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The Cure:Album03(フェイス:Faith)& Carnage Visors

キュアーの3枚目のアルバムのタイトルは信仰(Faith)です。
同じ時期のヒットチャートを見てみると、イギリスではクイーン(Queen "Flash" )とかフィルコリンズ(Phil Collins "In the Air Tonight" )とかで、アメリカではキムカーンズ(Kim Carnes "Bette Davis Eyes")とかホール&オーツ(Daryl Hall & John Oates "Kiss On My List")とか、色鮮やかなポップソングの時代
そこにキュアーは、流行りなんてガン無視でギリギリまで色を剥ぎ取ったようなアルバムを出したのでした。

Faithの多くはスタジオで書かれた。アルバムに収録されている「All Cats Are Grey」と「The Drowning Man」の少なくとも2曲は、マーヴィン・ピークの小説「ゴーメンガスト」からインスピレーションを受けたものであった。FaithはCureのアルバムで初めて6弦ベースギターをフィーチャーした。"All Cats Are Grey "ではスミスがキーボードとピアノを担当し、ギターは全くフィーチャーされていない。

https://en.wikipedia.org/wiki/Faith_(The_Cure_album)

2枚目(セヴンティーン・セコンズ:Seventeen Seconds)は、同じ陰鬱な雰囲気の楽曲を集めたアルバムという感じであったのが、3枚目(フェイス:Faith)はその先に進んでいました。
今作では一曲一曲があるべき位置にあって、アルバム全ての楽曲のリズムや流れによって『あるひとつの世界』が作られているというものでした。
私にとっての今作は「音楽にこんな世界があったのか?!」ぐらいの衝撃で、一時的に聞くだけの流行歌(はやりうた)みたいな曲ではなくて「深く聴き込む」というのをはじめて知った作品でした。

UK(イギリス)のチャートでは前作より上位の14位
(前作は20位)を記録。なんとニュージーランドではチャート1位(オランダチャートは9位)です。かたや、日本のザ・ベストテンでは松田聖子やたのきんトリオが大人気の時期でした。

●プライマリー:Primary

無垢な子供たちはずっとそのままでいれたらいいのに、成長をしてしまう。
世の中のことを知れば知るほど、なんだか薄っぺらくなっていく。

このアルバム唯一と言っていい、テンポの早い曲。
「大人になるって汚れていくことだよね」ソングで、この歌詞からは、若くしてやりきって燃え尽きる方向に進んでいるのが感じられる。

●アザー・ボイス:Other Voices

「あなたはいつも間違っている。心を入れ替えろ。」とか、
「クリスマスには帰ってきて君に会わないといけない。
そして笑わないといけない。」とか、曲に合った歌詞で、
その内容からは、作者がかなりヤバい状態であるのが感じられる。

このユラリユラリとしたテンポが心地よくて、どんどんとこのアルバム世界に入り込んでしまいます。

サウンドトラックの『Carnage Visors』

インストゥルメンタル曲の「Carnage Visors」(カセット盤にのみ収録)は、サイモン・ギャラップの弟であるリック・ギャラップによる短編映画「Carnage Visors」のサウンドトラックであり、1981年のピクチャー・ツアーでサポートバンドに代わってショーの最初に上映され、複数の人形が異なる位置や姿勢でアニメーションするものであった。 このフィルムはその後消滅し、スミス、ロル・トルハースト、サイモン・ギャラップのみがそのコピーを所有している。

https://en.wikipedia.org/wiki/Faith_(The_Cure_album)

カセットテープのA面が『フェイス:Faith』でB面がインストゥルメンタル曲の『Carnage Visors』でした。
このループは中毒性が高く、私なんかは当時住んでいた北海道で、夜から朝方までカセットを聴きながら、フワフワと降ってくる雪の中を歩いていました。はまると社会復帰できなくなるかもしれないので、適量をお楽しみ下さい。

●フェイス:Faith

こちらはアルバムバージョンではなくライブからになります。
このライブ作品の『The Cure in Orange(1987)』は、当時のキュアーの勢いと、遺跡のような会場があまりにはまっています。キュアーのPVも多数作っているティムポープ(Tim Pope)監督の傑作ライブ作品です。(ネットで検索したら見れます。私はLD持ってます。DVDは出てないようです)

はじめのうちは全く印象に残らないかもしれないですが、この曲の繊細なギターを聴き逃すことなかれです。
最初は「聴いてたら寝てしまった」というのは、ある意味正しい楽しみ方かもしれなくて、そんな感じで何度か聴いているうちにだんだんと「なんかこれって心地いいかも」などと思えてくるようだと、あなたにはキュアーが合うのかもしれません。


レコード会社的にはもう「ロバートくん、暗いのもいい加減にしたまえ」って感じで。こんな音楽をイギリスの若者が聴いてたら、どんどん希望も労働意欲も失ってしまうかもしれない。
もっとこう「生きるって最高」とか「お父さんお母さん、いつもありがとう」みたいな、「お昼のラジオとかでもオンエアされるような曲を作りたまえ」という感じだったのではあるまいか。
このアルバムの世界を共有できるのは、決して広くはないだろうし、若い世代に限られるであろう(私はずっと好きなままですが)。

ある世界を突き詰めていくというのは同時に、自分を追い込んでいくことでもある。
ロバートスミスとキュアーはなんとなく崖っぷちが見えているにもかかわらず、一部の熱狂的なファンに背中を押されるようなかたちで、引き返すことなく「若くしてやりきって破滅」に突き進んでいくのでした。


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