロバート・スミスの鬱病が、アルバムの音楽的、歌詞的な内容を盛り上げることになった。ポルノグラフィーは、セカンドアルバム『セブンティーンセカンズ』(1980年)から始まった、キュアーの初期の暗く陰鬱な音楽的段階の結論を表している。

https://en.wikipedia.org/wiki/Pornography_(album)

UK(イギリス)チャートでは今までで最高の8位を記録。ニュージーランドチャート9位とオランダチャート17位とこちらは前作より少し下ぐらい。
しかし、病めば病むほどチャートで上がってくるUKチャートが、なんだか恐ろしい。(かたや、日本では薬師丸ひろ子のセーラー服と機関銃やあみんの待つわが大ヒット)

●血ぬられた100年:One Hundred Years

アルバムの幕開けの曲。
「It doesn’t matter if we all die」「私たちが全員死んだとしても、どうだっていいこと」これ以上ないってくらいの明るい歌詞から試合開始です。
はじめの唸り声みたいなギターフレーズが印象的な曲。これはチョーキング(弦を押し上げて弾いている)だということを、私はこの曲ではじめて知りました。
当時「Please love me. Meet my mother」の歌詞を辞書引いて一生懸命訳していた私は「お願いだからボクを愛して、ひき肉の母」と訳して(Meet=会う なので、私の母に会って が正解)、間違いを指摘した友人から「これはこれで、ある意味正解かも」と言われる。

ロバート・スミスはアルバムの構想について、「当時の私には2つの選択肢があり、それは完全に屈服する(自殺する)か、レコードを作って自分の中から吐き出すかのどちらかだった」と語っている。また、「本当にこれでグループは終わりだと思った」とも言っている。
その時期、スミスは精神的に疲れていた。「1981年から1982年にかけて、私は本当に落ち込んだ精神状態だった」。バンドは「年間約200日ツアーをしていて、他のことをする時間が全くなかったので、すべてが少し過剰になった」。

https://en.wikipedia.org/wiki/Pornography_(album)

●ハンギングカーデン:The Hanging Garden

アルバムからシングルカットされた、ノリのいい方向の曲です。
アルバムほとんどの曲のドラムが、大太鼓のバチみたいので「ボコボコ」と叩いてます。
「病んでいてもこんな曲を作れるのか」と「病んでいないとこんな曲つくれない」という両方が、このアルバムすべての曲に感じられてしまうのでした。

このアルバムのレコーディング・セッションについて、スミスは「多くのドラッグが関わっていた」と述べている。 バンドはLSDを摂取し、大量のアルコールを飲み、節約のためにレコード会社の事務所で寝た。ミュージシャンたちは通常8時に現れ、正午に「かなり錯乱」して帰っていった。
スミスは次のように語っている。「私たちは、道の向こうの酒屋と協定を結んでいて、毎晩、彼らが物資を持って来てくれたんだ。私たちは、何も捨てないと決めたんだ。隅のほうにゴミの山を作ったんだ。それはどんどん大きくなっていった」
スミスは「当時、私は信じられないほど不愉快で、ひどい、自己中心的だったので、例外なく、すべての友人を失った」と述べている。また、このアルバムで「自分の性格の自己破壊的な要素をすべて、何かをすることに注ぎ込んだ」とも述べている。

https://en.wikipedia.org/wiki/Pornography_(album)

▼アウトテイク収録のデラックスエディション
いくつかのキュアーのアルバムは、後から『デラックスエディション:Deluxe Edition』というのがリリースされていて、アルバムに入らなかった曲や、まだ制作途中の音(デモバージョン)が収録されています。
『The Cure/ポルノグラフィ (デラックス・エディション)』にはアウトテイクを1時間以上(本編より長い)収録していて、当時の彼らのぶっ壊れていた様子を、心ゆくまで聴き入っていただけます。

●ポルノグラフィ:Pornography

こちらはアルバムからではなくてライブからです。
アルバムの最後に入るこの曲は混線してるラジオみたいな音が入って、暗闇で聴くと本当にヤバいところに連れていかれます。
ライブはかなり最近のもので、いくつもの危機を乗り越えた健康なロバートさんが演奏しています。

リリース後、ベーシストのサイモン・ギャラップがバンドを脱退した。
リリース時の批評家からの評価は低かったが、ポルノグラフィーはキュアーの最も人気のあるアルバムとなり、イギリスのアルバムチャートで8位を記録した。
その後、批評家からの称賛を得るようになり、現在ではゴシック・ロックとして知られる音楽スタイルの発展における重要なマイルストーン(重要な中間目標地点
)と見なされている。

https://en.wikipedia.org/wiki/Pornography_(album)

ロバート・スミスの歩んだ「自分たちにしか出せない音」の方向は、このアルバムで一つの到達点に辿り着きました。バンドのメンバーは全員脱退して、残ったのはロバートスミスだけです。

自らを投げ出すように音楽の未踏の地に踏み込んで行って、なにかに確実に触れたような気もするが、その代償として精神も身体もボロボロになってしまった。
ここまでマイナスに大きく振れた振り子は、同じくらい大きくプラスに振れることもできるのかもしれない。
でも、表現するバンドとしてのキュアーを失ってしまったロバート・スミスは、ここからどこに歩いていこうとするのだろうか(というか、歩くことができるのか?)。つづく。

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