アラン・パーカー監督作品を初めて見る方への3作品(映画の紹介)
アラン・パーカー監督が2020年の夏に亡くなっておられました。
この監督の作品というのは、しっかり内容の入った作品でありながら、作風が毎回全然違ったりするという。「この作品とこの作品が同じ監督なの?」と言ってしまうような作風であった。
アラン・パーカーという人が、映画界で最初に注目されたのが『小さな恋のメロディ(1971年)』の脚本でした。この作品は11歳の男の子が同じ学校に通う女の子に恋をして結婚式をあげるという、「大人社会からの独立戦争」的なお話で、いってみれば今ある社会体制や政治体制に対して反対して、変革しようとするお話です。
この反体制のテーマというのは、アラン・パーカーのすべての作品に共通して流れていると思います。
『小さな恋のメロディ』ビージーズ: https://youtu.be/wC9035e_i8c
(余談ですが、この作品はアメリカやイギリスでは人がヒットせず、日本や、アルゼンチン・チリなどラテンアメリカ諸国では大ヒットしたそうです)
最初にアラン・パーカーの作品見て見てみようかなという人には、『フェーム (1980年)』 がいいかもしれない。これはミュージカル青春映画で、歌もダンスも見ていて楽しいし、若い時に挫折や成功が描かれています。
『フェーム』 アイリーン・キャラ: https://youtu.be/H1gMQ_q3FSM
内容がガッツリ入ってて、少しショッキングかもしれないが、比較的見やすい作品は『ミシシッピー・バーニング(1988年)』かと思います。
黒人への人種差別を描いた作品ですが、FBI捜査官の2人が魅力的なのです。キューピーさん(ジーン・ハックマン)とインテリメガネさん(ウィレム・デフォー)の対照的なコンビが、3人の公民権活動家が行方不明を捜査していきます。
『ミシシッピー・バーニング』予告: https://youtu.be/6eRcgaBxXoo
アラン・パーカー監督の最後の作品はあまり知られていなくて、私も今回初めて見ました。タイトルは『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル (2003年)』です(もう少し日本語タイトルを工夫して欲しい)。
タイトルにもなってるデビット・ゲイル(ケヴィン・スペイシー=『セブン』の犯人役の人)は大学教授だったが、殺人の容疑で数日後に死刑される予定。
でもって、そのデビット・ゲイルの記事を書くために面会するのが女性新聞記者のビッツィー・ブルーム ( ケイト・ウィンスレット=タイタニック、エターナル・サンシャイン、コンテイジョンなど)で、相棒の若い男性記者と2人で”本当に殺人をしたのはこの男であるのか?”を探っていく。
内容としては死刑制度ではあるんですけど、それはあまり意識しないで見てもらった方がいいと思います。というのもこのお話は頭で考えずに、”本当に殺人をしたのはこの男であるのか?”を2人の新聞記者と探っていくように見ていくと、最後はあっと驚いてしまうという、よくできた脚本の作品で、とても面白かったのです。
『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』予告: https://youtu.be/uSjRqotDYGE
この作品を見て思ったのですが、今では「内容があるということで、逆に見てもらえない」という現象が起きてしまっているような気がします。
例えば『羊たちの沈黙』とか『セブン』とかのヒット作品の犯人は、サイコパスとか生まれつき異常者だったとかで殺人したりします。
原因や動機がわからないことで、自分もいつ巻き込まれるかもしれないと、怖さが増したりするのです。
それより以前の作品は、殺人する人の持つ背景や動機があって、それが映画の内容になってたような気がします(貧困が原因で裕福な人の子供を誘拐するとか、虐待を恨んで親を殺すとか、世の中に訴えたいことがあって殺人するとか)。
もう今では、そういう内容がある作品っていうのは、「なんか見てて説教されてるような気がする」とか「なんか難しくて、言ってることがよくわかんない」とかになってきてるのではないかと思ったりします。
なので『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』みたいな作品は、「えーっ、死刑制度の話でしょ、なんか重たそうで見たくないや、あんまり考えたくないし」とか避けられる時代の流れみたいなものを感じるのでした。
見る前にそんなふうに思って見てないという人がいたら、「騙されたと思って、是非一度見て下さい」と私は伝えたいです。
かつて私は、『内容があっての作品』だと思っていましたが、今は『内容があまりうるさいと「なんだかうざい」』とかになってきて、そういう時代になって、アラン・パーカー監督も2020年に亡くなってしまいました。
私の個人的に見て欲しいアラン・パーカー作品は『ピンク・フロイド ザ・ウォール(1982年)』(社会風刺ミュージックビデオ的地獄絵図)と、『バーディ(1984年)』(ベトナム戦争で壊された2人の青春思い出話)と、『エンゼル・ハート(1987年)』(悪魔に呪われた南部ニューオリンズめぐり)です。
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