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現場で使えるエネルギー代謝③ 解糖系 高強度運動の要

第1回
現場で使えるエネルギー代謝① ATP 人の体を動かすエネルギー運搬体

第2回
現場で使えるエネルギー代謝② ATP-CP系

第3回
現場で使えるエネルギー代謝③ 解糖系

第4回
現場で使えるエネルギー代謝③ 酸化系

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■2番目に早いエネルギー供給機構

急な高強度運動で最も素早くATPを産生するのはATP-CP系でした。
2番目に早くATPを産生できるのが解糖系です。

乳酸が作られるのも解糖系の特徴で、この乳酸をどう活かすかが高強度スポーツでの高いパフォーマンスの鍵になります。

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■解糖系は糖を利用する

解糖系はその名の通り糖を利用したエネルギー代謝機構です。糖を分解する過程でATPが産生されます。
糖は食事から摂取したり、体内で作り出したり(糖新生)することで体内で利用することができます。

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解糖系は以下の3つの過程で考えると整理しやすいと思います。

①糖の吸収とグリコーゲンの貯蔵
②グリコーゲンの分解と解糖系の開始 → ATP産生

③ピルビン酸・乳酸の産生と酸化系(ミトコンドリア)での利用


シンプルな図で表すと以下の流れです。
この大まかな流れを元に詳細を解説していきます。

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①糖の摂取からグリコーゲンの貯蔵

食事から摂取される糖は消化の過程でグルコースやフルクトースなど単糖類へ分解され吸収されやすい形になります。
吸収されたグルコースは血中を移動し肝臓や筋に取り込まれ再度グリコーゲンとして合成され貯蔵されます。グリコーゲンはグルコースが多数結合した多糖類です。

グリコーゲンとして貯蔵することでグルコースとして貯蔵するよりもより多くの量の糖を貯蔵することができます。

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筋に貯蔵されたグリコーゲンを筋グリコーゲンといい、肝臓に貯蔵されたグリコーゲンを肝グリコーゲンといいます。



②グリコーゲンの分解と解糖系の開始 → ATP産生

筋や肝臓に貯蔵されたグリコーゲンは利用される時にそれぞれ再び分解されます。

筋グリコーゲンは筋内で分解・リン酸化されグルコース6リン酸となります。
肝グリコーゲンは肝臓で分解されたのち血中にグルコースとして放出されます。そして血中のグルコースは筋内へ輸送され、そこでリン酸化されたのちグルコース6リン酸となります。

「トレーニング指導者テキスト 理論編」によると

"解糖の第1段階では、筋内に貯蔵した筋グリコーゲンや、筋外から筋内に取り込まれたグルコース(血糖)を分解する。筋グリコーゲンは特に速筋線維に多く、遅筋繊維ではグルコースを積極的に取り込む。"

引用:トレーニング指導者テキスト 理論編. p.93

とされており、それぞれのグリコーゲンが活躍する場は異なるようです。

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グリコーゲンの分解によって生じたグルコース6リン酸は解糖系の過程により最終的にピルビン酸へと分解され、その過程でATPが産生されます。
このATPを運動時のエネルギー源として利用します。

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グリコーゲンの分解からピルビン酸の生成までは酵素の働きによって行われ、酸素を必要としません。これはATP-CP系と同様です。

そのためATP-CP系や解糖系によるATP産生を無酸素性エネルギー代謝(嫌気性エネルギー代謝)と呼ぶことはあり、これらのエネルギー代謝より働かせるような運動は無酸素性運動運動と呼んでいます。



③ピルビン酸・乳酸の産生と酸化系での利用

こからの乳酸の話に移りますが、乳酸に関してより詳しい内容を知りたい方は以下の書籍の著者である東京大学教授の八田先生の著書や論文を読むことをお勧めします。
ここでは以下の書籍を参考に乳酸の利用に関して図を交えながら解説します。


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解糖系により最終的に生成されたピルビン酸は酸化系のエネルギー代謝機構(ミトコンドリア)で利用されATP産生に貢献します。つまり解糖系は無酸素性のエネルギー代謝機構でありながら、有酸素性のエネルギー代謝の経路にも貢献しているということです。

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ピルビン酸は酸化系の経路で利用されない場合は乳酸となります。

低強度運動では解糖系の働きはそれほど高くないため、利用されるグリコーゲンは少なく、生成されるピルビン酸も少なくなります。
そのため生成されるピルビン酸のほとんどを酸化系で利用することができ、作られる乳酸も少なくなります。

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解糖系でたくさんATPを産生するような高強度運動を行なった場合には、ピルビン酸の量も増えます。すると酸化系の経路でピルビン酸を利用し切れず、余ったピルビン酸が乳酸となります。

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過去には生じた乳酸は疲労物質だと考えられていました。しかし近年では乳酸はエネルギー源として考えらえるようになっています。

乳酸は再びピルビン酸へ戻ることで酸化系で利用することができます。
一度乳酸になったのに再びピルビン酸に戻ることは無駄手間に感じます。それなら乳酸を作る意味がありませんね。

しかしそれには理由があります。

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筋グリコーゲンと肝グリコーゲンの話でも書いたように、筋グリコーゲンは速筋線維に多いです。
解糖系が働くような高強度運動では速筋繊維の動員も高まり、筋グリコーゲンを多く使ってATPを産生します。その結果速筋線維では乳酸も多く産生されます。

しかし速筋線維には、酸化系の働きで重要になるミトコンドリアは少ないです。

そこで速筋線維で産生された乳酸がよりミトコンドリアの多い心筋(心臓の筋)や遅筋のミトコンドリアへ運ばれ、そこでピルビン酸にとなりATPの産生に貢献します

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このように高強度運動によって解糖系で生じた乳酸は、より酸化系の能力の高い遅筋線維で利用されることでエネルギー源として活躍していると考えられています。



以上が解糖系でのエネルギー産生の経路です。



★現場でのポイント★

解糖系はATP-CP系と同様に急な高強度運動時に働きます。

サッカーやバスケなどの間欠性スポーツにおいて、高強度運動で解糖系の活動を高めて大量に乳酸を産生し、低強度運動時にその乳酸をエネルギー源として活用することが非常に重要になります。

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そのためには解糖系がガンガン働くような強度でトレーニングを積むことが大切です。
30秒以内の全力スプリントを反復するトレーニング(スプリントインターバルトレーニング)はその代表例です。

一般的に「乳酸溜まったー!」と感じるのは足や腕がパンパンになるような運動ですが、そのような運動の多くは運度強度が低く、実際には解糖系の働きよりも酸化系の働きがメインになり、乳酸の産生もそれほど起きていない場合が多いです。

6秒〜30秒以内程度で完結するようなスプリントなどの全力運動を利用したりLTやOBLAなどの血中乳酸濃度域値を基準にしたりすることで解糖系を利用したトレーニングをより良い方法で行うことができます。LTやOBLAはまた別の機会に。



■参考・引用



ライター

Keisuke Matsumoto

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今回の一言

解糖系の仕組みがわかると日本のお米のありがたさがわかりますね!



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