The Cure:Album11(ワイルド・ムード・スウィングス:Wild Mood Swings)& Galore: The Singles 1987–1997
このアルバムまで前回より今回、今回より次回と着実にセールスを伸ばしてきたキュアーであった(『Disintegration』は売れすぎたので別にして)が、このアルバムでガタッとセールスが大きく落ちた。
聞き手っていうのは気まぐれである。いきなりバンドが売れたりすることがあれば(ニルヴァーナの突然のブレイクとか)、その逆に何故だか全然売れない時もある。実際このアルバムはそこまで悪い内容ってわけでもない気がする。でもこのアルバムの姿勢みたいなものが、コアなキュアーファンからは嫌われそう。
あと、流行り廃りの流れの速さに対して、前のアルバムから4年の間隔も長すぎたのだろう(中学一年が高校二年になれば聴く音楽も全然変わる)。子供が遊んで飽きたお人形をゴミ箱に捨てるみたいな、自然な流れなのかもしれない。
セールスだけがすべてじゃないさ、どんまいロバート・スミス。
●ミントカー:Mint Car
こちらは2枚目のシングル曲。
このあたりの映像をチラッと音楽番組なんかで見て「ああ、またこの感じね」ですぐにはアルバムを買おうともしなかった私(PV監督もティム・ポープではないし)。
もうあの大好きなアルバム『Disintegration』から9年も経っていて、今ではキュアーは「大御所の漫才師のおなじみのネタ」という安定した感じがして、ヒリヒリするような挑戦なんていう雰囲気は全然ない。
今ではこのアルバムも聴けるが、当時は「減量に失敗したボクサーが、お金をばら撒いて試合に勝ってる」みたいな感じがして、どうしても聴くことができなかった。
●The 13th
こちらが1枚目のシングル曲。
そんな悪くないとは思うんだけど。私なんかには「どうしたんだい、あんたのかつてのパンチはこんなもんじゃなかったぜ」みたいな感想である。
どうしても音も映像も、今までの焼き直しに感じられてしまう。今までにない閃きみたいなものもないこんなアルバムだったら、もう出さなくてもいいのではなかろうか。やたらとキュアーが好きなだけに厳しくなってしまう。
初期からキュアーを見てきたファンは同じような感想ではないだろうか。
●ゴーン!:Gone!
4枚目のシングル曲。
このPVはライブツアーのハプニング映像集みたいで面白い。
でもなんか「かつての栄光の日々」みたいで、見てて悲しい。
▼キュアー後半のベスト盤『グロリア:Galore』を発売
このアルバムの翌年に『グロリア:Galore』というベスト盤が出ます。キュアーの後半の『Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me』から『Wild Mood Swings』までのシングルを収録したベスト版で、なんとアルバム『Wild Mood Swings』よりも、このベスト盤の方が売れました。
『グロリア:Galore』のビデオ版には『Disintegration』のPVもすべて入ってるということで、間違いなく買いです(前半の2枚のPV集はレーザーディスクとビデオでした、時代の流れよ)。
● Want
これがこのアルバムの1曲目のライブ版です。
この迫ってくるような感じがいいし、悲しげなメロディーがアガる曲。
この調子でアルバム1枚作ってくれたらよかったのになあ。
次回がこのキュアーアルバム紹介は最後になります。
次のアルバムまでは紹介せねばと思って、ここまで続けてきたのでした。
ということで次回、最終回です。