「わが町、大豊町」ポスター作りの話
私のところに話がきた時には、もう明後日には版下を印刷に出すみたいなタイミングでした。
写真が敷き詰められている上に大きく文字が載るという、大まかな構成は決まっているようであったので、あとはその構成に沿ってバーツを当てはめていけばいいくらいであれば、なんとか間に合うかもしれない。
でも、写真の配置によってはわけわからなくもなるし、意図しない方向に見る側が引っ張られてしまうものになる可能性もある。
とりあえずはもらった写真データを配置してみて、あとは文字の色とフォント選びで全然イメージが違ってくるので、慎重に選ぶ。
それでその日のうちに、はじめの案として書き出してみた画像を依頼者に送ってみた。「この写真だけ目立ちすぎる」みたいな指摘はあったが、どうやら出したイメージはそんなに大きく違ってるということもないらしくて、少しホッとしてその日は終わった。
しかし、次の日に入ってきた写真データで内容がひっくり返った。
この日入った30点ほどの写真データをすべて使うようにとのことで、そうなると写真の配置については全部やり直しになってしまう。
この時点で午前の9時を過ぎていて、納品は夕方であるので、ちょっと間に合わないかもしれないかもと焦る。
なんとか再配置をしてみて、それで依頼者に書き出した画像を送ってみる。大まかにはOKのようで、焦ったせいか重複して配置してしまった写真を修正した。
これでなんとか納品かと思ったら、2つのテキスト文の追加が入った。
一つは「イベントは中止になりました」という補足のような内容であったので、配置もフォントもさほど問題なかった。しかし、もう一つは内容的にまったくの新規追加になるので、フォント選びも再考が必要だし、どこにどの大きさで配置するかも考え直す必要があった。
しかも、フォントだけでなく色も選ぶ必要がありそうであった。
そこで依頼者と相談したところ、赤い文字というのが出てきた。でも全体の構成としては、赤い文字ではすべての注目を持っていかれてしまいかねない。そして背景に配置した写真にも目がいかなくなる可能でも出てくる。
依頼者の意向は最優先ではあるが、作ったものが壊れてしまうような場合は、なんとかギリギリまで自分の意見を言わせてもらうことがある。すべて言われるままに作ってしまうと、せっかくの制作物が『伝えたいことも伝えられないもの』になってしまう場合もありえる。
制作中にはなにも言わないで、依頼者の言われるままに制作し終わって、後から「そうなるんじゃないかと思ってたんです」とか言いたくないのである。
制作していてよくあるのが、「ここが空いてるから、なにかで埋めて欲しい」というものだ。「空いている」のではなくて「空けている」のである。空いているところがあるからから、見る側が入っていけるのであるので、そこは実はなにもないようで重要だったりするのであるが、見た目にはあまりわからなかったりする。
そこでメールではなく電話で少し依頼者さんと話した、その結果依頼者さんにわかってもらえた。依頼者さんに理解があって本当によかった。まれに怒り出す依頼者さんだっているので、こういう場面はかなり慎重になるし、緊張する。
という流れでこのポスターが完成しました。
各所で評判がよかったようで、本当に関われてよかったと思いました。