The Cure:Album04(ポルノグラフィ:Pornography)& Deluxe Edition
ディープなキュアーファンには今作が一番好きという人も多い。
アルバム4枚目にしてひとつの到達点であり、行き止まりでもある。
私は落ち込むとこのアルバムを聴きまくる。不思議とどん底に足が着いたような気になって、ゆっくりと浮上しはじめる
UK(イギリス)チャートでは今までで最高の8位を記録。ニュージーランドチャート9位とオランダチャート17位とこちらは前作より少し下ぐらい。
しかし、病めば病むほどチャートで上がってくるUKチャートが、なんだか恐ろしい。(かたや、日本では薬師丸ひろ子のセーラー服と機関銃やあみんの待つわが大ヒット)
●血ぬられた100年:One Hundred Years
アルバムの幕開けの曲。
「It doesn’t matter if we all die」「私たちが全員死んだとしても、どうだっていいこと」これ以上ないってくらいの明るい歌詞から試合開始です。
はじめの唸り声みたいなギターフレーズが印象的な曲。これはチョーキング(弦を押し上げて弾いている)だということを、私はこの曲ではじめて知りました。
当時「Please love me. Meet my mother」の歌詞を辞書引いて一生懸命訳していた私は「お願いだからボクを愛して、ひき肉の母」と訳して(Meet=会う なので、私の母に会って が正解)、間違いを指摘した友人から「これはこれで、ある意味正解かも」と言われる。
●ハンギングカーデン:The Hanging Garden
アルバムからシングルカットされた、ノリのいい方向の曲です。
アルバムほとんどの曲のドラムが、大太鼓のバチみたいので「ボコボコ」と叩いてます。
「病んでいてもこんな曲を作れるのか」と「病んでいないとこんな曲つくれない」という両方が、このアルバムすべての曲に感じられてしまうのでした。
▼アウトテイク収録のデラックスエディション
いくつかのキュアーのアルバムは、後から『デラックスエディション:Deluxe Edition』というのがリリースされていて、アルバムに入らなかった曲や、まだ制作途中の音(デモバージョン)が収録されています。
『The Cure/ポルノグラフィ (デラックス・エディション)』にはアウトテイクを1時間以上(本編より長い)収録していて、当時の彼らのぶっ壊れていた様子を、心ゆくまで聴き入っていただけます。
●ポルノグラフィ:Pornography
こちらはアルバムからではなくてライブからです。
アルバムの最後に入るこの曲は混線してるラジオみたいな音が入って、暗闇で聴くと本当にヤバいところに連れていかれます。
ライブはかなり最近のもので、いくつもの危機を乗り越えた健康なロバートさんが演奏しています。
ロバート・スミスの歩んだ「自分たちにしか出せない音」の方向は、このアルバムで一つの到達点に辿り着きました。バンドのメンバーは全員脱退して、残ったのはロバートスミスだけです。
自らを投げ出すように音楽の未踏の地に踏み込んで行って、なにかに確実に触れたような気もするが、その代償として精神も身体もボロボロになってしまった。
ここまでマイナスに大きく振れた振り子は、同じくらい大きくプラスに振れることもできるのかもしれない。
でも、表現するバンドとしてのキュアーを失ってしまったロバート・スミスは、ここからどこに歩いていこうとするのだろうか(というか、歩くことができるのか?)。つづく。