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『メイドインアビス 烈日の黄金郷(2期 12話)』の3人について

今作はたぶん挑戦してるんだと思う。
きっと今まであるものには満足していなくて、今まであんまり踏み込まなかったとこにあえて踏み込もうとしてるんだと思う。
だから、今まで見てきたような安心できる作品を見たい人は、今作には触れない方がいいと思う。イヤな思いをして後悔するかもしれないから。
それでも少しでも興味をもたれた方は(テレビ版一期から)、是非今作に踏み込んでみて欲しい(原作は漫画です)。

まっさらで見たい人はここから読むのは見てからがいいかと思う。でも私なんかは一回見ただけでは理解不能だったので、これを読んだら少し見やすくなるんではないかということで書きました。だからネタバレしてたらごめんなさい。

今作の登場人物はほとんどが身寄りがない子供や親が亡くなっていたりします。帰るところがなく崖っぷちの人生だから、生きて帰れるかわからない大穴(アビス)の底を目指せるのかもしれません。

●キャラクター01:ヴエコ

ヴエコ

今作のシリーズはじめに出てくるヴエコは身寄りがなく、もらわれた里親からの虐待で子供が産めない身体になっている。
性格は自分の好奇心のまま進んでいく主人公のリコとは真逆のような、自信がなく自分の意思もびくびくしながら伝えるも、他よりも自分の意思を優先することができないような性格の持ち主。ネガティブな引っ込み思案の印象で、陰キャ(陰気な 性格の人)になるのではないだろうか。
明るくて元気の方が誰からも受け入れられる世の中だと思うが、このキャラクターは完全のその逆である。
そして『子供も産めない=生産性のない人間』みたいな扱いで、生きているコミュニティーでは肩身の狭い思いをさせられているようなキャラクターである。
このようなキャラクターをじっくりと描いてくれる作品も少ないので、とても興味深い。

ヴエコは大穴(アビス)に潜る前にイルミューイという少女に出会う。
この少女のイルミューイも子供を産めない身体ということで、彼女も生きているコミュニティーからは相手にされない存在(逆にイルミューイの母はたくさんの人との子供を産んでいる)となっている。
そんなイルミューイが「大穴を進むのに付いていきたい」と言うので、ヴエコは隊を説得して一緒にイルミューイも行くことになります。

●キャラクター02:イルミューイ

イルミューイ

イルミューイがヴエコになつくのはヴエコがお母さんと同じ匂いがするからで、これはお母さんがたくさんの人と交わった匂いでもあります(ヴエコはそういう役割を引き受けているのかも?)。
もうこの辺りで「子供の見る冒険活劇」ではないのがわかると思います。

イルミューイの身体は別のものになっていき(原生生物「水もどき」の寄生症状のため)、その身体から人間ではなく別の生き物を産み落とす。でも生まれた生き物は栄養を取り込む機能がないため、数日で死んでしまう。
これはどうにかしようにもどうにもならない。衰弱していく我が子に何もできなくて次の日には亡くなっていく。イルミューイは我が子が亡くなるたびに泣き叫ぶ。

ここでイルミューイの産んだ生き物を食べると、どうにもならなかった病気(寄生症状)が改善することがわかる。隊の人たちは生き残るためにイルミューイの産んだ生き物を産んだら取り上げて食べる。

そんなイルミューイが最後に産んだのがファプタという生き物。今までの栄養を取り込む機能がない生き物とは違い、食べることも動き回ることもできる。

そして、イルミューイはもう人という形でなく、巨大なひとつの村という存在になり、イルミューイの大きな柱の中の空間で村人は生きていくことになる。
予告の映像で柱みたいなもの(=イルミューイ)の中に入っていくのが描かれてます。

●キャラクター03:ファプタ

ファプタ

産んでも産んでも子供を取り上げられる母のイルミューイの無念さを感じて産まれてきたファプタは、その思いを引き継ぎ『村を壊して母を解放する』というのが生きる目的になっている。

今まで他の作品で描かれてきた『オヤゴロシ(親殺し)』の動機は「わずらわしい親から自由になる」とかであった。しかし今作の『オヤゴロシ(親殺し)』はそうではない。
今作でファプタが村(=母のイルミューイ)を壊す動機は「さんざん利用されてきた母親が負わされている役目から解放する」というものである。
私はこんな形の『オヤゴロシ(親殺し)』なんて思いもしなかった。親のことをなによりも大事に思っている。だから村を壊す(親を殺す)のである。

ここからは村を壊そうとするファプタVS生きていく村を守る人たちの戦いになり、ここからはアクションシーンの連続になってくる。


今作はヴエコやイルミューイのいる隊が、決死の覚悟で大穴(アビス)を進み、新たな生きる地にやっと辿り着いて生きていくお話である。そして主人公であるリコたちも同じ地に辿り着いたが、この時にはかつて辿り着いた隊は、もう人ではなく別の生き物になっている。

もう初見ではお話についていくのがやっとで、(情報量が多いせいか)もう自分がどう思うかなんてよくわからなかった。2回目ではなんとかお話についていけましたが、まだそんなにわかっていないと思いますのでまた見る予定です。
いくつか見た人の感想にあったのが「興味もない村の成り立ちなんか面白くない」というのもありました。たぶん今までのメイドインアビスのようなわかりやすい話ではないし、感情移入もしやすいお話ではないにではないかと思います。

メイドインアビスっていうのは『自分にとって大切な存在が自らを葬り去ることを望んでいる』ってお話なのかと思います。大切だから抱きしめるけど、強く抱きしめすぎて潰れちゃう、そういう残酷さのあるお話なのだとお思います。
もっとわかりやすくて楽しくて安全な作品はいくらでもあります。そういう作品に飽き足らない人はどうしてもこの大穴のアビスを進んでいくのかもしれません。


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